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帰ってきた「悪夢の民主党」…金と保身の新党爆誕に全国民が絶望

プレジデントオンライン / 2020年8月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

■コロナ禍でも“先生たち”は金と保身

また始まったよ、と思う方々のセンスは悪くない。ただあきれてしまうのは当然だろう。新型コロナウイルスの感染再拡大によって自粛生活を余儀なくされ、失業や収入減などで困窮する国民が相次ぐ中、羅針盤を示すべき国会議員のセンセたちは相も変わらず政争、政局に明け暮れている。「ポスト安倍」は誰にするか、次の選挙前に誰とくっつくのか。救国のために何をやるべきかではなく、国民を無視するかのような話題ばかりで暗澹たる思いを抱く人々は多いはずだ。

コロナ対応で国民から見放された安倍晋三政権と対峙する野党は、このタイミングでも「野合」を繰り返すというから失望感は大きい。一体、この国の代表者たちは誰のために、何の目的で働いているのだろうか。そう、あまりにも残念な人たちなのである。国民にそっぽを向かれた安倍政権と「帰ってきた民主党」。あまりにも長すぎる「夏休み」に保身と政略に走るセンセたちの姿を見ると、わが国の未来に明るさを感じることはとてもできない。

■政権交代前の民主党との既視感に高揚感はゼロ

「1つの終止符をここで打ち、新たなスタートを切っていける前向きな結論を導きたい」

国民民主党が8月19日に開催した両院議員総会で、玉木雄一郎代表はこのように力を込めた。2018年5月の結党からわずか2年半。政党支持率が1%程度だった同党は、立憲民主党との新党に解党したうえで合流する案を賛成57、反対2の賛成多数で可決した。率直に言えば「コロナ禍で大変な時にこのセンセたちは何をやっているんだろう。今、それか?」という感じだろう。

自分たちはなぜ議員バッジをつけることができ、政党支持率が限りなく0に近かったのかという反省も検証もない。そもそも建前である安倍政権に対抗する「大きな塊」にも疑問がある。議席数だけを見れば、野党第1党の立憲民主党は89人(衆議院議員56人、参議院議員33人)、国民民主党は62人(衆議院議員40人、参議院議員22人)で、たしかに「塊」にはなる。全員が新党に合流して野田佳彦元総理や岡田克也元副総理ら無所属議員約20人も加われば、その規模は計算上では160人を超える。100人超の衆議院議員というのは政権交代前の民主党と同規模で、それなりのインパクトがあるはずだ。だが、今回は期待感も高揚感もない。そこにあるのは既視感だけである。

■意思決定すらできない絶望感

そもそも玉木氏が正式な党首会談を立憲民主党の枝野幸男代表との間で行うこともなく、合流提案した進め方は不可解だ。企業合併に例えれば分かりやすいが、代表取締役抜きで進めるなんて怖すぎるだろう。それを提案しておきながら、玉木氏や古川元久代表代行は新党に参加しない点も意味不明だ。旧民進党の前原誠司代表や増子輝彦幹事長らも相次いで不参加を表明しており、その分かり難さが期待感、高揚感をそいでいる。

元々は同じ民主党、民進党の仲間だったにもかかわらず、いざ再結集するとなれば1つの旗の下にまとまることすらできない「民主党のDNA」を強く感じさせる。そう、重要局面で党内政局ばかりが注目された民主党時代から何ら進化していないのである。それが「帰ってきた民主党」と揶揄されるゆえんである。

■メンツの既視感によみがえる「悪夢の民主党政権」

新党への期待が集まらない3つの理由を細かく見ていこう。

1つ目は、そもそも「まったくメンツが変わってないじゃん」という点だ。言うまでもなく、立憲民主党も国民民主党も、そのルーツは民主党にある。2009年に政権交代を果たした民主党は鳩山由紀夫元総理、菅直人元総理の「第1世代」、野田元総理や岡田元副総理、前原元外相の「第2世代」が主力だった。立憲民主党の枝野代表も「第2世代」だ。

