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収拾がつかなくなったビデオ会議から"うまぁく"切り上げる方法

プレジデントオンライン / 2020年10月1日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/x-reflexnaja

コミュニケーションが多様化するテレワーク時代。その中で簡潔に伝える力はますます重要になる。そこで、一流企業の「伝達力」に秀でた両人に社内で活かせる技術と心得を教えてもらった。

■上司に言いにくいトラブルを報告

トラブルには2種類ある。会社の利益を大きく損なうような深刻なトラブルと、最悪の場合でも怒られて頭を下げれば済む小さなトラブルだ。前者について、大和証券の堀内隆利氏は会社としての対処が必要であり、「とにかくスピード優先」と説く。

「起きたことは、少なくとも当日中に報告すべきです。何が起きたかを簡潔にまとめ、規定された対応方法を伝える必要があります。一方、自分の裁量である程度処理できる小さなトラブルは、対応方法を自分で決め、場合によっては、対応後に解決した案件として事後報告するのも手です。大事なのは、『じゃあ、どうするんだ?』という上司の疑問に答えられるか。『どうしたらいいんでしょう』という反応は、上司を失望させます。報告に加えて、『こうしたほうがよいと思います』といった提案をしたほうがいいでしょうね」

グーグルの谷本美穂氏も、ただ事象を報告するだけでなく、「そのトラブルにおいて自分は何ができるか」「上司からどんな支援をしてほしいか」など、具体性を持って相談することが効果的だという。

「トラブルが起こる前から上司と部下が頻繁にコミュニケーションをとっていれば、互いの様子がよくわかって、柔軟にアクションを変えられます。そのリズムがあると、トラブルだけでなく、トラブルになりそうなことも早めに報告できます。上司はミスや言いにくいことも発言できるような雰囲気をつくり、部下も自分の考えを普段からオープンに話す。それによってトラブルが迅速に処理しやすくなると思います」

■上司に滞った返事を催促する

なかなかこない上司からの返信。催促してよいのか、するならばいつなのか、気を揉むものだ。堀内氏は催促する行為自体は問題ないと語る。

「上司の立場からすると、自分の頭から抜け落ちている案件について注意喚起してくれるわけですから、決して悪い連絡ではありません。ただし、上司の『そんな話あったっけ?』に対して、『前にメールしていますよ』という返しは、たとえ事実でも忘れていたことを咎めるようで印象がよくありません。『すみません。こちらも送りっぱなしにしていまして』『急ぎではなかったので、ちょっと放っておいたんですけど』などの前置きをすると、相手のプライドを傷つけないのでは」

そこで使い勝手のいいフレーズが、「そろそろ」である。「前に相談した件、そろそろ判断したほうがいいと思うのですが、いかがでしょうか?」のように連絡をすれば、以前とはステージが変わったため、改めて打診したニュアンスになる。相手としてもせっつかれている感覚が弱く、状況が変わったから動こうという気になって、早い反応が期待できる。

また、「早く返事をもらえませんか」などと促すだけでなく、催促の中に具体性と主体性があったほうが反応しやすいと谷本氏は指摘する。

「たとえば『○○さんがいい経験をお持ちなので、特にこうした点に関する助言がほしい』のような伝え方だと、その上司に連絡をしている意味が明確になります。さらにその先にどんなインパクトがあるのかなどを具体的に説明すれば、展望が描けるので返事が早まるかもしれません」

■ビデオ会議を円滑に進める

ビデオ会議では妙な力が入り、うまく参加できないと悩む人もいる。

「参加者同士の空気が伝わりにくいビデオ会議は、通常の会議よりも集中力が必要になる場合があります。なので1つの会議は30分以内に収めるといいでしょう。また、ルールが定まっていないため、会議がうまく進まないことも。その場合、『表情を見せるためにカメラは常にオン』『聞き手はOKサインを出して反応を見せる』など、会議ごとにルールをつくると効果的です」(谷本氏)

同氏が推奨するのが、会議にファシリテーターを据えること。直訳すると「促進者」で、意思決定することなく、時間管理しながら議事進行に徹する役割だ。終わりの時間が近づいているのに議題がまとまっていなくても、そこまで決まったこと、次回いつ会議をするか、そこで何を決めるかを整理してくれる。

会議がダラダラしてしまったとき、堀内氏は上司がいても自分のタイミングで切り上げてしまうという。

「会議には発散と、集約の2つのステージがあります。発散のステージではどのような意見でもよいので、なるべく発言を促します。大事なのは、その後、集約の流れに誘導すること。まとまりのない議論でも、『とりあえずこうしたいと思います』『混乱してきたので、僕が引き取って考えてきます』など、強引に結論をつくってまとめてしまいましょう。前半に発言を促すことで全員に議論への参加意識も醸成され、独善的とは見られにくいです。むしろ、参加者からは感謝されるし、会議も先へと進みます」

■部下のミスを注意

部下がミスしても、頭ごなしに注意することはしないというのが谷本氏だ。

「フィードバックする際、もっとも効果的だと言われるのが、ポジティブ→ネガティブ→ポジティブの順番です。というのも、最初からいきなり追いつめられると、人はそこから心が動かないからです。だからまず、『ミスってあるよね』という共感から入って、どういう思いで行動をしたのか、現状をどう認識しているのか、一回本人の視点で聞いてみます。その後、その行動がどんなネガティブな影響を与えたのか、事実確認してから改善点を説明。最後に『あなたはこういう強みもあるんだから、それを活かしながら、次回はこういうふうに頑張ればいいんじゃないか』と提案しますね」

