日本「人力」韓国「IT」台湾「信頼」…3国のコロナ対応はなぜここまで差がついた

プレジデントオンライン / 2020年8月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olivier DJIANN

■コロナ対策が評価された「台湾」と「韓国」

日本はコロナ対策では、クラスター対策で「人の記憶」に頼るコロナ対策を行っています。一方、韓国は「IT対策」でのコロナ対策を行ってきました。4月ごろの世界の論調は韓国の新型コロナ対策が称賛され、取り上げられていました。しかし、8月1日の今となっては、韓国でも第2波の到来から、人口100万人あたりの感染者数は(約279人)と、日本(約271人)と比較しても大差がなくなってきています。つまり、日本型の「人力対策」でも、韓国型の「IT対策」でも今のところ結果はそれほど変わらない状況なのです。全く違う結果を出しているのが「台湾」。国土、人口などはそれぞれ異なりますが、日本、韓国、台湾の対策をそれぞれみていくことで、参考にできる点は取り入れていくべきなのです。

東アジアにおけるコロナ死亡者数は、欧米と比べると格段に少ない状況です。その中でも、ITを駆使した対策をいち早く取れたのは、SARS・MERSの経験をした台湾や韓国が代表的です。総統や大統領が陣頭指揮を執り、検査数を増加させ、ハイテクを駆使して、ロックダウン(都市封鎖)なしで第1波を切り抜けました。日本ではオリンピック開催を控えて初期対応は遅れたにもかかわらず、死亡者数が非常に少ない点が謎と言われていますが、後ほど1つの要因について解説します。

■第2波も抑え込んだのは台湾

8月1日段階でも感染者数は467人であり、人口100万人あたりの感染者数が20人以下のままで4月~8月1日の間も感染者数を抑え込んでいます。台湾は中国大陸から約150kmしか離れていなかったことから、第二の武漢になる可能性も十分にありました。しかし、そうはならなかった。しかも、ロックダウン(都市封鎖)や休校、飲食店の休業強制をしないで、これを成し遂げているのです。強制的な検査や隔離は徹底して行ってきましたが、行政と国民の間に信頼関係が構築できていたからこそ成し遂げることができたと言えるでしょう。

人工知能(AI)とビッグデータの巧みな活用を行い、国民健康保険と入国管理と税関のデータベースを統合して入国者を感染症リスク別に分類しています。台湾は2003年のSARS流行の経験から、いち早く中国本土からの入国を禁止し、感染者を隔離し、スマートフォンを活用して感染経路を突き止める体制を整え、感染者に接触した可能性がある人たち全員に警告メールを送るなどの対策を徹底しました。

台湾を通して感じることは、国民を安心させることが、一番の感染症対策になるのかもしれないということです。コロナウイルスが拡大した時に、感染の病気の情報だけでなく、生活用品が手元に無くなるかもしれないといったことからも世界中の人々は混乱状態に陥りました。

台湾のIT大臣オードリー・タン氏は、コロナ対策として、データ主導型の対応でマスクの店頭在庫確認アプリの開発を支援し、台湾内の6000カ所以上のマスクの販売拠点で材工が3分ごとに自動更新されるマップを2月6日には開発しています。この情報の可視化により、国民が安心して行動をとることができたのです。マスクの在庫がアプリ上で可視化されることで、国民は情報の透明性から「安心」を感じることができます。その「安心」は、実は「行政への信頼」「自国民としての自信」につながるのです。

■韓国のコロナ対策は何が異なったか

韓国は全土で、大量で迅速な検査実施を可能とし、第1波においては、早期のウイルス封じ込めに成功した国の一つです。「国内の全体状況が一目で分かる画面」「国内や世界の状況が一目で分かる画面」「1日の感染者数の詳細やアンケート調査などが確認できる1日報告書」の情報を毎日提供しています。また、人口5100万人に対して、接触者追跡にビッグデータを活用し、クレジットカードの利用履歴や携帯電話の位置情報をもとに感染者の移動経路を明らかにしました。韓国では、2015年に流行したMERS(中東呼吸器症候群)の経験から、感染拡大を阻止するためなら個人のプライバシーが犠牲になっても仕方ないという考え方の人が多いようです。

韓国では5月ごろから再びクラスター感染が発生しており、これに対してもクラスター感染が確認されてから、「約2週間で約4万6000件という徹底した検査とIT(情報技術)を駆使した防疫システムで第2波への移行阻止へ総力を挙げる」と日経新聞で報じられています。

また「韓国では携帯電話の位置情報のほかカードの利用記録などから感染者の動線が瞬時に把握され、地方自治体のホームページなどで詳細が公開される。匿名だが家族や同僚など周囲にはわかってしまうことが多い」ため、日本ではここまでのITを駆使した封じ込め対策の導入はハードルが高いでしょう。日本においては、6月19日にスマートフォンにインストールする接触確認アプリ「COCOA」がリリースされています。携帯端末のBluetooth技術などを用いて、1m以内、15分以上の接触があった場合で感染者が出た場合に、接触者に通知を出すというものであり、韓国に比べればプライバシーが保護されたアプリとなっています。

■日本のコロナ対策成功は「2020年最大の謎」

米国では不要不急の外出をするものには、罰金を課すなど極めて厳しい対応をしていますが、日本のおける外出自粛は強制力のない「お願い」ベースでした。日本がロックダウン(都市封鎖)をせず、罰金も課さない方法を取っている対策は世界的にも奇策に映ったのでしょう。死亡者数が少ない日本について、英BBCが4月末には「日本を『最も健康的な国家』であり、『マスクを着用する文化などを称賛』」した内容を伝えています。

もともと医療水準の高い点や、マスクと着用する習慣があること、ハグなどのスキンシップの文化がないことなどが挙げられますが、日本の成功の大きな要因の1つは高齢者施設での感染拡大を抑制できたことです。高齢者は重篤化しやすいことから、ここを最初に食い止めたことが、日本における死亡者数伸びを抑えているのです。

日本で緊急事態宣言が出されたのが4月7日でしたが、介護施設では実は、2月末までには独自に「ロックダウン」を実施していました。2月末時点では国内の感染者数の累計もまだ約200人でした。国内の一般国民がまだ危機感を感じていない時期に既に対策をとることができていた介護施設や事業関係者の対応は素晴らしかったと言えるでしょう。

■行政も“ヒト”であることを忘れてはいけない

官僚も政治家もコロナウイルスに感染するリスクを抱えている“同じ”「ヒト」です。周りを見渡せば、われわれは同じリスクと向き合いながら、いまを共に生きている「ヒト同士」。

それにもかかわらず、「自分だけが良ければいい」「自分だけは助かりたい」「行政は何をやっているんだ」といったエゴが渦巻いている社会では、コロナウイルスを抑え込むことは難しいのかもしれません。

行政、企業、個人それぞれが「不信感」を持つことなく、「信頼関係」を構築することで、国は1つとなることができるのです。行政の方針にも皆で同じ方向に向かって信じて進むことができるのです。台湾における、「情報の透明性」を基盤とした政府と有権者との信頼関係の構築をわれわれは見習うべきなのです。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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