「ローンを抱える人は要注意」これからやってくる"冬のボーナス激減"の恐ろしさ

プレジデントオンライン / 2020年9月5日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BBuilder

ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんのところには「夏のボーナスが激減した」という相談が相次いでいる。だが、これから「冬のボーナス激減」がやってくる。一体どう備えれば良いのか。黒田さんは「住宅ローンなどでボーナス払いの設定をしている人は要注意。3つの応急手当について確認してほしい」という——。

■家、クルマをボーナス払いのローンで買った人を待ち受けるもの

今年の夏、ボーナスがでなかった、もしくは激減した、という方からの家計相談が増えている。

新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言で、3月以降、在宅・テレワークが増えた一方、残業や出張が減り、給料が減ったという人は多い。その上、妻や子どもが、パートやバイトができなければ、世帯収入はジリ貧状態だ。

これまで毎月の生活費に関しては、外出自粛で、外食やレジャー、帰省・旅行代がかからない分と相殺したり、預貯金を取り崩すなどして何とかヤリクリすることができた。

しかし、今の最大の不安材料は、ボーナス払いにしている住宅ローンや車のローン、カードローンなど、数十万~数千万円の「大口」の借金だ。

年2回のボーナスは、ローンの支払い以外にも、生活費の不足分の補填や、自動車税・固定資産税などの税金の支払い、大型家電の買い替えなど、何かとアテにしてきた。

今夏のボーナス払いはなんとか乗り切ったものの、今後、収入が元に戻らず、冬のボーナスも期待できないとなると、マイホームや愛車を手放すしかないのか……。本稿では、ボーナスが激減した方のボーナス払いのローンの対処法についてアドバイスしたい。

■運輸、飲食サービス業を中心に、コロナ禍で夏のボーナスは減少

ボーナスの現状に関していま一度確認しておこう。2020年の夏のボーナスに関しては、さまざまな調査が出ているが、共通しているのは「前年に比べて減少している」という点だ。

厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」(6月確報分(※1))によると、事業所規模5人以上の企業について、給与総額の平均は44万3111円。このうちボーナスを含む「特別に支払われた給与」は、平均18万1557円で、前年6月より2.5%減少。6月の特別給与が減るのは5年ぶりだという。

また、8月上旬に経団連が発表した、大手企業の2020年夏賞与(ボーナス)の最終集計結果によると、回答した153社の妥結額は加重平均で90万1147円。

前掲の約18万円と比べると、5倍近い開きがあり、さすが大手企業といったところだろうか。ただ、こちらも、昨年夏から2.17%減少している。

前掲の経団連の調査をつぶさに見ると、建設業(前年比16.7%)、生活関連サービス等(同13.1%)、教育・学習支援業(同5.0%)金融業・保険業(同3.7%)など、前年同月に比べ増加している業種もある。

筆者の顧客の中にも、食品専門商社勤務の30代男性で「巣ごもり消費のおかげで、忙しくて大変です」という方もおり、収入減には至っていなかった。

その一方で、運輸・郵便業(同▲21.5%)や飲食サービス業(同▲13.2%)など、顕著に減少している業種もある。いずれにせよ、業種によっては、ボーナスが出ただけ御の字といったところかもしれない。

お金の情報サイト「まねーぶ」が、全国20代~60代正社員800人を対象に実施した調査(※2)によると、夏のボーナスの支給有無について、「支給なし」が26.9%と、4人に1人が支給されていない。

その理由として、最も多かったのが「会社の業績が悪いため(コロナによる経営悪化含む)」(66.5%)である。次いで「企業規模が小さいため」(14.9%)、「固定給・年俸制のため」(13.0%)なども挙げられている。

厚労省の「毎月勤労統計調査」では、夏季賞与が支給された事業所の割合が2018年67.9%、2019年66.8%となっている。この結果を踏まえると、コロナ前であっても、ボーナスが支給されていない人が3割以上いたはずだが、こちらも毎月の定期給与で少なからず影響を受けているだろう。

※1:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和2年6月分結果確報」
※2:株式会社GV「2020年度の夏ボーナス調査」