慎重に接するのは、「注意をすることが目的というより、最終的には相手が前向きに一歩を踏み出せるようにすることが大事」(谷本氏)という考えからだ。

一方、堀内氏は「少し強めな口調で短く叱ること」を心がけている。

「その後はトーンを一気に普通のモードに戻して、後に引きずらないようにしています。僕は部下の意識を引き締めるため、あえて『よく怒っている上司キャラ』でいるのも有効だと思うんですよ。ただ、いつも正論で叱っていると、部下を追いつめてしまいます。だから時には理不尽と思われたり、気分屋に思われるようなスキを残して、酒席でネタにされるぐらいがちょうどいい。結果、ミスを指摘しやすい環境になりますから」

■いい仕事をした部下を褒める

「部下を褒めるのは苦手」というビジネスマンは少なくない。一方、谷本氏は「褒めることについて、ハードルがめちゃくちゃ低いかもしれません」と自己分析する。

「部下にかぎらず、プロジェクトメンバーなどに対しても、小さなことから大きなことまで褒めます。たとえばメンバーが率先して資料をつくって持ってきたら、資料に目を通す前に、率先してつくってきたことに対して、『とてもいいと思う』と素直に褒めます。『ありがとう』『よかったよね』といった肯定的な言葉は、多ければ多いほど人の成長を促すと思っているので」

谷本氏が心がけているのは、従業員を評価する時期である半年や1年に1回といったペースで褒めるのではなく、タイムリーに褒めること。直接会えない場合は、思い出した折に「あのときの発言はよかった」「あの質問は鋭かった」など、すぐにチャットで送っている。

褒めることをよしとする谷本氏の信条は、自社の社風からも影響を受けている。グーグルにはお礼を伝えるシステム、貢献を認めた社員にボーナスを送り合えるシステムなど、同僚に手軽にお礼をするための社内のサイトが存在している。メールを書くより手軽にお礼を送ることができ、さらに可視化されるため貢献が共有化。賞賛が行きかうことで、部門間のつながりが強化される効果もあるという。

面と向かって褒めるのが苦手という人は、社内SNSやチャットツールの「いいね」をクリックすることから始めてもいいかもしれない。

■突然ふっかけられた文句に謝罪

思いもよらぬケチをつけられたとき、一体どう応じればいいのか。

「相手がけんか腰で来て、自分も同じモードで返すと、事態は悪化するだけです。怒りの感情が湧いたときは、何も返さずに飲み込んで寝かせるのが得策。一日でもいいので間を置けば、自分も相手も多少は落ち着いてきます。そこで『すみません、配慮が及ばなくて』と低姿勢で応じていけば、こちらの言い分も聞いてもらえるはずです。歯向かわず、でも、言いたいことは言う。それをどう両立させるかを考えます」(堀内氏)

時には上司からの理不尽な苦言もある。堀内氏は、「理不尽な話は後々『予想外で面白かったな』と笑い話になることがほとんど。そのような職場や仕事ほど楽しいという達観した目線を持って、気を静めるのもいいかもしれません」と助言する。

谷本氏は「あなたの行動が不快だ」と突然指摘されて、ショックを受けた経験があると振り返る。

「でも、陰口を言われるのはイヤだし、指摘されるまで気づかないことだったので、正直に言ってくれること自体はありがたいと思えたんです。そこを感謝しながら、気に障った理由を教えてもらって、次回はどうすればいいか建設的に話をしたら、むしろ関係はよくなりました」

また仕事場で起きる現象は全部「行動」であり、行動によって衝突が起きたという見方も役立つという。自分の人格を否定されるのは傷つくが、行動は間違えることもあれば、変えることもできる。行動に焦点を当てることで、大きく凹まず、改善へと向かえるのだ。

■無理なお願いを断る

急を要する用事、手間のかかる案件、避けて通りたい仕事……。働いているかぎり、無理なお願いとも無縁ではいられない。それに対して谷本氏は「断らない」という。

「『フィードバックはポジティブから入る』と説明しましたが、物事はイエスから入るのが大事だと考えているので、最初から『できません』とは言わないようにしています。突拍子のない話でも、相手が何をやろうとしていて、それがどうすれば実現しそうなのかをまずは一緒に考える。別の案を提案したり、他の人を紹介したりして、相談をどうしたらイエスに変換できるのか、意見を出し合うといいのではないでしょうか」

受けた依頼は、いったん咀嚼して考えたい。まずは「なるほど」と否定しない態度を見せて、「そこで一番したいことは何?」と質問すると相談の本質が明確になる。

同様に堀内氏も「基本的に断らない」という姿勢だ。

「どんな無理難題でも、困った素振りを見せないで、快く受けるようにしていますね。自分が関与したほうがいい結果になるだろうという自負があるし、最終的に組織にとってプラスになり、自分の成長にもつながるものだと思うので。結局できなくても、最大限の努力はここまで尽くしたということを報告すればいいんです。お願いしてきた側も、それに文句を言うことはありませんから」

快く受けたことで相手からの信頼感は強まり、その後、自分がお願いした場合に動いてくれる可能性も高まる。「無理なお願いをすると引き受けるはワンセット」(堀内氏)なのだ。

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堀内隆利(ほりうち・たかとし)
大和証券 営業企画部 NPS推進室長
2003年入社、茨木支店配属。その後、IR室、人事部付海外留学を経て、15年営業企画部に配属。18年より現職。リテール部門における顧客本位の業務運営および営業品質の向上を統括する。
 

谷本美穂(たにもと・みほ)
グーグル日本法人 執行役員人事本部長
慶應義塾大学卒業後、人材サービス会社を経て2000年GEに入社。リーダーシップ開発、グローバルリーダーの育成などに携わる。18年グーグル入社。中学生2人の母。
 

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(プレジデント編集部 鈴木 工 撮影=大崎えりや)

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