ついに米国が中国に「宣戦布告」…日本の本格参戦前に米につきつけたい3条件

プレジデントオンライン / 2020年8月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nastco

■ポンペオの演説に怒りを感じた

マイク・ポンペオ国務長官が7月23日に「Communist China and the Free World's Future speech(共産主義者の中国と自由世界の未来に関する演説)」を行った。

演説が行われた場所はニクソン大統領図書館・博物館であった。リチャード・ニクソン大統領は米中和解の立役者であり、同大統領に関する資料が揃った施設で中国共産党に対する対抗演説を行うことは米国の対中姿勢の歴史的な転換を意図したものと捉えてよいだろう。

しかし、筆者はポンペオ国務長官の演説内容は遅きに失したものであったように思う。ポンペオ国務長官の演説内で示された対中認識は一部の細かな認識を除いておおよそ正しいものだ。

この演説は自由世界に属する国々に対して米国とともに中国に対することを求める演説であり、そのこと自体にも何ら異論はない。しかし、筆者はこのポンペオ演説に対しては、今更になって、われわれ日本人に偉そうにその程度の対中認識を述べるのか、という怒りが湧いてきた。そのような意味では、この演説は筆者が日本人であることを再確認する良い機会にもなったとも言える。

■中国の脅威を育てたのは米国だ

もちろん、中国の目と鼻の先にあり、中国の軍事的・経済的な脅威にさらされているわれわれ日本人が米国からの軍事的支援を必要としていることは明らかだ。このこと自体に反対する日本の人々もいるが、それは現状認識としてあまりに論外なので相手にしない。

むしろ、ポンペオ国務長官が述べているように、今後さらに自由世界の国々の対中協力は進むだろうし、日本もその一翼を担って進めていくことになるだろう。

ただし、筆者は米国の態度変更については全く信用することができない。ポンペオ国務長官が自ら演説で言及していたように、現在の日本にとっての中国の脅威を育ててきたのは紛れもなく米国だからだ。

第2次世界大戦で敗北した日本は戦後奇跡の復興に成功し、米国をしのぐ勢いの経済成長を一時期には成し遂げた。ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた日本に対して、1980年代から1990年代まで米国は強烈な圧力をかけて日本の経済覇権に潰しをかけてきた。米国が日本の軍事力強化を陰に陽にけん制し、周辺国も便乗してきたことから、日本は自衛隊という中途半端な軍事力しか持つことしかかなわなかった。

在日米軍は周辺の野蛮な国々に対する抑止力として機能してきたことは認めるが、同時に米国は東アジアにおける平和国家日本の覇権を抑えるべく、周辺国とのパワーバランスを取らせる政策を実行してきたと言えるだろう。

■米国は同盟国・日本をないがしろにしてきた

その一方で、米国は中国を第2次世界大戦の戦勝国として核保有を認め、米中和解以降は中国の人権侵害などに目を瞑り、WTO加盟等の驚異的な経済成長の後押しを行って、共産中国を日本にとっての現実的な脅威として目の前に出現させるお膳立てをしてきた。

その結果として日本よりも強大な軍事力・経済力を持った共産中国が誕生しただけのことだ。米国が日本という同盟国パートナーを蔑ろにし、経済的な果実に釣られて中国という脅威を育てたことをわれわれ日本人は決して忘れるべきではない。

日本の心ある人々は、中国の人権抑圧状況、そして軍事的脅威について米国よりもはるか以前から認識してきた。たしかに、米国は朝鮮戦争で中国と戦火を交えたものの、米中和解以降も常に中国からの内政干渉的なアプローチにさらされてきた日本とは対中脅威認識は全く異なるものがあった。その日本の忠告を無視してきたのは米国だ。

■米国の対中政策協力に関して3カ条の要求をせよ

したがって、成長した中国が米国にかみつく段階になって、米国が「自由社会のリーダーとして中国に対峙します、皆さん付いてきてください」と言ったところで、日本は米国のポチじゃあるまいし「分かりました、親分! ついていきます!」となるべきではない(日本の政治家はそのような態度を示しそうで正直言って不安だ)。

実際、米国は自分たちのみで米中貿易交渉を行って知財や不公正な貿易慣行を是正するコメントを中国から引き出している。この中国側のコミットメントには日本は当然に含まれてないのだから、米国は対中国の経済権益について自分たちの都合で動いているだけのことだ。

日本と中国の緊張関係は地理的環境から有史以来続いているものであり、最近まで中国との関係で甘い汁だけを吸っていた米国に対中関係を改めて指導されるなど真っ平ごめんだ。米国が対中国権益で抜け駆けをしていつ裏切るのかも分からない中で、日本が米国の要求に対して無条件に乗っかることは極めて危険である。

日本政府は米国に対して後戻り不可能なコミットメントを求めるべきだ。そのため、日本政府は米国の対中政策への協力に関して3カ条の要求を行うことが望ましい。

■TPP、日米合同軍、米国企業の立地…

(1)米国はTPPに直ちに復帰すること

米国は直ちにTPPに復帰するべきだ。そして、米国が手に入れた中国とのあらゆる経済交渉の成果はTPP参加国にも同じだけの成果を共有するべきだ。日本およびアジアの同盟国・友好国を差し置いて米国の中国との単独交渉は許されるものではない。したがって、米国はTPPに無条件で再加盟し、中国に対するアジア太平洋地域の体制構築に力を入れるべきだ。

(2)日米合同軍を創設すること

米国が在日米軍等の東アジアの軍事環境を自国都合で簡単に変えることができないよう、NATO軍のような日米合同軍を創設することに合意することが重要だ。安全保障面における情報共有なども米国が持つ情報を可能な限り全て日本に提供するべきだ。米軍と自衛隊の協力関係を深化させることを一気に進めることが望ましい。

(3)日本への米国企業の立地を行うこと

米国のトランプ大統領は日本企業の工場立地等を米国に行うことを求めたが、日本に対する返礼としての工場立地の話はいまだ具体的に行われていない。日本は米国の同盟国であり、米国が中国からのサプライチェーンの見直しを進める上で、日本への立地は当然に検討されるべきことだ。米国は日本に対中国政策を求める以上、日本が中国市場の一部を失うことの補塡を当然に行うべきだ。

■米中対立は日本の国益を増進する千載一遇の好機

日本は世界第3位の経済大国であり、中国に直面する東アジアの大国だ。米国はその日本に対して米国都合の対中国政策に協力を求めるなら、米国は上記の条件を直ちに受諾するべきだ。

日本こそが米中対立の勝敗を決する国なのであり、米国は日本に対して「本当に中国と対峙する決意がある」ことを示すべきなのだ。日本人は自らの国が持っている潜在的交渉力を再認識するべきだ。

日本政府はポンペオ演説を聞いて喜んだり・狼狽したり、米国の対中要求に何でも従うだけでなく、二度と米国が日本を裏切って中国と手を組むことができないように、日本の国益に沿った提案を米国側にのませていくべきだ。

米中対立という千載一遇の好機をつかみ、日本の国益を最大限増進させることができる、日本の国民のための「真の代議士」が日本の政治を行うことに期待したい。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。

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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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