罪と向き合って17年…元ヤクザの牧師が語る「あなたが必ず救われる方法」
プレジデントオンライン / 2020年9月30日 11時15分
■罪と向き合って17年、信仰が救った人生
「前を向いて生きていく」とは、具体的にはどのような行為だと思いますか? それは、「自分を信じ、評価してくれる誰かがいるということを、信じて生きていく」ことだと、私は思っています。
私は埼玉県川口市にある「『罪人の友』主イエス・キリスト教会」で、罪を犯し、人生をやり直したいと思う人が神様と出会う場を開いています。私を訪ねてこの教会にやって来る人の半分は、刑務所から出てきたばかりの人で、その多くは元ヤクザや暴力団関係者。つまり、世間から見放された人々です。彼らのように誰も自分を見てくれない、助けてくれるわけもないと思っている人に対し、その人を信じ、「神様はあなたを見放していません」「神様はあなたを信じています」と伝えることで、前を向いて、再び歩き出してもらうための活動をしています。
私自身、33歳で洗礼を受けるまでに7回罪を犯し、東京拘置所に3回収監されました。そのころは「俺の生きる道はこれしかないんだ」と信じて、暴力団の世界にどっぷりと浸かっていました。
ですが、覚せい剤中毒を問題視されて組を破門されると、自分には何も残っていないことに気付きました。
「これではもうどうしようもない。人生をなんとかしたい」
そう思いつめたときに、刑務所の中で、聖書に出会いました。
「わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ」
まさに、当時の私のためにあるかのようなフレーズが書いてあったのです。このフレーズに感銘を受けた私は、刑務所の中で聖書を熟読し、3度目の服役を終えてからすぐ、洗礼を受けました。
「牧師になろう!」と思って神学校に通い出したのは2004年5月のことです。
私が通っていたのは、夜学の神学校でした。昼間は働き、夜に神学校に通う生活で、毎日くたくただったのですが、このときはすでに、「自分のような、刑務所から出てきたヤツを救おう。ヤクザだったヤツを立ち直らせるために牧師になろう」という、明確なビジョンがありました。そのためなら、眠い目をこすりながら勉強することができました。
神学生時代には忘れられない、私の原点とも呼べるような思い出があります。とある町工場で働いていたのですが、刺青を隠さないといけないので、真夏でも常に長そでのシャツを着ていました。ところがその日は、汗で塩をふくくらいの猛暑日でした。それでさっぱりしたくて昼休みに着替えていたら、タイミング悪く社長に刺青を見られてしまったんです。
「またクビか……」
そう思った瞬間、社長は
「そうか。だからお前、頑張ってるんだな」
ポツリと言ってくれたんです。「社長が私を見てくれていた」ことがわかるこの一言に、大変救われた気持ちになりました。「誰かに見守られている」ことの心強さが身に沁みると同時に、自分もまたその「誰か」になりたい、という思いを強くしたのです。
■一縷の望みを託して刑務所から手紙が
そもそも、生前のイエス・キリストのもとに集まってきた人間は、故郷にいられなくなった人や罪人、遊女、奴隷など、社会から虐げられたり居場所がなくなったりした人たちでした。ですから、現在の私の行いは初期のキリスト教と似ているのかもしれません。
私の教会はこのとおり小さいですが、「元ヤクザの牧師がやっている教会」としてある意味有名ですから、全国の刑務所から手紙が届きます。
「刑務所ばかりの自分の人生をどうにかしたい」という一縷の望みが、文通相手の家族や親しい人の手を通じて私のもとに届くのです。失敗をして立ち直りたいと思っている人が、私という牧師を媒介にして、神様と出会うために立ち寄る灯台のような役割を果たせればいいなと思っています。
クリスチャンは、毎週日曜日に教会へ行って礼拝をします。しかし、これは聖書に書かれている決まりだから礼拝をしている、というわけではありません。クリスチャンにとって最も大切なのは、自分と神様との関係です。仕事が終わって、家族団らんの時間を大切にするのと同じように、日曜日に礼拝をして、神様の視線を感じ、声を聞く。礼拝を通じて、神様に認められている自分を客観視する時間を作るということ。それが礼拝の持つ重要な役割なのです。
■自分も他人も許せないときは
失敗をして落ち込み、自分を許せないとき。または、自分に害をなす人間、嫌いな人間を許せないとき。こういったときは、誰かに話を聞いてもらってください。それは、私たちのような牧師でもいいし、臨床心理士やカウンセラーでもいい。
私の教会にも、毎週日曜日の礼拝には、初めて来てくれたという人が必ずいます。牧師はお金がかからないので、悩みを話すにはちょうどいい相手だと思います(笑)。
人は自分を許せないときや他人を許せないとき、寛容になるためには、まず自分が他人から許されなければいけません。
私は神様と、神様の御使いである恩師(牧師)に自分の苦しみを共有してもらえたことで、自分自身を許すことができ、過去の自分の罪を受け入れることができました。そのおかげで今を生きています。そして、昔の自分のような人を立ち直らせるために自分自身も牧師となりました。
神に後悔や悩みを託し、自らの身を委ねる。そして許してもらい、自分の罪を手放すときに平安が訪れます。そして自分もまたほかの誰かを許し、認め、見守ってあげる。これこそが信仰なのです。
キリスト教の洗礼を受けるかどうかは別として、ぜひ1度、教会を訪れてみてください。牧師との相性が良くないと感じたら、ほかの教会を訪れても構いません。
「救われたい、自由になりたい」と思う気持ちを持ち続ければ、必ず自分を救ってくれる信仰と牧師に出会うことができるでしょう。
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牧師
1970年生まれ。異色の経歴を持つ「元ヤクザの牧師」として、多くの元受刑者の人生やり直しを手助けするほか、刑務所伝道なども精力的に行っている。『元極道牧師が聖書を斬る!マタイの福音書(上)』のほか、著書多数。
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(牧師 進藤 龍也 構成=小野正広 撮影=フクダタカヤス)
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