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赴任先での大リストラと倒産危機、「度重なる逆境」をどうやって強みに変えてきたか

プレジデントオンライン / 2020年9月27日 6時15分

アテニア社長 ファンケル執行役員 斎藤智子さん

創業30周年の年に、アテニアに誕生した若き女性社長として化粧品業界内外から注目される斎藤智子さん。7年前、中国事業から撤退したことがキャリア最大の試練だったと語る。その経験を糧に、後に会社が直面した“危機”を救った手腕とは?

■就職氷河期世代で補欠合格。出世欲なんてなかった

「逆境が好き。いつも逆境に飢えているんです」

生き生きとした表情でそう語る斎藤智子さんは44歳にしてファンケルのグループ会社である化粧品会社、アテニアの社長に就任。1974年のベビーブームの中で生まれ、就職氷河期にファンケルの新卒採用6期生として就職した。ところが、実は補欠合格だったのだという。

「会社説明会に行って『なんていい会社なんだろう』と思い、運命的なものを感じたけれど、最終面接で落ちてしまって……。でも、補欠合格の連絡が来ました。だから今、うちの若いスタッフたちにも『そんな私でも社長になれたんだから、みんなもなれるよ』という話をしているんです」

アテニアに移籍してからは商品企画部で10年以上のキャリアを積む。化粧水など基礎ケアの主力商品を何度かリニューアルし、達成感を得た頃、会社では中国で海外事業を立ち上げる話が出てきた。

当時は、リーマンショックの影響で売り上げが落ちていた。市場を拡大しなければという方針になり、ちょうど何か新しいことをやって成長したいと強く思っていた斎藤さんは中国での勤務を希望。準備として中国語を4カ月、朝から晩まで猛勉強したが、それすらも楽しかったという。上海支社に赴任してからは、日本とは違うコミュニケーションのやり方も理解してスタッフと信頼関係を築き、ショップも出店した。

しかし、3年目に突然、中国から撤退することになる。会社のトップが交代し、その判断で、赤字部門をカットすることになったからだ。斎藤さんには「まだこれから」という気持ちがあったので、ショックは大きかった。さらに、社員をはじめ、合計30人ものスタッフを解雇することに。

「もう苦行ですよ。本当にみんなに申し訳ないという気持ち。人を採用することの重みを知った瞬間でした。やはり人を雇うときには、社員の人生を背負っているという責任感を持たなければいけないということを学びましたね」

(左)上海支社で現地スタッフと一緒に(右)鹿児島にて。西郷隆盛の銅像前でポーズ!
(左)上海支社で現地スタッフと一緒に
(右)鹿児島にて。西郷隆盛の銅像前でポーズ!

■中国事業からの撤退で、30人をリストラした痛み

それが唯一、会社を辞めてもいいと思った大きな挫折だという。辛い気持ちを抱えながら、上海支社がなくなるまでの間、辞めてもらうスタッフとコミュニケーションを密にし、最後にはなんとか許してもらえた。「私が乗り越えたというより、みんなが乗り越えたということかな」と振り返る。そして、撤退後も当時の中国のスタッフとは連絡を取り合い、その中にはアテニアに再就職した人もいる。

「現在は海外事業も再開しているので、7年前に中国での経験をしておいてよかったなと思います。それに今、振り返れば、当時、私に商品企画だけでなく、経営の知識があったなら、状況は違っていたかなとも思いますね」

そして、キャリア最大の転機を迎え、役員への道を切り開いたのは、2015年。中国から帰国し商品企画部に戻っていたところ、売り上げが激減し、会社の存続が危ないといわれるまでに。斎藤さんも危機感を抱き、まず通販においての営業ともいえる広告をどうにかしなければいけないと考え、未経験の分野に打って出ることにした。

「このままでは本当に会社がつぶれると思って(笑)。だったら、私が立て直し役になってもいいのではと立候補しました。同僚たちは社長の思いを形にできず苦戦していて、私には社長の考えがなんとなく理解できていたので、周囲も好意的に受け止めてくれました。私には一種の使命感がありましたね」

LIFE CHART

■売り上げが伸び始め、やがて業績もV字回復

もともとキャッチコピーなどを考えるのは得意。そこで、消費者の立場から考え、商品について良いと思ったことを素直に広告に反映させていると、売り上げが伸び始め、やがて業績もV字回復した。

「そのときも会社は“危機”でしたが、私のモチベーションは低くなかった。むしろ“喜々”としていました(笑)。もともと何かの壁がないとダラダラしちゃって頑張れないタイプなので、むしろ崖から突き落としてほしいというぐらい」

タフなメンタルは、学生時代から続けていたチアリーディングでも培われたという。社員にとっては会社のピンチを救った英雄であり、周りを明るくするパワーの持ち主。まさにチア(励まし)の精神で認められ、一足飛びに本部長、役員、社長へと躍進した。

「近代史が好きで、勉強していると、いつの世も、行動すべきことは断固、行動すべきだし、その行動も自分の利益や目先の利益のためではなく、大義や使命から発せられなければならないということを実感します。社長になってからは常に『会社ってなんのためにあるのだろう』と自問し、社会に対する企業としての存在意義を探し続けていますね」

■役員の素顔に迫るQ&A

Q 好きな言葉、座右の銘
山本五十六
「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

Q 趣味
近代史の史跡めぐり
幕末から昭和初期までの歴史が好きで、会津若松市や萩市、鹿児島市などへも遠征。

Q ストレス発散法
中国語など語学の勉強

Q 愛読書
司馬遼太郎著『坂の上の雲』

Q Favorite item
写真で着用のオーダーメードスーツ
社長になり株主総会で着るため、初めてオーダーメードで仕立てた。「Re.muse」という女性社長が率いるテーラーのもの。

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斎藤 智子(さいとう・ともこ)
アテニア社長 ファンケル執行役員
1974年生まれ。東洋英和女学院卒業後、ファンケルに入社。99年に傘下の化粧品会社アテニアへ移籍し、商品企画に携わる。2015年、営業戦略室室長に。上海で現地法人の立ち上げに携わる。18年、取締役・営業戦略室室長に就任。19年、アテニア初の女性社長となる。

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(アテニア社長 ファンケル執行役員 斎藤 智子 文=小田慶子 撮影=干川 修)

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