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コロナは中ボス…きたるラスボス最恐ウイルスにユニクロマスクで勝てるか

プレジデントオンライン / 2020年7月21日 11時15分

■新型コロナよりも恐ろしい感染症

7月中旬、東京都では新規感染者が200人を超える日も出るなど、“第2波”への警戒感が強まっている新型コロナウイルス感染症。いまだ予断を許さない中、マスクメーカー関係者からは、「コロナは良い予行演習になりましたね」という不気味な予言が聞かれる。

彼らは何も、いたずらに市民の恐怖心を煽るつもりではない。新型コロナウイルス感染症以上に発生を恐れている感染症の存在があるからだ。

それは、強毒型の新型インフルエンザ感染症の登場であり、鳥インフルエンザ(H5N1型)である可能性が示唆されている。

そもそも新型インフルエンザにはどのような分類があるのだろうか。2008年に世界銀行は下記のような図表をまとめている。世界の死者数が5000万人ともいわれる過去最悪の被害をもたらしたスペイン風邪ですら、強度の「弱毒性」で致死率は2~2.5%。関係者が恐れているのは、最下部の新型インフルエンザの発生で、まだ社会が経験したことのない「強毒性」であり、致死率は5~15%にものぼると推定されている。

新型コロナウイルス感染症の致死率は0.2%未満とされていることからも、下図表にあてはめれば軽度から中度の「弱毒性」に位置づけられると想定される。

H5N1 鳥インフルエンザは鳥の間で感染を続けており、鳥から偶発的に人間や豚へ感染することを繰り返すことで、人間に感染する強毒型のウイルスが誕生する懸念がある。かねて「いつ出現するか、分からない」と専門家から警鐘が鳴らされてきた。その懸念は当然、今この時にも消えてはいないのだ。

国は被害想定を、人口の4分の1である3200万人が感染、入院患者53万人から200万人、死亡者17万人から64万人としている。

■布マスクは「飛沫感染」を防ぐもの

強毒型のウイルスが発生し、感染拡大した場合は、どのような感染対策を打つべきなのか。

日本感染症学会は、空気感染を想定した防御を推奨している。空気感染するという確証はないものの、感染した場合は重症化するということに鑑み、「医療従事者は空気予防策も採用することが勧められる」としている。

空気感染対策をするということは、今の新型コロナウイルスで推奨されている布マスクの対応とは勝手がまるで違ってくる。

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され、マスクが品薄になった当初、関係者の間では、新型コロナウイルス対策として布マスクを推奨してよいかどうかという議論がなされた。

その際、感染の広がり方の分析によると、多くの事例は飛沫感染であることが疑われたことから、“患者自身から飛ぶ飛沫を少なくする意味で布マスクの活用も有用”という判断がなされた。

余談にはなるが、この「布マスク推奨」が現在のマスク不足を解消した理由の正体だ。マスクを過剰な家庭内在庫しようとする気持ちの根底にあるのは「手に入らなくなったらどうしよう」という危機意識。「いざとなれば自宅にある布でマスクをつくればいい」という、布マスク使用推奨と手作り布マスク啓発は、市民の切迫感という精神面に働きかけるのに十分だった。

■空気感染では「ユニクロのマスク」も無効化される

現在は、さながら“布マスク全盛期”。ユニクロの「エアリズム」に購入が殺到したことを挙げるまでもなく、そのほかのアパレルメーカーも布マスクを相次いで発売、冷感などの機能性も受け、好評を博している。

プロフェッショナル&自家製セーフティマスク
※写真はイメージです(写真=iStock.com/lawcain)

しかし、布マスクは3~5マイクロメートル程度の飛沫などをカットすることはできても、空気感染の防御策として推奨される0.3マイクロメートル程度の微粒子の捕集は保証されていない。

仮に強毒型が感染拡大した時には、新型コロナウイルス感染症の予防策とは違うものになる、ということを念頭に置いておく必要がある。有名になった“3密回避”も使えない可能性が高い。致死率の高さ、社会機能停止への影響の大きさから、厳格な接触機会減少が求められるだろう。厚生労働省でも新型インフルエンザ感染拡大防止のためには、「社会的活動における人と人との接触の機会を少なくすること」を挙げ、そのためには、各世帯で最低限の食料品・生活必需品等の備蓄が求められるとしている。

■空気感染をも防ぐマスクはあるのか

生活者には、マスクに種類があることもあまり知られていないかもしれない。

マスクは「家庭用」「医療用」「産業用」に大別される。

家庭用の中に布マスク(ガーゼマスク)や不織布マスクがあり、医療用にはN95などの規格マスクがある。N95マスクはNIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したマスクで、最も捕集しにくいと言われる0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上捕集できることが確認されている。厚生労働省では、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザや結核菌の対策指定品の一つとしている。

大雑把な表現をすると、家庭用マスクは“している本人の飛沫拡散予防”に力点が置かれている。だから、他人の飛沫を吸い込むことを防止できるものではない、という弱点がある。他方のN95マスクは、この“吸い込み予防”にも配慮されており、吸い込み口になりやすい顎などにフィットするよう、カップ型などが多い。

ただ、N95マスクの日常生活での使用は必ずしも想定されていない。微粒子の吸い込みを防止する分、息苦しく、日常の使用には不向きだからだ。フィットにも手技の取得がいる。

■マスクメーカーの使命感と問題意識

しかし、だからといって、N95マスクの利用価値がないというわけではない。入院すべき患者の受け入れが困難になると、自宅での療養が余儀なくされるが、その際、家族が看護する必要に迫られたときに活躍するからだ。あるいは、限られた人との接触機会にも用いられるだろう。2009年に厚生労働省「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」がまとめたガイドラインでも、「家族内で新型インフルエンザに感染した者を世話する等、感染者と濃厚な接触が避けられない場合は、医療従事者以外の者も、N95マスクを使用することは、適切な教育・訓練が行われることを前提として今後も検討する価値があると思われる」と記している。

だからこそ、医療用マスクであるN95マスクにも、実は市販品がある。日常生活での使用が想定されていないN95規格マスクがドラッグストアなどでも流通しているのは、市販マスクメーカー間に、未知の強毒型新型インフルエンザパンデミック時にどのように貢献するかという使命感と問題意識があるからだ。

■マスク専門家の育成が急務

マスクは新型コロナウイルス感染予防策としての効果が認められる研究結果なども出てきており、価値が見直されている。一方で、「うつらない」と言い切れるものではなく、手技や環境因子で、その効果も変化すると考えられる。

重要なことは、見直されるマスクの機能に関して、「マスクの専門家」や「マスクの研究」が国内で不十分であることだ。自宅療養の事態も想定されるにもかかわらず、家庭における空間整備の議論も少ないのが現状だ。「感染した人を治す医師」の意見が重要視される半面、マスクなどはどこまでも「雑貨」として軽視されていると言ったら言いすぎだろうか。

医療崩壊を招かないためには、市民の行動こそが鍵だ。目の前の新型コロナウイルス感染症にだけ目を向けるのではなく、新興感染症の危機に常にさらされている潮流を理解し、備えを万全にすべきだろう。

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菅原 幸子(すがわら・さちこ)
「ドラビズ on-line」編集長
医薬品業界誌『月刊ドラッグマガジン』で編集長も務めたのち、2020年7月にWEBメディアの「ドラビズ on-line」に参画。ドラッグストアなどの情報を発信。

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(「ドラビズ on-line」編集長 菅原 幸子)

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