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「努力は裏切らない」と信じる人の子育てほど失敗する理由

プレジデントオンライン / 2020年6月22日 9時15分

アプリ「Think! Think!(シンクシンク)」のHPから

教育分野のテクノロジーは日進月歩だ。それにあわせて、「子育ての常識」もどんどん更新されている。『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)を書いたフリーランス・ライターの加藤紀子さんは「『努力は裏切らない』という考え方はもう古いようです。最新の研究では、やみくもにつらい努力をするよりも、アプリを使って遊びながら勉強したほうが学力は向上しやすいことがわかっています。子育てにも最新のエビデンスを活用するべきです」という——。

■頭のいい親が「勉強しろ」と言わずに、子どもをやる気にさせる方法

突然の休校措置から約3カ月。ようやく多くの学校が再開されましたが、新規感染者が連日報告され、第2波の可能性も指摘されるなど、予断を許さない状況が続いています。

一方で、子どもがステイホームの間、親御さんからは「肉体的にも精神的にも、もう限界……」という声があちこちから聞こえてきました。3度の食事に加え、学校からの課題は家庭に丸投げというケースも少なくありませんでした。親は付きっきりで子どもの勉強を見なければならず、その労力は本当に大変なのです。

とはいえ現実問題として、親子ともに新しい生活スタイルに少しずつ慣れ、スムーズに対応できるようになっていく必要があります。いつでも学校に行けるのが当たり前ではなくなったことによってこれまでの「子育ての常識」は変わり、家でも学力を含む教育面でのフォローを十分にできるように備えることが当たり前になったのです。

私はこのたび、「家で親がしてあげられること」を集めた『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)を上梓しました。これまでの常識をアップデートするために、最新のエビデンスを参照して、新しい子育ての教科書を目指した1冊です。本書から、いまこそ役に立ててほしい子育て法を紹介します。

■(1)「アプリ」でワクワク感を引き出して学力を伸ばす

子どもに家で勉強をさせようと思っても、「つまんなーい」「やりたくない」と投げやりな反応が返ってくることは多々あります。そんな子どもに対し、「勉強が楽しくないかもしれないけど、コツコツ地道にやればそのうち……」などと説得しようしていませんか。おそらく親も、自分の親に口酸っぱく言われて育ったケースが多いから、子どもにもついそう言ってしまうのではないでしょうか。

ところが「地道にやることこそ大事」「遊びは勉強の妨げになる」「努力は裏切らない」という親の固定観念をくつがえす最新の研究成果があります。

子どもの感性で思考力を伸ばすアプリ教材やSTEAM教育教材を開発しているワンダーラボ(旧花まるラボ)が行った実証実験では、空間認識や平面図形など、思考センスの基礎要素を楽しみながら身につけられるアプリ「Think! Think!(シンクシンク)」を毎日15分プレーすると、3カ月後、学力が本当にアップするという結果が出ました(※)。注目したいのは、この子どもたちにとっての「遊び」によって教科書で学ぶ計算力や文章題までもが上達したことです。

※カンボジア国内のモデル校5校・計1636人の児童を対象に、3カ月間にわたり実施。対象児童をシンクシンク実施群(807人)と非実施群(829人)に分けた。その結果、3カ月後に行われたカンボジア国家学力テスト(算数)で、シンクシンク実施群が非実施群に比べ、偏差値にして平均約6.9ポイントの向上。国際的な学力調査として知られるTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)でも平均約6.0ポイント、IQテスト(田中B式)では平均約8.9ポイントもの向上が確認された。

■勉強の強要は、かえって勉強嫌いを増やしてしまう

つらい努力を重ねるほどに学力が向上する。そうした価値観とは別の研究は、ほかにも報告されています。例えば、「グリット」研究(※)の第一人者であるペンシルバニア大学の心理学者、アンジェラ・ダックワース教授も、「必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事」と述べています。

※困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けられる力

さらに、臨床心理学者のジョセフ・バーゴ博士によると、「純粋に好きなことに打ち込んでいる人のほうが成功しやすい」と言います。家で子どもに学力をつけるには、こうした楽しいアプリや動画などを活用しながら、まずはワクワク感を引き出してあげる必要があるのです。

もちろん努力は大切ですが、子どもの意向を考えず、親が勉強をノルマ的に強要する方法は、かえって勉強嫌いを増やしてしまう非科学的な手法といえるのかもしれません。

■(2)「ぼーっとする」時間を大事にする

わが子が、ぼんやりとしているのを見ると、「ぼーっとしている時間がもったいない、何かしなさい」とダメ出しする親は少なくないでしょう。でも子どもは、毎日さまざまなことから十分すぎるくらいの刺激を受け、体も脳も、大人が思う以上に疲れています。

