青息吐息の外食業界で「餃子の王将」が大健闘できているワケ
プレジデントオンライン / 2020年7月1日 11時15分
■コロナの影響を最小限に抑えた王将
3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や店舗の臨時休業、営業時間の短縮などで大幅減収となっている外食店が少なくないなか、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスはその影響を最小限に抑えることに成功した。
日本フードサービス協会の調査では、3月の外食売上高(全店ベース)が前年同月比17.3%減、4月が39.6%減と大きく落ち込んでいる。そうしたなか、王将の既存店売上高は3月が3.4%減、4月が21.7%減、5月が11.9%減と持ちこたえている。なぜ王将はこのような結果を出せたのか。
■新容器でラーメンの持ち帰りが可能になった
それは以前から「持ち帰り」と「宅配」を強化していたからだ。昨年4月に持ち帰り用の冷やし中華を発売。また、持ち帰り用の生餃子のセールを積極的に実施したり、昨年8月からは持ち帰り用の餃子のタレをリニューアルして販売したりしている。今年3月には、電子レンジでご飯とおかずを一度に温められる新しい容器を使った持ち帰り用の「レンチンシリーズ」を発売した。これにより新たにラーメンの持ち帰りが可能になった。
また、今春は全国的に学校の休校が広がったことを受けて、食事支援を打ち出し、3月から5月末まで持ち帰り用の「お子様弁当」を販売した。スマートフォンで持ち帰り用の商品を注文・事前決済できるシステム「EPARK」の導入も進めてきた。王将では現在、全国全店舗の7割にあたる約530店が同システムに対応している。
宅配に対応した店舗も増やした。宅配は2017年に出前館に対応する形でテスト導入しており、さらにUberEatsにも対応。5月25日時点で約200店で実施している。
■持ち帰りの売上構成比はもともと上昇していた
こうした施策が功を奏し、すでに20年3月期から持ち帰りの売上構成比が高まっていた。上期(19年4〜9月)は16.6%だったが、下期(19年10月〜20年3月)は19.3%になった。そして4月の持ち帰り売上高は前年同月比1.9倍で、売上構成比に占める割合は4割に拡大。さらに5月は、持ち帰り売上高が前年同月比で2.2倍に急増している。
立地の影響も大きい。王将は全国の駅前や繁華街のほか、郊外ロードサイドにも多く出店している。新型コロナでは外出を自粛する人が増え、街から人が消えたわけだが、その影響は地方よりは都市部、郊外ロードサイドよりも駅前や繁華街に大きかった。後者に集中的に出店している外食店は厳しいが、王将はどちらかといえば全方位的に出店している。それゆえ、この面で大打撃を被ることはなかった。
■にんにく不使用餃子で新規客層を狙う
「餃子ブーム」が追い風になっていることも大きいだろう。ここ数年、餃子を売りとする店が増えている。関東圏を中心に店舗展開している餃子居酒屋チェーン「肉汁餃子製作所ダンダダン酒場」が代表的だ。ブームの中で、王将は売りの餃子を前面に打ち出して需要の取り込みを図っている。食材にこだわり、豚肉とキャベツ、ニラ、ニンニク、生姜、小麦粉は全て国産だ。なかでもニンニクと小麦粉は産地にもこだわっている。この餃子が業績を下支えしているのだ。
さらに、16年からニンニクが入っていない「にんにくゼロ餃子」を発売。ニンニクの臭いを気にする人が気軽に食べられるように開発した。19年7月にはこれを進化させて、「にんにくゼロ生姜餃子」を発売している。国産生姜を通常の餃子の2倍使用し、生姜の香りと味を引き出すために皮の厚さや具材のバランスを変更した。
ニンニクが入っていない餃子には、これまでリーチできていなかった客層の開拓が期待できる。例えば女性層だ。現状の王将は男性客が約7割となっているが、ニンニクが入っていない餃子であれば臭いを気にする女性でも気軽に食べられる。あるいは性別にかかわらず、販売職や営業職など、口臭を気にしなければならない職業の人を取り込むことも可能だろう。
■消費税増税後は「生餃子」持ち帰り販売に注力
持ち帰り用の「生餃子」の販売にも力を入れてきた。著名人を起用して持ち帰りの生餃子を訴求するテレビCMを放送したほか、前述の通り、生餃子のセールも積極的に実施している。昨年10月の消費増税後も、持ち帰りならば軽減税率が適用されることを念頭に、10〜12月は毎月セールを行った。これらは「王将は持ち帰り商品も充実している」というイメージの強化につながっており、新型コロナ下で威力を発揮したというわけだ。
もともと持ち帰りが多いハンバーガーチェーンは、外食チェーンの中でも業績を維持している。王将も、数年かけて行ってきたさまざまな施策が、新型コロナ下で売り上げの下支えとなった。
とはいえ、減収であることに変わりはない。あくまで、ほかの多くの外食店よりはマシという程度にすぎない。市場の変化に合わせて、さらなる施策を講じていく必要があるだろう。
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店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)
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