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子どもの勉強意欲と自己肯定感を下げる「ありがちな親のNG声がけ」3つ

プレジデントオンライン / 2020年6月8日 6時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

テレワークや時差出勤で子どもとの時間が増えている人が多いのではないでしょうか。ちゃんと勉強をしていなかったりすると、ネガティブな言葉を投げかけて後悔しがちですが、一見ポジティブに思われる褒め言葉でも、子どものやる気をそいでいることがあるそうなので要注意です。最近の研究が示す親のNG声掛けとは――。

■親の声かけの影響は計り知れない

新型コロナウイルスの影響で、お子さんと過ごす時間が増えたパパ・ママは、多いでしょう。日常的な子どもとの接し方が、今まで以上にとても重要になっています。何げなく声をかけているとき、在宅で学習をしている子どもに何かを説明するときなどの言葉の選びかたは、実は子どもにとってはとても影響力があります。事実、親から子どもへの言葉は、子どもの心の発達や、認知能力、学習意欲や自己肯定感に影響を及ぼすことが多くの研究から示されています。

どのような遊び方、声がけ、接しかたが子どもの発達や能力を促進するのにNG、あるいは、良いのか、研究から明らかになっているものを紹介していきます。

■日本の子供たちの低い学習意欲

OECDの学習到達度調査(PISA)によると、日本の15歳の子どもたちは、数学的リテラシー、科学的リテラシーにおいて、世界の中でもトップレベルにあります。一方で、勉強が将来なんの役に立つのかわからない、自分は勉強ができない、などの思いが強い学生が多く、家庭での慣習的な学習時間の確保などが低いことも報告されています。低い学習意欲や自己肯定感は、個人レベルでみたときには、学習成績の低下などにも強く影響していきます。このような“学習意欲や自己肯定感の低さ”は、親や教師の声がけが強く影響している場合があります。

■NG声掛け①「○○になったつもりで考えてみよう」

科学の実験をする際に、どうしてこうなるのか? と考えさせる場面があります。この時に、「科学者になったつもりで考えてみましょう」、という指導の仕方もよくあることです。ところが、つい最近、『米国科学アカデミー紀要』という権威ある雑誌に、このような指導の仕方は、子どものやる気をそぎ、科学離れを起こす原因になっているという研究成果が掲載されました。

その理由として、「科学者は特別な能力を持った人」というイメージを子どもたちに与え、自分はそのカテゴリとは異なる人間であるという思いを抱かせることにつながるため、としています。この研究では、科学をやりましょう、と普通に指導した方が、その後の子どもたちの科学に対するやる気を維持することができたと報告しています。

おそらく、科学者に限らず「○○のように」などと言うことで、これができるのは特殊な才能を持っている自分とは異なる人、というイメージを与えることが、子どもの学習意欲をそぐという逆効果を生むことになるのでしょう。

■“能力に対する考え方”が学習意欲や成績を上げる

能力は生まれつきだと思っているか? 努力次第で頭は良くなると思っているか? という、能力に対する考え方を明らかにした上で、2年間にわたって、生徒たちの成績や行動を追跡調査した実験がスタンフォード大学で行われました。その結果、能力は生まれつきだと思っている子どもたちは、中学生になってから成績が落ち始め、その後数年に渡り成績が下がっていったのです。一方、努力次第で頭は良くなる、と思っていた人たちは、良い成績が維持されていました。

また、能力は生まれつきだと考えていた子どもたちは、成績が低下すると、自分の能力がないことを理由にしたり、教師の教え方が下手などと責任転嫁をしたりする傾向がありました。それに対し、努力次第と考えていた子どもたちは、学習意欲を高く持ち続け、課題をきちんとこなすことで、成績をキープし続けたのです。