そもそも、ぼーっとしているときにも、人の脳内ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という脳回路が働いています。今、このDMNが、私たちの脳の中に散らばる「記憶の断片」を無意識のうちにつなぎ合わせ、思わぬ「ひらめき」を生み出しているのではないかと注目されています。偉大な科学者アイザック・ニュートンが万有引力の法則を発見したのも、学生時代にペストの流行で大学が閉鎖となり、ロンドンから離れた郊外でゆっくりと過ごしていた時だったと言われています。

これから進化するAIの時代に、人はクリエーティブであることがますます大事になると言われますが、子どもの創造力を伸ばすにも「ぼーっとする」時間が必要なのです。

■(3)「家族との対話」で批判的思考力を伸ばす

子どもは一日中、とりとめもない話をします。「おしゃべりばかりしていないで、他にすることたくさんあるでしょう!」と叱ってしまう親は子どもの話を最後まで聞かず、「●●の練習は?」「■■はやったの?」などと追い立て、子どものスケジュールを埋めてしまおうとします。

加藤紀子『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)
加藤紀子『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)

けれども子どもは、身近な大人に無条件に聞いてもらえることで、安心感や落ち着き、自信、認められた喜びを感じます。そして、「話すことが楽しい」「もっと話したい」と思うようになり、そこから豊かな表現力、語彙力も育まれていきます。

実際に、脳機能開発が専門の東北大学、川島隆太教授が仙台市に住んでいる約7万人の小中高生を2010年から7年にわたり追跡調査したところ、「家の人にしっかり話を聞いてもらった」と答えた子は、学力が上がる傾向が見られました。

川島教授は「プレジデントFamily2017年秋号」で次のように述べています。

「『家族のコミュニケーション』がしっかりしている子は、何かがきっかけになって探究心などの『学習意欲』が高まっていきます。そして、『学習意欲』が高まると、自主的な学習習慣が付き、『学力向上』へとつながっていきます」

■頭のいい親は子に「なぜ?」「なに?」「どんな?」と質問攻めする

こうした「対話する能力」は、アメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所やニューヨーク科学アカデミーをはじめ、世界の教育機関が21世紀において最も大事なスキルと認識しています。さまざまな人との対話を通じ、子どもたちは物事の多面的なとらえ方や批判的な思考力を身につけていくのです。

ヴァンダービルト大学教育学部のデヴィッド・ディッキンソン教授は、子どもと対話をするときは、1回聞いて「そうなんだね」で終わらせるのではなく「5回やりとりすることを心がけよう」と提唱しています。

夏の庭で母親に尋ねる子ども
写真=iStock.com/DragonImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DragonImages

その際大事なのは、子どもにたくさんしゃべらせること。そのためには、イエスかノーかで答えられるような質問ではなく、「なぜ?」「なに?」「どんな?」「どうやって?」「もし?」で聞くと、子どもは具体的に話しやすくなります。

さらに、子どもの話を聞きながら「いいね!」と共感してあげつつも、時にはあえて反対の意見を投げかけ、違う見方を伝えることで対話を深めると、思考力が育ちます。

今後、学びのオンライン化、個別最適化が進むほど、コミュニケーションが希薄になる恐れがあります。だからこそ、日常のコミュニケーション、中でも家庭での対話が、子どもの成長のためによりいっそう重要になってくると言えるでしょう。

以上、3つの観点から「新しい子育ての常識」をご紹介しました。コロナ禍で、子どもと向き合う機会が増えている今、親子の時間が少しでも楽しく、意義深いものになれば幸いです。

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加藤 紀子(かとう・のりこ)
フリーランスライター
京都市出身。東京大学経済学部卒業後、国際電信電話(現KDDI)に入社。法人営業、サービス企画等に携わった後、2007年に夫の留学を機に家族で渡米。帰国後、フリーランスライターとして、富士フイルム代表取締役会長CEOの古森重隆氏、聖路加国際病院名誉院長の故・日野原重明氏、政策研究大学院大学前学長の白石隆氏、灘・開成・麻布・武蔵・渋谷教育学園・豊島岡女子学園・女子学院各校の校長など、ビジネス、政治、アカデミア・教育のトップリーダーのインタビューを数多く手掛ける。一男一女の子育て経験を活かしつつ、現在は教育分野を中心に“プレジデントFamily”“Resemom(リセマム)”“ダイヤモンドオンライン”“NewsPicks”など様々なメディアで執筆活動を続けている。

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(フリーランスライター 加藤 紀子)

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