SMBC日興証券社長「新型コロナで5年後の世界が近づいた」
プレジデントオンライン / 2020年9月14日 11時15分
■社長就任直後に緊急事態宣言が出た
――社長就任直後、緊急事態宣言が発出された。嵐の中の船出だ。
【近藤】日興證券に入社して以降、株価や金利、為替など、つねに変化するものの中で育ってきた。急激な環境変化に直面すると不安を感じがちだが、大きな変化も本当は小さな変化の積み重ね。「有事のときの雄一郎」と自分で勝手に名乗っているが、今回も変化を前向きにとらえている。
――過去にどんな有事を乗り越えたか。
【近藤】2006年12月に不正会計事件を起こして当時の社長、会長が辞め、翌年2月に私は経営企画部長になった。上場廃止どころか、MRF(証券総合口座専用の投資信託)の解約が殺到すれば、黒字倒産するおそれもあった。不安を感じていた社員は多かったが、新社長がメッセージを出して社員を元気づけて、一丸となって信頼を取り戻した。今回は私も社員やそのご家族に、感謝のメッセージを出した。コロナは必ず乗り越えられると考えている。
――コロナでどのような対応をしたか。
【近藤】お客様と従業員の健康・安全が第一。まず清水(喜彦・現会長)のときに全社員にマスクを配布した。店舗もシャッターを下ろして、約7割がテレワークに移行。出社する社員も、時差出勤で感染リスクを減らす工夫をした。
■テレビ会議で効率よくやりとりができる
――テレワークで生産性は高まったか。
【近藤】生産性が上がる面とそうでない面がある。たとえば若手が資料を作成する際は、作業に集中できていい。しかし、先輩からの指摘が入らないため、一部の資料は平準的で印象の弱いものになり、修正が必要になったものもある。営業も、すでにリレーションができているお客様とはテレビ会議で効率よくやりとりができるが、まだ信頼関係が築けていないお客様とは難しい。生産性以外にも、社員のエンゲージメントや教育、お客様の満足度など、見えていないところがある。状況を調べて、これから評価をするところだ。
課題は見つかっても、ビフォーコロナに戻るつもりはない。20年度から始まった中期経営計画を立案する際、5年後の世界を想定した。そこにはリモートワークやデジタル化といったワードが入っていて、コロナで一気に加速化できた。メールでの電子交付契約は19年度一日平均約500件だったが、20年4月以降は2000件弱に増えている。さらによくする方法を考えたい。
――資産運用ビジネスへのシフトを進めているが、コロナの影響は?
【近藤】リーマンショックのときと同じく、一時的に分散が利かない状況だ。ただ、いまは人生100年時代。ポートフォリオの分散だけでなく、期間の分散も重要だ。コロナで30年、50年という長いタームで運用を考えるいいきっかけになったのではないか。
――銀行出身のトップが続いた。7年ぶりの生え抜き社長だ。
【近藤】出自にこだわるつもりはない。メガバンクグループの証券会社として銀行との連携が強化されて、組織再編で総合証券化も進んだ。その強みを引き続き伸ばす一方で、証券会社として、資本市場の健全な発展に役立つ経営をしていきたい。
名古屋で課長になったとき、自分が正当に評価されていない気がして、他業界への転職を考えた。東京の先輩に挨拶するために新幹線に乗ったが、いつのまにか投資信託の本を開いていた。それに気づいて、自分はこの仕事が本当に好きなのだと悟った。証券業界への思いはいまも同じだ。
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SMBC日興証券 代表取締役社長(CEO)
1962年、兵庫県生まれ。86年同志社大学卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)へ入社。2010年執行役員、19年専務執行役員。20年4月より現職。趣味はラグビー観戦。
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(SMBC日興証券 代表取締役社長(CEO) 近藤 雄一郎 構成=村上 敬 撮影=今村拓馬)
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