■コロナ禍の影響が本格化するのは冬のボーナス

そもそも、厚労省の定義では、ボーナス(賞与)とは、「定期又は臨時に労働者の勤務成績、経営状態等に応じて支給され、その額があらかじめ確定されていないもの」をいう。

法律で、ボーナス支給日まで決められている公務員ならいざ知らず(国家公務員の場合、夏は6月30日、冬は12月10日。地方公務員の場合、地方自治体ごとに設定)、民間企業は、成績や業績が悪ければ、支給されない。

しかも、ボーナスの対象となる期間は、夏(6月下旬〜7月上旬)のボーナスの場合、前年の10月から3月まで。コロナ禍の影響がまだ本格化する前で、大半の企業は春先に支給を決めている。

そして、12月に支給される冬のボーナスは、4月から9月までの実績が反映される。となれば、「夏のボーナスが出たが、冬は期待できない」という企業が続出する可能性が高い。

すでに、JTBは冬のボーナスを支給しない方針を決めたという。

落ち込んでいるビジネスパーソン
写真=iStock.com/taa22
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一般的に、日本の企業は業績が低迷しても解雇せず、賞与などを減らして対応する傾向が強いものの、会社が潰れては元も子もない。給料やボーナスが減っても、失業するよりマシということか。

しかし、ボーナスを見込んで家計をヤリクリしてきた家庭は大変である。とくに、従業数が多い大企業は、年収に占めるボーナスの割合が高い。しかも、これまで安定的にもらえてきただけに、ボーナス払いで住宅ローンや自動車ローンを組んでいる人も少なくないはず。ボーナスの有無や減少に伴う家計への影響は大きいだろう。

■冬のボーナス払いまでにやっておきたい「応急手当」とは?

それでは、冬のボーナス払いを乗り切るために、これからどうすべきだろうか?

実施すべき具体的な対策を、今から12月までの数カ月間の「応急手当」とそれ以降の「予防対策」に分けて説明しよう

まず、応急手当について。

第一に、住宅ローンにしろ、自動車ローンにしろ、借りている先(金融機関)に相談することだ。相談するのは、いかに支払いが大変かという愚痴や言い訳ではない。金融機関では、毎日のようにそのような相談を受け付けている。借り手が行うべきは、これからどのようにすれば返済を継続できるのか、具体的な返済方法に関する見直しに関する相談だ。

住宅ローンの場合、ボーナス返済分を貯められそうなら、ボーナス返済月を変更して、後ろにずらし、その間に準備する。また、返済額の内訳を変更して、ボーナス返済の金額を減らし、毎月返済の支払い額を増やす方法もある。さらに、これを機にボーナス返済を取りやめるのも可だ。

ただし、ボーナス返済を減額あるいは中止したことで、総返済額が増えたり、返済期間が長くなってしまったりといったデメリットもあるので要注意である。

首都圏を中心とした昨今の物件価格の高騰(とくにマンション)と住宅ローン金利の低さから、最長35年返済で借りられるだけ借りたという人が目立つ。中には頭金をほとんど作らないままローンを組むこともある。そうしたケースでは返済期間の延長が難しい場合もあるだろう。

また、住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、近年、利用者の平均年齢は上昇し、2019年度は40.2歳となっている。35年返済なら単純計算でも完済年齢は75歳。総務省の家計調査(※3)では、高齢夫婦無職世帯(いわゆる年金生活世帯)の収入は約27万円である。この収入から、さらに返済期間を延長して、本当に返済を継続できるのか。見極めは慎重にすべきだろう。

筆者はFPとして、今回のコロナ禍のように、業績や経済状況によって変動する怖さがあることから、基本的にボーナス払いの併用をしないことをお勧めしている。ただ、ボーナス払いを併用し、年間の返済額を増やすことで返済期間を短縮できるメリットもある。

公務員や大企業に勤務している方など(公務員であってもボーナスカットの時代だが)、頭ごなしに「ボーナス払いは悪」と決めつけるのではなく、個々の状況やリスクに応じて、具体的なシミュレーションをしてから、使い分けるのがベターだろう。

※3:総務省「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年)平均結果の概要(2020年3月17日掲載)」

■第二&第三の応急手当とは?

