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「知らなきゃ丸損」新型コロナで申請しないともらえない住まいのお金

プレジデントオンライン / 2020年6月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/interstid

コロナ禍で収入が急減した人たちのために、国は給付制度の要件緩和や対象拡大を実施している。つまり「申請すればもらえるお金」が増えているのだ。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんが、住宅ローンの返済や家賃の支払いに困ったときに知らないと損する3つの制度を紹介する——。

■コロナ禍で活用したい銀行の住宅ローン相談窓口

コロナ禍で収入が減った、失業したなどの場合、住宅ローンの返済額を減らす方法もあります。

金融庁では新型コロナウイルス感染症の影響による資金繰りやローンの返済などに困っている事業者や個人に対し、取引先の銀行などに積極的に相談するよう、呼び掛けています。住宅ローンの返済についても例外ではなく、「返済に困ったら銀行などに相談していい」「何かしらの方法はある」ということです。

相談することに抵抗感があったり、ほかから資金を借りてでも住宅ローンを返済したいと考えたりしがちですが、まずは相談することが重要です。

相談しないまま住宅ローンを滞納すると、金融機関から督促され、それを放置すれば半年程度で自宅を差し押さえられることもあります。そういった形で自宅を失うことを避けたいのは言うまでもありませんが、それは金融機関にとっても同じ。借り手は返済して自宅を守ること、貸し手は資金を回収することがベストであり、それが実現できるように、返済について話し合うのです。

東日本大震災のときもそうでしたが、金融庁は積極的な相談を呼び掛け、各金融機関にも柔軟に対応するよう、求めています。たとえば三井住友銀行には、「ローン金融円滑化相談窓口」など、銀行によっては専門の窓口を設けている例もあります。相談や手続きについて、まずは電話などで問い合わせてみましょう。

■フラット35は最長15年延長で年額約29万円の負担を軽減

具体的にどのような方法があるか。まずは住宅金融支援機構のフラット35を例に見ていきましょう。

住宅金融支援機構では、新型コロナウイルス感染症の影響により返済が困難になった人に対し、編成方法の変更メニューを用意しています。「返済特例」「中ゆとり」「ボーナス返済の見直し」の3つで、複数を組み合わせることもできます。

最も返済負担の軽減効果が大きいのは「返済特例」で、利用できるのは、以下3つの項目すべてに当てはまる人です。

① 経済事情や病気等で返済が困難
② 以下の収入基準のいずれかを満たす
・年収が機構への年間総返済額の4倍以下
・月収が世帯人数×6万4000円以下
・住宅ローン(機構以外も含む)の年間総返済額の年収に対する割合が一定(年収700万円以上では45%など)を超え、前年の収入が前々年の収入より20%以上減少(直近の収入見込みなどでの審査も可能)
③ 返済方法の変更により、返済が継続できる

返済特例では、返済期間を最長15年(完済時の年齢は80歳まで)延長できます。例えばローンの借入額が3000万円、金利が2%、35年返済の場合、毎月返済額は約9万9200円です。これを5年延長すると、毎月返済額は約8万8800円、10年延長で約8万1100円、15年延長で約7万5300円。15年延長では、月額約2万4000円、年額約29万円の負担軽減になります。

このほか、「中ゆとり」は一定期間のみ返済額を軽減し、一定期間終了後は、減らした分を上乗せして返済していく方法です。

業績の悪化でボーナスが減るという人には、ボーナス返済を取りやめたり、ボーナス返済の割合を減らしたりする「ボーナス返済の見直し」も可能です。ボーナス返済を減らした分、毎月返済は多くなります。

■急場をしのいだら返済ペースをアップする

返済方法を見直す際に注意したいのはデメリットがあるということです。返済期間を延長したり、一定期間、返済額を軽減したりすることで毎月の返済負担が軽くなる代わりに、返済が遅れる分、利息が発生し、返済総額は多くなります。前述した「返済特例」で返済期間を延長するケースでは、5年延長で約157万円、10年延長で約323万円、15年延長で約494万円の負担増です。