つまり、勉強ができるようになるための大事なことの一つは、能力に対する思考(マインドセット)をどのように形成しているのか、だということがわかります。

■NG声掛け②「頭いいね!」

非常に有名な研究ですが、このスタンフォード大学の研究チームは、成績に差がない2つのグループを作成し、片方のグループには、「この成績を取るなんて、頭がいいのね」とその才能を褒め、もう片方のグループには、「この成績を取るなんて、たくさん頑張ったのね」と、学習の過程を褒める、ということを行った後に、難問を彼らに与えるという実験を行いました。その結果、才能を褒められた子どもたちは、難問にはたち向かわず、過程を褒められていた子どもたちは、難問にチャレンジすることが明らかになりました。

さらに、頭の良さを褒めたグループは、その後成績が落ち、再びやさしい問題が出されても成績は回復しませんでした。自分の能力に自信がなくなり、スタート時よりも成績が落ちてしまったのです。

一方、努力を褒めたグループは、難問に挑戦したことで、より能力が伸びることにつながり、その後、ふたたびやさしい問題が出されたときには、より簡単にそれらを解くことができるようになっていました。

とくに子どもが小さいうちは、何かができるようになったことを目の当たりにすると、「なんて賢い子なの!」などと褒めてしまいがちですが、そういった、才能を褒める言葉を日常的に使うことが、実は子どものマインドセット形成やチャレンジ精神、学業成績にまで影響を及ぼし得るものだということを心に留めておく必要がありそうです。

■NG声掛け③「ダメ!」

きちんとしつけをしなければ、という思いがあるほど、子どもの逸脱した行動やお行儀の悪い行動を目の当たりにすれば、「○○はしてはいけません」と子どもを注意します。ママたちは時に一日中、「やめなさい! ダメよ!」という言葉を口にしているのではないでしょうか。ところが、この「だめ」という禁止用語には、逆効果が生じることがあります。

心理学では、カリギュラ効果などと言われるのですが、「○○してはいけません」と言われると、人は余計にそれをしてみたくなる心理が生じると言われています。実際、多くの研究から、○○について考えない(やらない)ようにしてください、という指示があると、人はより一層そのことを考えてしまう、という結果が出ています。これは、抑制しなければいけないものについて、常に何を抑制すべきかを心に留めておかなければならず、抑制意図を持つ限り、抑制したい事象を考え続けることになるからだと説明されています。

だめ、と強く言われるからこそやってしまう、ということは子どもだと往々にしてあるのです。危険を伴わないものについては(ゲームやお行儀に関するものなど)、頭ごなしに否定するのではなく、節度を持って少しやらせた上で、なぜダメなのかを説明することが、やめさせることへの近道なのかもしれません。

普段何げなく、その場でつい口に出てしまう言葉が、子どもにとっては大きな影響を持つことを、私たち親はなるべく常に念頭におく必要があるのでしょう。とくに、意図せずに、子どもの意欲をそいだり、自信を喪失させる声がけをしないように気をつけたいものです。

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<参考文献>
・Marjorie Rhodes, Amanda Cardarelli, and Sarah-Jane Leslie, (2020). “Asking young children to "do science" instead of "be scientists" increases science engagement in a randomized field experiment”.PNAS May 5, 2020 117(18)9808-9814.
・Mangels, J. A.; Butterfield, B.; Lamb, J.; Good, C.; Dweck, C. (2006). “Why do beliefs about intelligence influence learning success? A social cognitive neuroscience model”. Social Cognitive and Affective Neuroscience. 1 (2): 75–86.
・Dweck, C. S.(1986). “Motivational processes affecting learning”. American Psychologist. 41 (10): 1040–1048.
・木村晴(2004).「望まない思考の抑制と代替思考の効果」教育心理学研究、52、115−126

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細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
博士(医学)
東京大学大学院総合文化研究科研究員/科学技術振興機構さきがけ研究員/帝京大学医学部生理学講座助教。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学卒業後、英語学習による脳の可塑性研究を実施し、研究成果が多数のメディアに紹介。その研究をきっかけに、「目標達成できる人か?」を脳構造から判別するAIを作成し特許取得。現在は、プログラミング能力獲得と脳の関連性、 Virtual Realityを利用した学習法、恋愛と脳についても研究をしている。

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(博士(医学) 細田 千尋 写真=iStock.com)

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