続いて応急手当の第二は、収入を補塡(ほてん)する公的支援策の活用である。

収入が減少したのなら、それを補塡する制度をチェックしてほしい。10万円の特別定額給付金は、一家4人であれば40万円。それだけあれば、一般的な住宅ローンの補填分としては十分という世帯もあるだろう。

ただし、自分がどのような給付金の対象になるか探すのは意外に難しい。しかも、コロナ禍においては、自治体独自の制度も設けられていて難解だ。こまめに定期的に配布される市報や自治体HPなどをチェックするのもよいが、お勧めは一括で検索できるサイトの利用だ。

家計簿計簿アプリ「Zaim」の「わたしの給付金」は、居住地など属性を入力することで、ビックデータから自分が利用できる制度を確認できる。もちろん無料だ。

また、同社では、新型コロナ感染生活支援「手当・支援金シミュレータ」も4月から公開している。受給できるかどうかの要件の精査は必要だが制度のキーワードを知るには有効だろう。

また、同じく家計簿ソフト大手のマネーフォワードも「新型コロナウイルス支援情報まとめ」を公開している。事業者向け、個人向けで検索でき、後者は、フローチャートで支援ごとや一覧で探すことができるので便利だ。

持続化給付金の申請書と100万円
写真=iStock.com/Picturesque Japan
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そして、応急手当の3はズバリ「節約」である。

なにせ、数カ月で、ボーナス払いの分を準備しなければいけないわけだから、「期間限定でガマンしてください」とアドバイスしている。節約のポイントは、短期決戦だけに、食費や水道光熱費、通信費、交際費、お小遣いなど、効果が出やすい「変動支出」に絞るのも一手だ。

ちなみに、筆者が20年超の家計診断キャリアでもっとも感心をした世帯の事例は、4人家族(子どもが小・中学生)の30代のAさん宅。なんと月の食費を1万5000円にまで抑えていた。

相談を受けたのは、今から10年以上前だが、この家庭の場合、食料品の買い出しは月3回のみ(つまり5000円×3回=1万5000円)。家計のひもをきつく締めている奥様いわく、1回に費やす費用が5000円なのが肝だという。「まとまったお金があれば、きゃべつ1個買い。お肉も鶏ひき肉1kg買いと激安スーパーで大量買いできますからね」とのこと。

家族全員の1日あたりの食費は計500円という計算になる。筆者は内心、「ご家族のみなさん。健康は大丈夫? 一家で食卓を囲み、おいしいものを食べる楽しみは?」と思ってしまったが、相談者にはあっぱれな覚悟があったのだ。

「とにかくマイホームが欲しいんです! だからそれまで徹底的に節約したいんです」

そんな強い意志があったのである。節約するのがイヤでも、Aさん宅のように、目標を設定した上での節約であれば、家族全員力を合わせて頑張れるのではないだろうか。

■借金を返済するために新たな借金は絶対ダメ

以上3つの「応急手当」を経て、何とか冬のボーナスを乗り切ったとして、次に考えたいのは「予防対策」である。

こちらは、応急手当と並行して行ってもよいが、とにかく、今の生活を見直して、身の丈にあった家計にすること。そのためには、家計の健全性をチェックして、ムリなローンを組まない、収入を増やす算段を常にすることである。

とにかく、コロナ禍で家計の緊急事態を防ぐ対策として、やってはいけないのは、借金を返済するために新たな借金を作ること。そして、貯蓄を取り崩してしまうことである。収入減少が続いている間、積立投資を中断するのは仕方がないが、子どもの教育資金や老後資金用など目的を持って準備してきた貯蓄は死守したい。

理由は、いずれも1回やってしまうと際限なくなるから。

相談者が筆者のもとを最初に訪れる時、その表情は一様に期待に満ち溢れている。本当はお金のことで悩んでいるはずだが、「FPというお金のプロに相談すればなんとかしてくれるだろう」という楽観的な気持ちが大きいようだ。信頼されることはありがたい。だが、FPは魔法使いではない。相談したからと言って、劇的かつ速やかに家計が改善されるとは限らない。

「主人公」はあくまで各家庭。コツコツと地道な努力がいずれ実を結ぶ。常に、これを念頭に置いていただきたいと考えている。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『50代からのお金のはなし』など多数。

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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)

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