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世界中で進む超低金利。ドルと円は「綱引き」状態に

プレジデントオンライン / 2020年8月10日 11時15分

■コロナショックでドル高になった理由

通常、市場に不安心理が広がって、株価が下がるようなリスクオフの局面では、ドル安円高になりやすい傾向がありました。しかしコロナショックのような極端な状態になると、「持っておけば安心」とトイレットペーパーを確保するかのように、基軸通貨であるドルへの需要が高まり、ドル高が進みました。市場からドルが干上がるような状態になったため、FRBはドルの資金供給を拡大。ドルの価値が下がっていって、現在は落ち着いている状況です。

アメリカ経済が底を打つのは2020年4~6月期。そこから回復していき、コロナ前のピークである19年10~12月期の水準までは2年かかっても戻らない、というのが目下のメインシナリオです。

そこで為替は値動きに乏しい状態が続くと見ています。リスクオフだと流動性と信用力の高い先進国通貨が買われて、リスクオンだと逆相関で新興国通貨が買われますが、今のような低金利環境では先進国通貨vs新興国通貨のようにグループ化していき、先進国通貨の力関係は「綱引き」になりやすい。さらに長期金利差はこれ以上縮まらないと見られて、期待が高まりません。結果、ドルと円もあまり大きく動かず、105~110円の間から大きく外れないようなレンジで、行ったり来たりする可能性が高いと予測しています。

■コロナの2次感染拡大が起き、経済活動が停滞

悲観シナリオはどうなるか。それはコロナの2次感染拡大が起き、経済活動が停滞して、GDPが二番底になるようなケースです。そうなるとリスクオフの地合いになり、株も為替も下落する方向に向かっていきます。年末頃、100円割れになってもおかしくありません。

今は実体経済が悪いのに、期待に支えられて株価の高い状態が続いています。20年4月、FRBがジャンク債の購入を決めたことで、株式市場に安心感が広がりました。また米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利を据え置き、年内の利上げ予想回数をゼロにすると発表したことも株価を下支えしています。

つまり、急落が起きるようなリスクを先送りして、政府や中央銀行の政策に支えられているのが今の株価と言っていいでしょう。少しでも中央銀行が出口に向かうそぶりを見せた日には、強いマグニチュードの株安や円高が起こるリスクはあります。

一方、ドル円相場の戻り歩調がやや加速していき、年末には110円付近になるというのが楽観シナリオです。ただし、アメリカの金融引き締めが早期に実施されることは考えにくく、急激なドル円上昇は見込んでいません。長期的に見ると、時間をかけて経済がポジティブになっていき、出口戦略もうまくマーケットに刷り込まれていくのが、理想的なシナリオではないかと思います。

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尾河 眞樹(おがわ・まき)
ソニーフィナンシャルホールディングス執行役員兼金融市場調査部長、チーフアナリスト
著書に『本当にわかる為替相場』『富裕層に学ぶ外貨建て投資』など。

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(ソニーフィナンシャルホールディングス執行役員兼金融市場調査部長、チーフアナリスト 尾河 眞樹)

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