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萩生田文科大臣「私立大は文科省に構わず堂々歩め」

プレジデントオンライン / 2020年6月14日 11時15分

文部科学大臣 萩生田光一氏

2019年末、大学入学共通テストの直前見直しと「身の丈」発言で炎上した格好の萩生田文科相。ただ、教育改革じたいがこれで頓挫したと考えるのは早計のようだ。

■大学の意気込みを外に示すチャンス

いま行っている大学入試改革は、高大接続改革の一環です。教育改革の議論の中で、大学入試の仕組みを変えないと高校の授業が変わらないという意見もあれば、受験のための高校教育ではないという意見もありました。やはり、片方ずついじってもダメ。そこで高校教育と大学入試を一気通貫で改革しようというのが高大接続改革であり、その1つが21年度から導入する大学入学共通テストです。

大学入学共通テストは、受験生が安心して試験を受けられる準備が十分でなく、19年末、民間の英語資格・検定試験の活用の延期や、大学入学共通テストの国語・数学における記述式問題の導入見送りを判断しました。

しかし、英語によるコミュニケーション能力や思考力・判断力・表現力を育成、評価することの必要性は変わりません。このため私のもとに検討会議を設けて、英語4技能の評価や記述式問題を含めた大学入試のあり方について、年内を目途に広く国民に受け入れられる提言をする予定です。

現場の高校生たちには本当に申し訳ないことをしました。関係する高校や大学に影響を与えたことも事実。そこは率直にお詫びしなければなりません。

他方、大学に対しては、もう少し大学としての強い意志を示すことを考えてもいいのかなという思いもあります。英語4技能の必要性は、大学関係者も反対していませんでした。すでに入試で民間試験を活用している学校はいくつもあります。共通テストへの民間試験活用は延期しますが、民間試験そのものは存在しているのだから、「国が止めてもうちはうちでやる」とフレキシブルに対応する大学がもっとあってもよかったのでは。

記述式問題も、仮に設問を作るのも大変だ、採点も嫌だということがあるとしたら、大学としてどうなのでしょうか。大学入試改革への取り組みは、大学の意気込みを外に示すチャンス。もっと活かしていただきたいなと。

そもそも大学入学共通テストは万能ではありません。私見ですが、本来大学入試は、大学がそれぞれのアドミッションポリシーに基づき、自分たちの建学の精神や学校運営への思い、評価をしたい人材の姿などを考えたうえで実施すべきものです。大学入学共通テストは共通項の基準を示すための試験であり、はたしてそれだけで終わらせていいのか。大学にはしっかりした説明をしていただきたいとも思います。

■経済的に厳しい家庭でも医学部に

日本の大学は、けっしてレベルが低いわけではありません。THE(Times Higher Education)の2020年のランキングでは、ランクイン1397校のうち日本は110校。国別のランクイン数ではアメリカに次いで2位です。ただ、ランキングの順位が伸び悩んでいることも事実。原因は、論文引用数の低さや、留学生や外国人教員比率などの指標で構成される国際面の評価が低いこと。日本の大学の学部に多い人文系は国内論文にとどまり、国際論文になりにくい。優秀な研究を行う人が大勢いても、世界の土俵の間尺と合っていないのです。

2020年1月に行われた最後の大学入試センター試験(写真)。21年以降の大学入学共通テストは英語民間試験導入が延期され、国語・数学の記述式問題導入も見送りとなった。
2020年1月に行われた最後の大学入試センター試験(写真)。21年以降の大学入学共通テストは英語民間試験導入が延期され、国語・数学の記述式問題導入も見送りとなった。

これからは文系・理系の線を引くのではなく、人文的な感覚を持ちながら科学技術をやるとか、理科系の感覚を持ちながら人文の分野に進むというようにクロスしていくことが求められます。「教授陣がいるから簡単にいじれない」という事情もわかりますが、令和という新しい時代に合っているのかという視点で学部や学科の在り方を見直すことが大切です。

私立大のランキングが低いのは、国公立大に比べて国がお金を出していないせいだという指摘があります。これは指標をどう解釈するかで、財務省は「世界に比べてそんなに劣ってない」と言います。ただ、日本ではこれまで人への投資が圧倒的に少なかったことはたしかだと思います。ですから安倍内閣の7年間で、私立高校授業料の実質無償化、高等教育の修学支援新制度、奨学金事業の充実など、いろいろなメニューを用意しました。私立大についても、令和2年度予算案で大学院との機能高度化への重点的な支援を組織するなど私学助成の確保に努めています。

国のこうした政策を大学がしっかり受け止めて伸ばしていくというように、お互いにバトンを渡し合える環境をつくれれば、日本の大学のレベルはさらに上がるでしょう。たとえば医学部は、6年間の学費を考えると一般家庭のお子さんはなかなか行きづらかった。しかし、給付型奨学金などを活用すれば、経済的に厳しいご家庭のお子さんでも目指すことができます。そうなると医学や科学技術の道を究めたいような多様な人たちが参入しやすくなり、競争が生まれてレベルが上がるはずです。後継者のための医学部と言われることもなくなるかもしれません。

私立大は自由度が高い。文科省の顔色なんてうかがわず、どんどんチャレンジしていただきたいですね。そういう意味で、早慶の存在感は大きい。ともに伝統ある大学ですが、慶應には早稲田にはない医学部があり、早稲田はスポーツ科学部を先行してつくった。こうした競り合いは、他の私立大へもいい影響を与えるはず。両校のチャレンジに期待しています。

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萩生田 光一(はぎうだ・こういち)
文部科学大臣
1963年、東京都生まれ。明治大学商学部卒業。91年八王子市議初当選。2001年東京都議初当選。03年衆院議員初当選(東京24区)。09年落選、12年再選。内閣官房副長官、内閣人事局長、予算委員会理事などを経て19年より現職。自民党副幹事長、総裁特別補佐、選対事務局長などを経て17年より党幹事長代行。

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(文部科学大臣 萩生田 光一 構成=村上 敬 撮影=初沢亜利)

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