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ユニクロと無印の参入で日本を騒がせた「マスクバブル」は完全に終わる

プレジデントオンライン / 2020年6月12日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Fiers

■需給のバランスが崩れると、必ず「利ザヤ」を貪る業者が

需給のバランスが崩れたところには、必ず「利ザヤ」を貪る業者がいます。政府による禁止と、警察による逮捕者が出る頃には、正当な企業が参入し、消費者へ適正な価格で商品やサービスが届くようになります。これは今回のマスクバブルに限らず、マスクバブルに似たようなものは、任天堂スイッチのような転売など、数多くあります。

大きなマネーが動いた仮想通貨の時期にも、有象無象の業者の参入が入り乱れ、「利ザヤを貪る」業者が多数存在しました。しかし、今回のマスクバブルで露呈した一番の問題点は、日本がマスクすら自給自足できない状態になっていることの危機感です。医療の観点からの安全保障を考える必要があります。

世の中には、常に、四次元に歪んでいる不気味な空間が存在するように感じます。その空間では需給バランスが崩れており、そこに出入りしている業者の存在があります。この利ザヤを目的に生きている者たちは、いち早く需給バランスの崩れたところに、嗅覚高く集まって現れます。そして、ブームがピークの頃には自分たちは売り切り、次の需給バランスが崩れているものは何かを探して、次の旅にでるのです。

■マスク転売で初の逮捕者

そういったことを生業にしている人たちがいるのです。彼らは、いずれ、規制や基準が明確にされ、大手企業や正当な企業が参入してくることを理解しており、非常に短い間に、大きな利益をあげるのです。

今回のマスクバブルに関しては、無印良品が綿製マスクを6月上旬から順次発売すると発表し、ユニクロも速乾性・通気性に優れた機能性商品「エアリズム」を利用したマスクを製造し、今夏より販売する計画です。他にも正当な企業が適正価格で消費者への提供が進むおかげでマスクバブルの終焉を迎えることになりそうです。

新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが品薄となるなか、輸入業者から仕入れたマスクを転売した疑いで、高松市の会社社長が逮捕されました。マスクの転売は今年3月から法律で禁止されていて、警察によると、逮捕されたのは全国で初めてです。報道によると、4月末に岡山県内の輸入業者から中国製とみられるマスク7万枚を会社名義で約300万円仕入れ、このうち1万6000枚を香川県と岡山県の2人の自営業者に1枚当たり5円程度を上乗せして転売した疑いが持たれています。

■トヨタのマスク製造の本当の意味

岡山県警察本部は転売の規模の大きさなどからこの法律を適用し、全国で初めて逮捕しました。これまでの調べで、仕入れた7万枚のマスクのうち残りの5万枚余りもSNSなどで購入者を募って転売したほか、別に仕入れた9万枚のマスクも転売した疑いがあり、合わせて数十万円の差額を得ていたとみられるということです。

転売の規模が大きいことを理由にしていますが、利益は数十万円……。規模? このあたりには違和感を覚えますが、他の業者に対する“見せしめ的”な逮捕だった可能もあるでしょう。この様に、警察によるメスが入ることで、市場は正常さを取り戻していきます。

今回のコロナ危機に際し、必要な時に、必要なモノが手に入らないという事態に直面しました。日本はマスクのほとんどを国内で調達できなくなっていたのです。トヨタのマスク製造の意味は「国内に技術と人材を残しておく重要性」を伝えています。5月12日、2019年度のオンライン決算会見で、豊田章男社長は国内生産300万台体制について触れ、改めてそれを死守し続けることの重要性を強調しています。

■マスクですら自給自足できない国になっていた

「私たちが『石にかじりついて』守り続けてきたものは、『300万台』という台数ではありません。守り続けてきたものは、世の中が困った時に必要なものをつくることができる、そんな技術と技能を習得した人財」を国内にしっかりと残してきたことについて言及していました。「より良いものをより安くつくる」ために、工場を海外に全て移すことが本当に日本に取って良いことなのか? 超円高をはじめ、どんなに経営環境が厳しくなっても、日本国内にモノづくりが必要であることを、あらためて認識させられました。

今回のコロナをきっかけに、あらわになったことは、マスクや人工呼吸器ですら自給自足できない国になっていたことを知ることになりました。日本はマスクを中国からの輸入に8割を依存していたのです。新型コロナウイルスの感染が拡大すると、中国はマスクを国家応急備蓄物資に指定し、国内に供給するため、マスクの輸出を禁止したことで、医療関係物資が国家の戦略物資の様相を呈しました。

■日本が陥った負のスパイラル

マスクを自給自足できない国になった背景には日本のデフレ構造があります。日本経済は1980年代後半のバブル崩壊以降、土地や株式などの資産価格の下落がマクロ経済に大きな影響を与えることを経験してきました。特に日本の金融は土地資産を担保とした融資が多く、不動産価格の下落が銀行融資の抑制につながり、その結果、景気のさらなる悪化と資産価格の下落を引き起こすというデフレスパイラルがみられました。そして、産価値が下落すると、負債を抱えずに借金などは早く返そうという動きになります。

つまり、「資産の縮小」と「負債の縮小」が始まるのです。これによって、企業は生き残りをかけますが、業績が向上しない状況が続きました。欧米であれば、今回のコロナでも明らかなように雇用調整をバッサリ行います。しかし、日本は雇用調整を行わずに、雇用を守りながら経営を続ける道を取ってきたのです。

そして、立ち行かなくなった企業は国内のサプライチェーンを海外に持っていくことで、いかにコストを圧縮し安いモノを作れるか、その場所に限界が来れば、さらに安く生産できる場所に移るといった負のスパイラルを繰り返してきたのです。

■せめて医療物資だけでも、国内製造回帰が望ましい

これによって、安価なモノが日本に流入し続け、モノの価値が下がり続け、国内での生産はまるで「悪」のように見なされてきました。しかし、今回の感染リスクを目の当たりにして、医療の安全保障上の観点からも、せめて、医療物資に関するものだけでも、国内製造回帰が望ましいことが、明らかになりました。

マスクのほかにも、人工呼吸器や防護服などの不足で、日本は医薬品、医療機器、医療用品の輸入依存率が高いことが露呈しました。今後は医療関係の自給率の向上させていく必要があります。中国はすでに米国に次いで、世界第2位の医薬品生産国になっています。中国は「中国製造2025」の重点分野として、バイオ薬品とハイテク医療機器を指定しており、国際競争力の強化に力を入れています。

■日本は医療の安全保障上とても危険

今回のコロナウイルスのワクチンや治療薬、治療法の開発も進めていますが、コロナを機に中国製品を浸透させ、世界の医療・福祉分野で主導権を握る意図も感じられます。

リーマンショックの際に、中国は内需拡大策を打ち出し、鉄鋼などの生産能力を一気に拡大しています。それにより、廉価な中国版の鋼材が世界中に流入したことがあります。これと同じことが、医療用品などの分野で起きる可能性があります。中国製の医薬品に依存し過ぎる体質は、医療の安全保障上も非常に危険であることを、日本も考えるべきなのです

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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