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仮想通貨の狂騒から3年…331人の「億り人」に突き付けられた巨額の税金とは

プレジデントオンライン / 2020年6月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MarsYu

■仮想通貨に税金はかかるのか

近年、ビットコインなどの仮想通貨が脚光を浴びている。2017年後半から2018年初頭にかけては価格が急上昇し、メディアなどでもさかんに報道されていた。

“なんでビットコインはコインチェックがいいんだよ~!“

タレントの出川哲朗氏が一人二役をしたCMのインパクトは強烈だった。

最近では、オーストラリアとニュージーランドに、ビットコインで支払うことができるコカ・コーラの自動販売機が登場したことが話題になったり、新型コロナウイルスの影響で世界各国で金融政策が行われる中、仮想通貨は、次世代を担う資産としても注目を集めている。

そんな仮想通貨だが、課税関係はどのようになっているのだろうか。

“仮想通貨は、資産として購入したら持っているだけで税金がかかるのだろうか?”
“仮想通貨の確定申告は、どんなふうにすればいいのだろうか?”

などというように、仮想通貨に関して疑問に思っている人は少なくないだろう。今回は、日本での仮想通貨の課税関係について考えてみたいと思う。

■課税対象になる3つのパターン

所得税法は、どんな手段を使ったとしても、“もうかった人には税金を納めてもらいましょう!”という考え方が根底にある。競馬で万馬券が当たっても課税されるし、パチプロだって、それで生計を立てているのなら税金を払う義務は発生している。非課税所得にうたわれているもの以外は、原則として税金がかかると思って間違いない。

仮想通貨も例外ではない。仮想通貨の誕生は、2008年と言われているが、国税庁は、令和元年12月「仮想通貨に関する税務上の取り扱いについて(FAQ)」を発表した。

所得税の課税期間は、1月1日から12月31日だ。個人で仮想通貨を購入した場合は、このルールに従わなければならない。仮想通貨をしている人は、毎年、12月31日23時59分の取引明細を保管しておく必要がある。それは、所得税の計算は12月31日23時59分の時点でいったん締め、計算をすることになるからだ。

仮想通貨が課税対象になるのは、

1.仮想通貨を売却した場合
2.仮想通貨で商品を購入した場合
3.仮想通貨同士の交換を行った場合

主には、この3つとなる。1つずつ解説していこう。

■他の仮想通貨に乗り換えたときも課税される!

1.仮想通貨を売却した場合

仮想通貨を売却すると、その時点で所得が発生する。売却したときの価格と取得価額との差額が所得額となる。

「仮想通貨の売却価額」-「仮想通貨の1単位あたりの取得価額」」×数量=「所得額」

取得価額とは、仮想通貨を取得するために要した金額のことをいう。その金額の中には手数料なども含まれる。

2.仮想通貨で商品を購入した場合

仮想通貨で商品・サービスを購入する際は、支払いしたタイミングで所得が発生する。これは仮想通貨を一度売却し、日本円に換金してから商品を購入するという取引と同じ扱いになるからだ。そのため、支払いに利用した仮想通貨の時価が購入時よりも上がっている場合はその差額が所得となる。

「商品の価格」-「仮想通貨の1単位あたりの取得価額」×数量=「所得額」

3.仮想通貨同士の交換を行った場合

例えば、ビットコインでイーサリアムを購入するなど、仮想通貨同士の交換であっても所得が発生する場合がある。「2.仮想通貨で商品を購入した場合」と同じように、仮想通貨を一度売却して日本円に換金してから他の仮想通貨を購入するという取引と同じ扱いになるというわけだ。

「購入する仮想通貨の時価」-「売却する仮想通貨の取得価額」=「所得額」

■確定申告ではどのように扱えばいいか

仮想通貨で得た利益は、個人の場合、事業所得か雑所得として確定申告をすることになる。他に何も仕事をせず、仮想通貨の取引だけをしている場合は事業所得として確定申告をして差し支えないだろう。一方、会社勤めをしていて、就業後や休日に仮想通貨の取引を行っているという場合は、雑所得として申告することになるかと思う。

雑所得とは、確定申告をする際の所得9種類のうち、どれにも当てはまらないものをいう。確定申告をする際、事業所得として行うのか、雑所得なのかについては、それぞれに検討する必要がある。事業所得で申告する場合と雑所得で申告する場合の違いは、わかりやすいところでいうと、事業所得の場合は赤字が発生した場合、他の所得と損益通算が可能になるが、雑所得はそれができないという点を挙げることができる。

何をもって事業所得というのか。なぜ、雑所得としか認められないのかについては、明文化されていないというのが現状だ。会社員としてサラリーも得ているけれど、自分は定期的・継続的に仮想通貨の取引をしているから、事業所得で申告するんだという人がいるかもしれない。しかし、その実態を確認するのは、数年後、税務調査が入った時ということになる。税務調査の際、調査官に説明できるように記録を残しておくことが必要だろう。

■2017年、「億り人」は331人いた

国税庁によると仮想通貨全体の価格が急騰した2017年の1年間で、仮想通貨に投資して1億円以上の収入を得た人、いわゆる“億り人”と呼ばれている人は、確定申告をしたケースだけで、331人といわれている。