とはいえ、コロナ禍で減った収入に合わせて返済額を減らした後、そのまま返済額を抑え続ける必要はありません。延長した返済期間を元に戻すなど、再度、返済方法を見直すことも可能ですから、収入が回復したら、すぐに金融機関に相談しましょう。あくまでも「一時的に返済負担を減らし、返せるようになったら元の額に戻す」ということが重要です。

民間の住宅ローンも含めて、いくらなら返済できるか、返済が厳しいのはどれくらいの期間続くかをしっかり考え、金融機関に相談しましょう。まずは、大変な今を乗り越えることを優先させ、落ち着いたら、次は早期完済を目指すのが理想です。

ちなみに住宅ローンを借り入れる際には、債務者が死亡または高度障害に陥った場合などに以後の返済が免除される団体信用生命保険に加入するのが原則です。フラット35では、特約料(保険料)が年1回の支払いですが、コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した場合など、最長で6カ月目の月末まで払込期限が猶予されます。支払いが困難な場合は相談してみましょう。

民間の住宅ローンの多くは、保険料は金利に含まれています。

■家賃相当額が最大9カ月補助される制度も

次に、生計維持者が離職・廃業したなどで賃貸住宅の家賃が払えない、という場合には「住居確保給付金」を検討しましょう。

これは以前からある制度で、家賃相当額が原則3カ月、最長9カ月間補助されるものです。本来は年齢制限を含め、厳しい条件がありましたが、コロナ禍により現在は以下のように条件が緩和されています。

① 主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内。または個人の責任・都合によらず、給料等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少している
② 直近の月の世帯収入合計額が住民税の均等割が非課税となる額の12分の1と、家賃(上限あり)の合計を超えない
③ 世帯の預貯金合計額が市区町村の定める額を超えない
④ 誠実かつ熱心に求職活動を行う

以前は離職・廃業していることが条件でしたが、在職していても収入が減っていれば対象になるため、休業状態の人も申請できる可能性があります。

②③の具体的な額は自治体によって異なります。例えば東京23区の場合、世帯収入合計額が単身世帯では13万8000円、2人世帯では19万4000円、3人世帯では24万1000円を超えず、預貯金が単身世帯では50万4000円、2人世帯では78万円、3人世帯では100万円を超えないことが条件となります。

給付額も自治体によって異なり、1人世帯では5万3700円、2人世帯では6万4000円、3人世帯では6万9800円となっています。

相談窓口は、生活困窮者自律相談支援機関(自治体が直営または委託している社会福祉法人など)です。

自治体によっては独自の支援策を設けている可能性もありますから、問い合わせてみるといいでしょう。

■失業等が対象だった緊急小口資金の利用も可能に

また、住宅ローンの返済がきつい、家賃が払えないといういずれかの場合、「緊急小口資金」や「総合支援資金」の利用を検討する手もあります。これは生活が困難な場合に市区町村の社会福祉協議会で借りられるものです。緊急小口資金は最大20万円、総合支援資金は単身者では月額最大15万円、2人以上の世帯では同20万円が3カ月にわたって貸し付けられます。

井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)
井戸美枝『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)

総合支援金は本来、失業等で生活費に困った場合に利用できるものですが、新型コロナウイルスの影響による収入減では、失業していなくても対象になります。

いずれも無利子で借りられるので、住居費に困るのが短期の場合には、これらの資金を利用して急場を凌ぐ方法もあります。

絶対に避けたいのは、滞納したり、そのまま放置したり、住宅ローンや家賃のために別にお金を借りたり、といったこと。セーフティネットはありますから、まずは金融機関や自治体に相談する、問い合わせるということを心掛けてください。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャルプランナー
経済エッセイスト。関西大学卒業。厚生労働省社会保障審議会企業年金、個人年金部会委員。『大図解 届け出だけでもらえるお金』など著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 井戸 美枝)

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