難易度の高いオンライン会議をうまく仕切るファシリテーターがやっていること3つ
プレジデントオンライン / 2020年8月10日 11時15分
※本稿は堀 公俊『オンライン会議の教科書』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
■【悩み1】人数が多すぎて議論にならない
関係者を全員集めると、人数が多すぎて議論になりません(15人程度)。かといって人数を絞ると、参加できなかった人と情報面や心理面でギャップが生まれてしまいます。何かよい手立てはないものでしょうか。
【解決策1】いつも全員で話す必要はない
15人で会議をするからといって、常に全員で話す必要はありません。小グループに分けて議論をして、グループ毎の結論を統合するのがひとつの方法です。違う意見の人同士でグループをつくっておけば、後のまとめが楽になります。グループごとの意見が似かよることが多くなるからです。
これと似たようなのが二段階方式です。事前に小グループで話し合い、それぞれの代表者に本会議に参加してもらうのです。参加しない人は、会議をオブザーブしてもらうとよいでしょう。
議題がたくさんある会議であれば、こんな方法もできます。議題を2つに分けて、どちらか片方にだけ出席してもらうようにするのです。興味・関心の高いほうを選んでもらえば、それなりに満足してくれるはずです。
オンラインだと、こういった芸当が簡単にできてしまいます。頭を柔らかくして、なるべく少人数で話せるような仕掛けを考えてみましょう。
【解決策2】参加できない人に配慮する
こういった方策が取れないこともあります。そんなときは、限られた人だけで会議をするしか仕方ありません。そこで大事になってくるのは、参加できない人をいかにフォローするかです。
まず、参加できないことを告げるときは、「大した話ではないので、忙しい中、わざわざ来てもらうまでもない」といった言い方が望ましくなります。あなたが素晴らしいからこそ、出席する必要がないと説くわけです。
その上で、事前に意見を伺っておいて、当日持ち込むことを約束します。ビジネスチャットや共用ファイルに自分で入れておいてもらうのでもよいでしょう。何らかの形で参加の手段を用意しておくことが肝要です。
さらに、「聞いていない!」と言われないよう、会議終了後の報告も忘れてはいけません。自分がチームにとって重要な人間であり、大切にされていることが分かれば、もめることは少なくなります。
■【悩み2】リモート参加者が孤立してしまう
他のメンバーは会議室にいて、一人だけリモートでオンライン会議に参加しています。こういうやり方はよくないのでしょうか。また、このカタチでうまくやるコツにどんなものがありますか。
【解決策1】重要な議題は全員リアルか全員オンラインで
可能であれば、こういうやり方は避けたほうがよいと思います。
どうしても、リアルで集まっているメンバーの内輪感が出てしまい、リモート参加しているメンバーが疎外感を覚えてしまうからです。アウェイな感じがして、会議への参加意欲が下がってしまいます。
話し合いの濃さも変わってきます。リアルで会っているメンバーは非言語メッセージでのやりとりが使えます。かたや、リモート参加のメンバーは言葉だけが頼りです。これでは勝負になりません。
大抵は、会議室のメンバーが話し合いの主導権を握り、リモート参加者はオブザーバー的な位置づけになってしまいます。異論があったら口を挟む程度にならざるをえません。
結局、結論への腹落ち感に差が出るのが避けられません。下手をすると「みんなで決めた」というアリバイづくりに利用されるだけになってしまいます。
おそらくこのやり方が許されるのは、リモート参加者にとってさほど重要でない議題を話し合うときです。そうでないなら、全員リアルか全員オンラインか、どちらかを選択するのが望ましいです。公平に議論をするためには。
【解決策2】アウェイ感を払しょくするには
とはいえ、こうせざるをえない状況もあると思います。そんなときは、リモート参加者にアウェイ感を感じさせない工夫が大事です。
まず、リアル会議のメンバーは内輪話をしないこと。隣に座っている人とコソコソ話をしたり、耳打ちをしたりは厳禁です。話したいことがあるなら、リモート参加者にも聞こえるようにオープンでやるようにします。
よくやってしまう失敗が目で合図を送ることです。視線を送って「これ」「それ」「君」「あなた」とやってしまうのです。指さしをされても、どこに向けてなのか、リモート参加者には分かりません。面倒でも言葉で説明をするようにしてください。
加えて、なるべくリモート参加者に話を振るようにします。特に意見を求めなくても、「いかがですか?」「大丈夫ですか?」「ついてきていますか?」で十分です。時には、「今、どんな感じですか?」と心の中を尋ねるのもよい方法です。
大切なのは、気遣いしていることが相手に伝わることです。そうすれば、大きな不満は出なくなるはずです。
■【悩み3】うまくまとめることができない
みんな活発に意見を出してくれるのは有難いのですが、どうまとめてよいか分からず、発散だけで終わることが多くなります。議論をうまくまとめるには、どうしたらよいでしょうか。よい方法があったら教えてください。
【解決策1】見える化してまとめるしかない
まとめが苦手な人は見える化を徹底するしかありません。使うツールは何でもよく、リアルな手書きを映すのでも、オンラインのツールを使うのでも、やりやすいものを選ぶようにしましょう。
見える化をしたくても、「意見をどう書いてよいかポイントが分からない」という人がいます。議論をまとめる前に、発言がまとめられないというわけです。
できないなら、発言者本人にまとめてもらいましょう。「今の発言を一言でまとめると?」「ここにどう書いたらよいでしょうか?」と尋ねてみるのです。
本人が答えられなくても、「◯◯さんの発言のポイントが分かる人は?」「どうまとめたら分かりやすいですか?」と尋ねれば、誰かが答えてくれるはずです。それをそのまま書けばすむ話です。
あるいは、最初から「自分で共有ファイルに書いてください」とするのも手です。これなら、発言の要約をせずにすみ、整理するほうに注力できます。
あとは、似たようなものをグループにして、まとめの言葉をつけていきます。その上で、「どれが重要か?」の優先順位を議論すれば、自ずとまとまっていきます。
ここも難しければ、メンバーに助けてもらうとよいでしょう。一人くらいこの手の作業ができる人がいるはずです。
【解決策2】メンバーの力を積極的に活用する
このように見ていくと、必ずしもファシリテーターがまとめる必要はないことに気づきます。だったら、最初から「誰かまとめが得意な人はいませんか?」と丸投げするのもひとつの方法です。「餅は餅屋」と言いますから。
ファシリテーター(進行役)は会議に一人いれば十分です。複数いると誰が舵を握っているか分からなくなります。
ところが、ファシリテーション(促進)は、みんなでやれば話し合いはより円滑に進みます。それぞれの得意なスキルを持ち寄って。
そういう意味では、みんなのファシリテーション能力を引き出すのも、よいファシリテーターの条件かもしれません。何でもかんでも一人で背負いこまず、メンバーを信頼して手放すことも大切です。
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堀公俊事務所代表/組織コンサルタント
神戸市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーにて商品開発や経営企画に従事。2003年「日本ファシリテーション協会」を設立。関西大学、法政大学、近畿大学で非常勤講師を務める。現在、堀公俊事務所代表、組織コンサルタント、日本ファシリテーション協会フェロー。
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(堀公俊事務所代表/組織コンサルタント 堀 公俊 写真=iStock.com)
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