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当初の勢い過去のものに…なぜ、山本太郎は女性に嫌われてしまったのか

プレジデントオンライン / 2020年7月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

■都知事選では起きなかった「れいわ旋風」

約1400万人の人口を抱える首都・東京では近年、2つの「旋風」が起きた。1つは、先の都知事選で再選を果たした小池百合子都知事による「小池旋風」。もう1つは、2019年の参議院選挙で「れいわ旋風」を起こした山本太郎元参議院議員によるものだ。だが、小池氏が4年前の前回都知事選で獲得した291万票から約75万票伸ばし、史上2番目となる約366万票で圧勝したのに対し、山本氏の支持は今回の都知事選で広がることはなかった。異彩を放つ山本氏が「れいわ旋風」を再び起こすために必要な何かとは――。

「主要4候補の中で、日本維新の会の推薦候補がビリになるのは予想通りの結果だったが、2位と3位はもう少し僅差になると思っていた。山本氏の票が思ったよりも出なかったということは、そこが限界ということなのかもしれない」

都知事選の開票日から一夜明けた7月6日、選挙取材を重ねてきた全国紙政治部記者の1人はこう首を傾げた。政党の推薦を受けず、ほとんど選挙活動を行わない「オンライン選挙」に徹しながらも幅広い層から支持を得た小池氏は366万1371票を獲得、その得票率は59.70%に達した。15.21ポイント上積みされた得票率を見ると、2016年夏の初当選から翌年の東京都議選に向けた「小池無双」状態が再来したようにも映る。

■このままでは山本太郎には「伸びしろ」がない

永田町を取材する政治記者たちを「おや?」と思わせたのは2位争いだった。制したのは立憲民主、共産、社民の野党3党が支援した元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏で、その得票数は84万4151票。わずか1年前の参議院選挙で約230万票が集めた「れいわ新選組」。その代表の山本氏は3位の65万7277票にとどまった。

たしかに宇都宮氏は過去2回、都知事選に立候補し、それぞれ90万票以上を獲得してきた「猛者」だ。出馬表明が告示日3日前になった山本氏の出遅れ感もある。だが、全国行脚もして知名度のある山本氏は、コロナ禍で展開された都知事選の街頭演説で他候補も羨むほどの多くの支援者を集めていたはず。それだけに、逆に「伸びしろ」のなさに注目が集まってしまうことになった。

山本氏の原点は、2013年の参議院選挙東京選挙区(改選数5)に無所属で出馬し、66万6684票を獲得したことにある。自民党の武見敬三元厚労副大臣を上回り、4位で初当選した。その後、現在は国民民主党の小沢一郎衆議院議員とともに「結党」もしたが、2019年4月には「独立」し、れいわ新選組を設立した。初陣となった同年夏の参議院選挙で、山本氏は全候補者で最多となる100万票近い比例個人票を獲得。だが、れいわ新選組として得られた比例2議席は難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏と、重度の障害を抱える木村英子氏に譲り、代表の山本氏は「元参議院議員」という立場を選択した。その発想と戦略は従来の政界にはないもので、「この『れいわ旋風』が次も起きれば大きな影響がある」(自民党ベテラン議員)との警戒を誘ってきた。

■女性支持が低すぎる山本太郎

ただ、山本氏が2013年参議院選挙と今回の都知事選で獲得した票は「66万~67万票」で、その流れに大きな変化は見られない。れいわ新選組は2019年の参議院選挙の際、若い世代から人気があった一方で、高齢者の支持は低かった。今回の都知事選で朝日新聞が実施した出口調査を見ても、山本氏の支持は10代~60代で13~16%だったものの、70歳以上は8%にとどまる。リベラル層が重なるとされる宇都宮氏は高齢層が比較的高く、若年層の支持が低いのとは対照的だ。

舌鋒鋭く小池氏を批判し、来年夏に延期された東京五輪・パラリンピックの中止や総額15兆円のコロナ対策といった公約とともに聴衆を鼓舞する演説はキラリと光り、会場は熱気に包まれる。だが、その早口でせわしなく手を動かせる演説手法には「なんか脂ギッシュな感じでついていけない」(都内在住の40代女性)、「ルックスやがっちりとした体形は良いけど、なんとなく怖い」(都内在住の50代女性)との声も漏れる。都知事選でNHKが実施した出口調査によると、小池氏は男性の約5割、女性の60%台後半から支持を集めたが、山本氏は男性からの人気は宇都宮氏とほぼ互角だったものの、女性の支持は主要候補者の中で低かった。

■野党共闘では「れいわ」は埋もれる

「いやぁ、強かった百合子山。高かった百合子山」

7月5日、午後8時の開票と同時に小池氏の当選確実が伝えられると、山本氏は清々しく白旗をあげた。一部の他陣営が惨敗しても「善戦できました~」と手前味噌で語っているのとは対照的で、そのスッキリした表情に共感する人々は少なくない。「れいわ旋風」が止んだとはいえ、次期衆議院選挙で東京での議席獲得は十分に狙える。山本氏は今後について「一番近い国政にチャレンジしつつ、地方選挙と両方で準備したい」と語っており、その準備と考えれば都知事選出馬は悪い選択ではなかっただろう。

ただ、野党共闘の足並みが乱れたことから厳しい声もあるのは事実で、立憲民主党の福山哲郎幹事長は7月7日の記者会見で「(宇都宮氏と)支持層が重なっている山本氏が最終局面になって出たということで、野党側の票が割れることは自明になった」と批判した。

山本氏は、衆議院選挙での野党共闘は消費税減税が前提になるとし、国民民主党の玉木雄一郎代表も「消費税減税」で共同歩調をとるべきだとの考えを示している。とはいえ、野党共闘に入れば「れいわ」としては埋没する可能性があるのも事実だ。れいわよりも「野党」がクローズアップされ、政党としての獲得議席が増えるかどうかは見通せない。しかし、逆にれいわ単独で選挙に臨めば他党と競合してしまい勝利をつかむことは難しく、結果として自民党の勝利に「貢献」することにつながりかねない。こうしたジレンマをいかに解消するのかが問われている。

■次は広島で「旋風」を巻き起こす

頼りない野党の中で、安倍晋三政権や現職候補への批判を展開し、その受け皿になることができる類まれな山本氏のキャラクターを埋没させてしまうのはもったいないものがある。河井克行前法相夫妻をめぐる公職選挙法違反事件などで安倍政権の支持率は急落しており、本来ならば山本氏の「出番」というところだろう。

そこで1つ、従来の発想にとらわれない山本氏に提案をしたい。検察当局は河井氏側からの現金受領者は「不処分」とするようだが、広島県内では「政治とカネ」問題に辟易としている県民は多いはず。現金受領者が多い分、広島の政界は次の選挙で大きく変わる可能性が潜んでいる。ビッグチャンスが到来するかもしれない。山本さん、次は広島で「旋風」を起こしてみてはいかが?

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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