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わが子を本好きに育てたいなら、絶対に「選書リスト」を渡してはいけない

プレジデントオンライン / 2020年6月27日 9時15分

松永正訓の最新刊『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)

わが子を本好きに育てるにはどうすればいいのか。小児科医の松永正訓さんは「親ができる最良の手助けは、子供が自ら本に出会う機会をつくること。まずは親が子供に背中を見せることだ」という——。

※本稿は、松永正訓『オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。

■読み聞かせは乳幼児にとって質の高い娯楽

みなさんは絵本の読み聞かせはやっていますか? お母さんたちの話を聞いてみると、生後3~4カ月でおよそ半数の家庭でお子さんに読み聞かせをしているようです。

読み聞かせは親と子の最良のコミュニケーションです。生後3カ月になっていれば、赤ちゃんは音に反応し、色彩にも反応します。たくさんの心地よさを与えて赤ちゃんにとっていい時間をつくってください。

そして、読み聞かせによって赤ちゃんに生活のリズムをつくることができます。眠る前に必ず読み聞かせをすれば、そこが子どもにとっての睡眠に入るルーティンになります。毎日決まった時刻に読み聞かせるのもいい方法でしょう。

絵本の読み聞かせは赤ちゃんのときだけでなく、1歳になっても、2歳になっても、保育園・幼稚園に行くようになっても、もっとも質の高い娯楽です。

お父さん、お母さんの声が心地よく聞こえてくる。きれいな絵に目を瞠り、物語に没頭し、ページをめくるのももどかしい。子どもにとってこんな楽しい時間はありません。

■私がすすめる名作絵本

ではどんな絵本を読めばいいのでしょうか? 別にルールはありません。ロングセラーの定番の絵本でも、本屋で目に入ったおもしろそうなものでもOKです。本の世界は無限に広がっています。お話のなかに入っていくことで、お子さんの心は育っていくでしょう。

私がすすめる絵本は次の3冊です。

『さっちゃんのまほうのて』(偕成社)
『はせがわくんきらいや』(復刊ドットコム)
『すずちゃんののうみそ』(岩崎書店)

これらの本はすべて障害を持った子どもを描いた絵本です。親にとってもっとも説明が難しいテーマですが、子どもが思いやりを持った子に育っていくためにとても大事なことが詰まっています。この世のなかにはいろいろな子がいて、それぞれみんなが仲間だということを分かってもらえるかもしれません。

年長さんから小学生になるころには、いのちの大切さを描いた絵本がよいでしょう。

『わたしはいまとてもしあわせです』(ポプラ社)
『うさぎのユック』(金の星社)

病気になっても家族の絆に感謝する子どもの気持ち、懸命に生きるいのちの素晴らしさが描かれています。

■読書の入り口は漫画でも構わない

そしてお子さんが小学校2~3年生になったら、ぜひ本を読ませてください。入り口は漫画でも構いませんから、まず活字に慣れ、どんどん本を読むようにしてください。絵本と同じで、どんな作品でもOKです。たとえば、こういう作品はどうでしょうか。

『かいけつゾロリ』シリーズ(ポプラ社)
『若おかみは小学生!』シリーズ(講談社)
『怪盗クイーン』シリーズ(講談社)

読書を積み重ねれば、日本語に強くなり、思考力が鍛えられ、心に栄養が注入されます。多くの本を読むと、世界が広がり、さまざまな感情や心の深さに触れることができます。こうした経験をしたお子さんは、感受性が豊かな子に育っていきます。

子どもたちに読み聞かせをする父親
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

そして読書タイムをつくって毎日必ず読むことが大事です。これができるようになると、子どもには自立心も芽生えていきます。睡眠の前には、デジタルメディアのブルーライトで脳を疲れさせるより、読書に時間を使う方がはるかに発育にもいいでしょう。

小学生で読書の習慣がつくと、それは中学・高校と続いていきます。そのころには古典的な名作も読んでいるかもしれません。そうした読書体験は、子どもの心の育ちをうながすと同時に、子どもにとって自信になります。ドストエフスキーや大江健三郎を読んだ経験は、子どもにとっていつまでも消えない心の財産になります。

■まずは「親の背中」を見せましょう

ではどうすればお子さんは本を読むようになるのでしょうか? それはお父さんやお母さんが読書をすることです。両親やきょうだいが全然読書をしないのに、その子だけが読書をするということは、あまりありません。

私の場合も兄と父親の影響が大きかったです。とくに兄は猛烈なスピードで本を読む人で、読み終わった本がどんどん本棚に増えていくのを見ているうちに、私も読書に興味を持つようになりました。

