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橋下徹「安倍首相は絶対に憲法改正をやるべきだと考える本当の理由」

プレジデントオンライン / 2020年7月29日 11時15分

※写真はイメージです。 - 写真=iStock.com/oatawa

長期政権を築いた安倍晋三首相は、任期を終える前に悲願である憲法改正に踏み出すのか。さまざまな観測が渦巻くなか、橋下徹氏は「やるべきだ」と首相にエールを送る。その背景には、大阪都構想への賛否を問う住民投票の経験があった。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(7月28日配信)から抜粋記事をお届けします。

■絶対に譲れないラインは「住民投票実施」だった

2014年12月、衆議院が解散し総選挙に突入。僕や松井一郎さん(現大阪市長)、そして維新の会と、公明党が全面対決になるかと思いきや、菅義偉官房長官から松井さんのもとに「公明党が協議をしたいと言っているんだけど」という1本の電話が入ったところまでが前々号のメルマガ(Vol.207【安倍政権「最後」の総選挙(2)】大構想実現へ――僕と松井さんが「戦いの誓い」を交わした夜)。

公明党の衆議院議員候補者の選挙区に、僕や松井さんをはじめとする維新のメンバーは立候補しない。つまり維新の会は公明党の邪魔をしない。その代わり、公明党は大阪都構想の住民投票までは認めるという交渉が始まった。

(略)

僕らはとにかく住民投票までは実施したい。ここを絶対に譲れないラインと設定し、その他の自分たちの要求はそぎ落とした。つまり公明党の要求をのんだんだ。

(略)

2015年3月、大阪府議会、大阪市議会において、大阪維新の会と公明党が組み、大阪都構想の住民投票を実施することが賛成多数で可決となった。

(略)

■最後の1000段目は昇れないとわかっていても1段目を昇った

橋下は――、大阪維新の会は――、大阪都構想は――「万事休す」、と何回言われてきただろう。もう大阪都構想は止めるべきだと何回言われてきただろう。

その都度その都度、なにくそ! と自分を奮い立たせ、何か方法がないかと脳みそを絞りまくった。松井さんをはじめとする維新の会のメンバーと協議したり、優秀な役人から知恵を借りたりと、とにかく可能性が低くても、どうすれば住民投票にたどり着くのかを必死に考えた。

(略)

たとえば、ゴールにたどり着くまでに1000段の階段を昇らなければならないとする。そして最後の1000段目はどうしても昇ることができない難所だとわかっている。そんなときに、最初の1段目に足をかけるか否か。

最初の1段目を昇ったとしても、その後100段目も昇るか? 最後の1000段目は昇れないことが分かっているのに。

ここは人生をどう歩むかの人生観にかかわってくるところだと思う。

僕と松井さん、そして維新の会のメンバーは、こういうときには、とにかく昇れるところまでは昇ってみようという人生観だった。

目の前の1段を昇ることに全力を尽くす。

先の階段が昇れるかどうかは気にしない。とにかく目の前の階段を昇る。僕らはそうやって大阪都構想の階段を昇り続けてきた。

途中で出直し市長選挙をやったり、法定協議会の反対派を追い出したりと無茶苦茶なことをやり続けたが、その都度、「最後には本会議で否決されるんだから、そんな無駄なことをするな!」と言われてきた。それでも僕らは目の前の階段をとにかく昇ることに全力を尽くした。

そうして999段まで昇り、最後は1000段目を残すのみ。つまり本会議での賛成多数を得れば、住民投票に進めることができるというところまできた。

その5年前には、公明党が賛成に回ってくれるなんてことはまったく想像もできなかった。しかし5年かけて階段を昇り続けているうちに状況は変わってきた。

5年の間に維新の会は国政政党を結成し、大阪では自民党・公明党を脅かす存在になっていた。そして、たまたま2014年12月に解散風が吹いた。僕らはこのチャンスを捕まえ、公明党にケンカを売り、最後は協議に持ち込んだ。

こうして1000段目の階段を昇ることができ、住民投票の実施にまでたどり着いたんだ。

人生ってこんなものじゃないか。

(略)

ゴールにたどり着くためには、とにかく目の前の階段を昇るしかない。

そして僕が、この大阪都構想を推し進める人生で得た教訓は、「状況は必ず変わる。しかも必死にやればやるほど階段を昇るための知恵と力がついてくる」というものだ。

(略)

「諦めるな!」という言葉は、巷にあふれている。しかし僕は大阪都構想に挑戦した自分の人生経験によって、「先のことを気にして諦めてはならない!」ということを、脳みそから身体まで髄の髄まで実体験した。

そしてここまで階段を昇り続けると、もう自分の人生に完全に満足するようになる。

(略)

■外交・経済面で安倍政権の功績は大きいが

長い長い前振りだったけど、安倍さんはこのまま総理の任期を来年の秋に終えて、政治家人生を完全燃焼できたと思えるだろうか。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

確かに賛否両論があるにせよ、安倍さんの功績はたくさんある。国際社会において日本がかつてないほど存在感を示したこと、トランプ米大統領との個人的な信頼関係を築き、平和安全法制によって日米同盟をかつてないほど強固なものにしたこと、金融緩和によって従前よりも経済をよくしたこと、そして2度の消費税増税。

僕は今の時期の消費税増税には反対だが、消費税増税をやれば内閣が必ずつぶれると言われている中で、安倍さんは2度も増税を断行した。これはある意味、凄いことだ。

その他の功績もあげれば色々あるだろうが、それでも安倍さんは、このような功績だけで政治家人生を完全燃焼したと感じるだろうか。

(略)

「政治家は国民のために働く存在なのだから、それでいいんだ」とインテリたちは言うだろう。

しかし政治家といえども所詮人間だ。24時間365日、国家のリーダーとしての責任を問われ続ける。災害が生じた際の遅れは国民の生命にかかわることなので、特に台風の季節などは、毎日気が抜けない。

大阪府知事、大阪市長のときには、大阪が台風にかかるかどうかを常に気にしていた。家族旅行を予約していても、危ないなと感じればキャンセルを検討する。

日本全体を預かる首相の立場ともなれば、どれほどの緊張の毎日か。

(略)

また大阪のリーダーだった僕にすら殺人予告などはかなり来ていたので、首相ともなると、その数も質も大変なものだろう。24時間、多くのSPに守られる代わりに、完全に1人になれるプライベートな時間はほとんどないだろう。

(略)

首相の下には、霞が関の超優秀な官僚がさんざん議論した上でも判断がつかないような超難案件が次々と上がってくる。それにどんどん判断を下さなければならない。新聞の論説委員や学者のように時間無制限で延々に考え続けることができる立場ではない。

妬み嫉みの渦巻く永田町、国会議員との人間関係を築くには、面倒くさい付き合いをやり続けなければならない。議員のパーティーに呼ばれたり、議員の選挙応援に出かけたりで全国を駆け回る。

こんなことをしながら、国民の懐をあたためることだけで、安倍さんは政治家人生を完全燃焼したと感じるだろうか。

僕はそうは思わないし、安倍さんにもそう思わないで欲しい。

(略)

(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約9600字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.209(7月28日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【安倍政権「最後」の総選挙(3)】安倍さんも政治家人生の完全燃焼を! 僕や松井さんが大阪都構想「大勝負」で学んだこと》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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