コロナで花開いた、トヨタの"地味"な改革

プレジデントオンライン / 2020年9月5日 9時15分

■トヨタと日産はアリとキリギリス

業界トップのトヨタ自動車は2021年3月期の営業利益予想を5000億円と発表した。20年3月期の営業利益が2兆4000億円だったことからすれば、数字としては大きく落ち込んでいる。それでも、この状況下で業績予想を出したことは高く評価できる。

5000億円の利益予想については、市場も好意的に捉えている。発表した数字が仮に2000億円だったとしても、市場は評価していただろう。現時点で黒字の見通しを発表したことが、市場に安心感を与えているのだ。

豊田章男社長の「販売台数が700万台になっても赤字にならない計画です」という言葉にも驚いた。リーマンショックのときトヨタは大きな赤字を出したが、700万台という台数は当時を下回る数字だ。それでも利益が出せるのは、地道な固定費の削減によってこの10年ほどで劇的に収益構造が改善したということだ。

トヨタは「モビリティカンパニー」を掲げるなど、ここ10年で自動車だけでなく社会全体を語る企業に変わってきた。自動車産業自体はあまり変化していない中で、自ら変わろうとして歩みを進めてきた自覚や責任感が、今回の業績予想の発表や収益構造の改善に繋がっていると感じる。今後大きく成長するのではないかと予感させる。

トヨタ以外も複数のメーカーが黒字予想を発表した一方で、厳しいのは日産だ。収益環境は、現在(20年6月8日時点)の488円という株価を正当化できる材料があるとは言い難い。

この状況を変えるのは、販売台数の増加とコストの削減が必須だ。だが、それを実現するための主な手段の1つである新車の投入はコロナの流行以前から遅れていると言われていた。20年6月に北米で「ローグ」の新モデルを発表したが、ディーラーに届くのはもっと先になるし、1モデルで収益の問題が解決するわけではない。

■マツダの行ったリブランドの取り組み

参考になるのはマツダの行ったリブランドの取り組みだ。「安売りするブランド」というイメージを変えるために7年ほど前からフルモデルチェンジに挑み、約5年かけて達成した。日産にもこれと同様の期間・規模の取り組みが欠かせないだろう。

近年、自動社業界はConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアドサービス)、Electric(電動化)の4つを指す「CASE」に注力してきた。このCASEについてもコロナの影響が長期化すれば、戦略を見直さざるをえない部分が出てくるだろう。

例えばシェアドサービスでは、滅菌の丁寧さなど衛生面を売りにしたサービスが早くも登場している。だが、それでも「複数人で1つの自動車をシェアするのは安全面で不安だから、自分で中古車を所有しよう」と考える人が増えるのは避けられないだろう。

コネクテッドカーにしても自動運転にしても、技術面に加えて法規制など多くの乗り越えなくてはならない壁がある。すでに約8000万台の車が日本で所有されている現状を考えても、技術の実用化後に既存の車がすべて置き換わるまでには長い時間がかかる。これらはメーカーの努力だけではどうにもならない部分も多く、CASEをアフターコロナの回復の起爆剤と考えるのは現実的ではない。

(SMBC日興証券 株式調査部 シニアアナリスト 木下 壽英 構成=吉田洋平)

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