まずお父さん、お母さんがお手本を見せてください。親が読書好きであれば、子どもは絶対に本に興味を持ちます。親がスマホでツイッターやユーチューブばかり見ていたら、子どもに本を読めといってもまったく説得力がありません。

私は小学5年生までは子ども向けの本を読んでいました。大人の本を読むようになったのは小学6年生からです。創元推理文庫のヴァン・ダインとかE・S・ガードナーとかディクスン・カーなどですね。一発逆転の法廷ドラマや、不可能犯罪の謎解きにハラハラ、ドキドキしました。

■お父さん、お母さんへのおすすめの1冊

ミステリー好きは中学生のころも持続し、高校生になって日本文学を読むようになりました。主に近代文学に熱中し、生きることの意味について考えたりしました。ノンフィクションのおもしろさを知り、ルポルタージュや評論を中心に読みあさったのは大学生のころです。

こんなふうにいろんなジャンルを渡り歩いてきたので、目下の悩みは本の整理です。大量の本に囲まれた生活をしてきたので、子どもたちも自然と本を手に取るようになりました。私の二人の子どもも読書が大好きです。

これまであまり読書の習慣がなかったお父さん、お母さんは育児をきっかけに親子で本を読んではどうでしょうか。必ず人生が豊かになります。お父さん、お母さんにも、1冊本をすすめましょう。

『クシュラの奇跡140冊の絵本との日々』(のら書店)

重い障害を持った子に、両親が絵本の読み聞かせをすることで、子どもが奇跡の成長を遂げていった記録です。たくさんの良質な絵本の紹介にもなっています。

■本を読むことで書く力もついてくる

本をたくさん読むと、読む力がぐんぐん身につきます。勉強のすべての基本は日本語を読むことにあります。算数でも理科でも社会科でも、文章を読まないことには何もはじまりません。日本語の読解力にすぐれていれば、どんな教科でも成績が伸びます。それに加えて書く力もつくというのが私の考え方です。

みなさんは作文というと何を連想しますか? 読書感想文ですか。それとも小論文?

作文で一番重要なことは、自分のなかに表現したいという気持ちがあることです。こうした動機付けも、たくさん読書をすることで育っていきます。

国語の試験で、文章を読んで作文を書かされることがあります。「あなたはどう思いますか?」と聞かれても、心のなかに貯金がなければ何も「思う」ことはできません。読書をするということは心のインプットを増やすことにもなります。インプットが増えればアウトプットも増えます。

映画監督の黒澤明さんは『悪魔のように細心に!天使のように大胆に!』(東宝株式会社)のなかで、「創造とは記憶ですね」と書いています。ピカソも「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」と言ったという説があります。つまりどんな大天才でも無から何かを創り出すということは不可能に近く、心のなかの豊かなストックが創作の源泉になるのです。

■子どもが自ら本に出会う機会をつくる

本を読むにあたっては、真剣に読むことも大事だと思います。そこに何が書かれているか、それをどういう方法で表現しているか、一生懸命読み込むのです。

私は、本のなかでうまい表現、印象に残る表現、心が揺さぶられる表現に出会ったら、頭のなかにしっかりとメモするような気持ちで、ページの端を折ったり、ラインマーカーで線を引いたりしています。「好きな言葉が出てきたら、線を引いてごらん」とお子さんにすすめるのもよいかもしれません。

最後に、一つ気をつけたいのは、本というものは基本的に自分から出会うものであるということです。

私は小学5年生くらいのときに、父親から「これを読んでみろ」と言われて、山本有三の『路傍の石』を渡されたことがあります。私はどうしてもおもしろいとは思えずなかなか読み進めることができませんでした。

それなのに、次女が15歳になったとき、こんな本を読んでみたらどうかと、日本文学とノンフィクションのリストをずらりと書き出して渡しました。娘は「いや……ちょっといいかな」と言って結局、1冊も読もうとしませんでした。いつも「本とは自分で出会うもの」と言っていながらまったく逆のことをやってしまい反省しました。

読書の大きな楽しみの一つは、図書館や本屋を探索して、思いもかけずおもしろそうな本に出会うことです。親ができる最良の手助けは、子どもが自ら本に出会う機会をつくることです。

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松永 正訓(まつなが・ただし)
医師
1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。13年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『子どもの危険な病気のサインがわかる本』(講談社)、『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)、『子どもの病気 常識のウソ』(中公新書ラクレ)などがある。最新刊は『小児科医が伝える オンリーワンの花を咲かせる子育て』(文藝春秋)。

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(医師 松永 正訓)

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