たしかに第1・第2世代は自民党と厳しく対峙し、国会論戦で政府側を追及していく姿勢は新しい時代を感じさせた。選挙で煽動するかのように聴衆に訴えかけた際には高揚感も広がり、それが民主党フィーバーにつながった。だが、そうした「積み上げ」もないまま新党で政権交代を目指すと言われても、よみがえるのは安倍総理が「悪夢の民主党政権」と呼ぶ負の記憶ばかりだ。「鳩菅体制」崩壊後、長妻昭元厚生労働相や山井和則衆議院議員ら「第3世代」の活躍も見られるようになったが、玉木氏ら「第4世代」にはこれといって実績もない。あったのは「上が詰まっていて新陳代謝がない」などの不満ばかりで、世代間の相違が希望の党への参加や国民民主党結党の背景にあった。にもかかわらず、それらの違いや不満を解消することなく今回の合流で再び民主党の面々が集結するというのだから、今までの言動は何だったのかとツッコミたくもなる。

鳩山氏は政界を引退したが、それ以外のベテラン勢は現役バリバリ。「ほとんどが旧民主、旧民進党のメンバーで新鮮味がないといわれても仕方がない。再び長老支配に戻るだけではないか」(自民党中堅議員)との声も漏れる。2020年8月のNHKによる世論調査を見ると、コロナ対応で失政の数々が批判されている安倍内閣の支持率は34%と第2次安倍政権発足後最低の水準になったが、立憲民主党の政党支持率は4.2%、国民民主党は0.7%と低迷したまま。とにかく合流しちゃえば良いというのでは、「受け皿」になんてなれないだろう。

■税のあり方すら意見不一致のまま合流

2つ目の理由は、その政策と組織のあり方にある。7月8日の記者会見で「共産党から日本維新の会まで一致できる政策は消費税減税。消費税減税で野党はまとまって戦うべきだ」と語っていた玉木氏は、立憲民主党との新党に加わらず「分党」に言及した理由について、「消費税減税など軸となる基本政策の一致が得られなかった」と明かしている。未曾有の危機に国家の根幹である税のあり方ですら意見が合わない政党が、このタイミングで合流する意味がわからない。

枝野氏は「1つの政党として責任を持って訴えられるほど理念や政策は一致している」と述べているが、年内に予想される衆議院解散・総選挙に備えた「野合」と見るのが自然だろう。この1つを見ても、政策がバラバラで党内闘争を繰り返していた民主党を思い出させるには十分だ。そもそも国民民主党の小沢一郎衆議院議員って、野田政権が心血を注いだ2012年6月の消費税増税関連法案の採決で「小沢チルドレン」らに号令をかけて反対し、50人で民主党の離党届を提出したのではなかったか。その小沢氏らと野田氏が再び同じ政党になるというのは理解に苦しむ。新党への不参加を表明した国民民主党の山尾志桜里衆議院議員は「理念と政策が一致しない大きな塊には参加できない」と語ったが、その動機はともかくコメントは核心をついている。

玉木氏が言及した消費税減税にしても、一時的な減税措置なのか、恒久的なものなのか、代替財源はどうするのかといった基本的な部分は生煮えで、立憲民主党が掲げる「原発ゼロ」政策の詳細についても詰まっていない。いくら看板を替えようと、プレーヤーが変わらず「規模」だけにこだわれば、いつか来た道をたどるだけと感じる人は多いはずだ。どうせなら、合流新党は一度すべての候補者を公募で選び直してからスタートを切ったらどうだろうか。その方が新鮮味も期待感もあり、新しい時代にあった政策も出てくるかもしれない。

■立憲も国民も解党して金を返納すべき

そして、人々を白けさせる3つ目の理由はずばり「カネ」と「身分」だ。2014年6月、環境相を務めていた自民党の石原伸晃元幹事長は原発事故の除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設について「最後は金目でしょ」と不適切な発言をして撤回と謝罪に追い込まれたが、今回の合流劇を見ると、その言葉を思い出させる。