では“億り人”になると、どれくらい税金を納めなければならないのだろうか。仮想通貨は、累進課税という形をとっている。所得金額が増えれば増えるほど、高い税率を掛けて納税額が決まっていくというものだ。

例えば、Aさんは、2017年の1年間仮想通貨だけで1億円の収入があり、必要経費は毎月100万円、1年で1200万円だったとしよう。

100,000,000円-12,000,000円=88,000,000円

8800万円が、合計所得金額ということになる。

所得控除が、300万円だとすると

88,000,000円-3,000,000=85,000,000円

8500万円が、課税される所得金額ということになる。

累進課税の税額表は下記の通りだ。

所得税の速算表
図表=国税庁「所得税の税率」より

85,000,000円×45%-4,796,000円=33,454,000円

1億円の収入があっても、所得税だけで3345万4000円は税金で持っていかれることになる。さらに、1年後住民税も納めなければならない。住民税は10%とすると、

85,000,000円×10%=8,500,000円

※便宜上、住民税の所得控除も所得税の所得控除と同額として計算

1億円の収入があったAさんは、所得税と住民税を合わせると、

33,454,000円+8,500,000円=41,954,000円

支払うべき税金は4195万4000円。

41,954,000円÷100,000,000円≒0.42

1億円のうち、約42%。もうかった分だけ使ってしまうと納税できなくなる可能性があるから注意しなければならない。

■「もうかる話」に乗るときは税金も考慮しなければいけない

課税対象になるのは上記3つのパターンだということを紹介したが、一番注意すべきは「3.仮想通貨同士の交換を行った場合」だ。

“億り人”の中には、最初、友達に勧められ軽い気持ちで始めたという人は少なくないようだ。仮想通貨の仕組みについてあまりよくわかっていないけれど気づいたらもうかっていた、というパターン。実は仮想通貨の世界では、仮想通貨同士の交換は珍しいことではない。

そこそこもうけが出たら、もっともうかるおいしい話に手を出したくなるのが人情だろう。その道の専門家と名乗る人に言われ、さらにもうかる取引へとエスカレートしていく。仮想通貨は、ギャンブル性が高いといわれるゆえんだ。

もうかる話を持ってくる人はおおむね税金の話はしないようだ。筆者は国税に在職中、FXの無申告者を税務署に呼び出し、期限後申告書を提出してもらうという仕事をしたことがあった。来署依頼のハガキを携えたお年寄りは、

“担当の人は税金がかかるなんて一言も言わなかったのに”

と、悔し涙を流していたことを覚えている。

うまい話には落とし穴がある。専門家に任せて仮想通貨の交換を頻繁に行い、メチャクチャもうかったと思っていても、それは全額が手元に残るのではなく、含み益として課税されるのだ。

■7月、税務調査がやってくるかもしれない

平成29(2017)年中に、仮想通貨でもうかったので平成30年3月に、平成29年(2017)年分の、所得税の確定申告を提出したという方。

“確定申告をして2年たったけど、税務署から何も連絡がないってことは提出した内容が認められたってことなんだろうな“

そんなふうに思っていないだろうか。

紙の確定申告書を税務署に持参し控えに受付印を押してもらったり、e-Taxでデータを送信し”受け付けました”というメールが届いたからといって安心していてはいけない。それは単に、確定申告書を受け付けたという証明にすぎない。

確定申告書の提出の有無やその内容について確認したいことがある場合、調査官はまず、自宅に電話をかける。何度電話をしても不在の場合は、次の手段として自宅に郵便を出す。税務署からの手紙なんて関係ないと思って、封を開けずに捨ててしまってはいけない。

なぜなら、それは、仮想通貨取引について聞きたいことがあるので、税務署に来てほしいという通知かもしれないからだ。そのままほうっておくと、突然、調査官が自宅にやってくることになる。

税務署は、限られた人員で税務調査を行っている。提出された確定申告書の縦の計算のチェックは毎年なされるが、内容についてはそうではない。3年くらいそのままにしておいて、それでも間違っているとなった際に調査に出向く。その方が効率よく税務調査を行うことができるからだ。

2020年の4月から6月にかけては、新型コロナウイルスの影響で、税務調査もなされていなかったようだ。国税の事務年度は7月から。心機一転、税務調査も解禁となるはずだ。2017年当時、仮想通貨でもうけたという人は、2020年7月からの税務調査の対象となるタマとして、リストアップされているに違いないだろう。

仮想通貨の取引についても、税務署は3年泳がせているのだから。

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飯田 真弓(いいだ・まゆみ)
税理士
元国税調査官。産業カウンセラー。健康経営アドバイザー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生で、26年間国税調査官として税務調査に従事。2008年に退職し、12年日本マインドヘルス協会を設立し代表理事を務める。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむ セーフ?アウト?税務調査』(清文社)、『「顧客目線」「嗅覚」がカギ!選ばれる税理士の”回答力”』(清文社)がある。

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(税理士 飯田 真弓)

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