玉木氏は8月12日のBSフジ番組で、国民民主党に約50億円の政治資金があるとしたうえで「新しい党をつくるために資金も必要だ」と語った。政治資金収支報告書によると、2018年の国民民主党の繰越金は約108億円、立憲民主党は約18億円。河井克行前法相夫妻の公職選挙法違反事件を見るまでもなく、政党のカネは選挙時に大きく動く。選挙基盤が弱く、資金力もない議員にとっては喉から手が出るほど欲しいものの1つだ。

同党幹部は新党合流組と玉木氏ら「残留組」の議員数に応じた配分が行われる可能性を示唆しているが、「おいおい、それって国民が汗水垂らして納めた税金も原資になっていますよね」と喝を入れたくなる。「山分け閉店セール」みたいに次期総選挙時にバラまくことなんて考えずに、立憲民主党も国民民主党も解党して国庫に返納するのが筋だろう。玉木氏は「お金をめぐって内ゲバすることがあれば国民から見放される。そんなことをするなら全額国庫に返した方がいい」と語ったが、そもそも「俺のカネ」みたいなことを言わずにはじめから全額返納し、コロナ対策のために活用すべきだ。この点だけは政党交付金を受け取っていない共産党に学んでほしい。

■国民無視の“先生たち”に国は救えない

旧民主党の面々で残念なのは、総選挙の足音が近づいてくると、自らの議員バッジを維持するための言動ばかりが目立つことだ。それは「職業としての政治屋」の姿に映る。国民民主党の衆議院議員のほとんどは2017年の総選挙で民進党大敗が予想される中で、勢いのあった小池百合子都知事の「希望の党」に急遽参画した人々だ。その看板で小選挙区では敗北しても比例代表で復活当選できた議員も多い。そもそも今ある議席バッジは「旧民主党」で得られたものではないのである。

時事通信が2019年12月12日に配信した記事によると、当時の立憲民主党と旧希望の党を1つの政党に見立てて比例議席を試算した結果、旧希望側の議席は32から54に大幅増となるのに対し、立憲側は37から20に激減するという。この点は立憲側のメリットが大きく、豊富な国民民主党の資金力や組織にも魅力を感じているようだが、国会議員という身分にしがみつくような姿はあまりにも格好悪い。国民の目にどのように映るかという視点すら欠けたセンセたちに、コロナ禍で困窮する国民を救えるのか。

■合流への期待感は全くない

枝野代表は「月が明けた頃には新しい形でパワーアップしたい」と語り、9月上旬にも新党結成する考えを示している。その発言の裏には、民主党が2003年9月に「剛腕」と言われる小沢衆議院議員が率いた自由党と合流し、政党支持率が急上昇した経験を再び味わいたいとの思いがあるのだろう。民主党の支持率はNHKの世論調査で同年8月まで5~6%台で推移していたが、1%程度だった自由党と合流したことにより、9月は9.2%、10月は9.9%に上昇。さらに11月は19.9%、12月は19.8%に達し、その後も10%台後半から20%台前半をキープして政権交代につながった。だが、あの時の新鮮味はなく、メンバーもほとんど変わらない。何より、国民は3年超の民主党政権で味わった負の数々を記憶しており、「三丁目の夕日」を懐かしんではいられない。

安倍政権はたしかにコロナ禍で国民の失望を買ったが、直近の自民党の支持率を見ても、次の政権は「野党」からではなく、引き続き「自民党」からというのが国民の多数であるのも事実だ。郷愁にかられるような国の状況でもない。特撮テレビ番組「帰ってきたウルトラマン」には失礼だが、シリーズの中では弱く、不憫なエピソードも目立った「帰ってきた?」が旧民主党の面々による新党の行方とカブらないことを祈りたい。

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麹町 文子(こうじまち・あやこ)
政経ジャーナリスト
1987年岩手県生まれ。早稲田大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーランスとして独立。プレジデントオンライン(プレジデント社)、現代ビジネス(講談社)などに寄稿。婚活中。

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(政経ジャーナリスト 麹町 文子)

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