スタバ、タリーズも参戦「タピオカバブル」が残した空前のお茶ブーム

プレジデントオンライン / 2020年9月22日 11時15分

スターバックス コーヒー 六本木ヒルズ メトロハット/ハリウッドプラザ店。商品説明会でも、バリスタが目の前でシェイクしてくれた。 - 写真=筆者撮影

コーヒーチェーン大手のスターバックスとタリーズが、同じタイミングでお茶の新商品を発売した。両社がコーヒー以外に力を入れる背景には何があるのか。経済ジャーナリストの高井尚之氏が取材した――。

■世界の茶生産量は10年前に比べて約43%増

大手カフェチェーンの「スターバックス コーヒー」と「タリーズコーヒー」が、相次いでティーメニューの新商品を発表、「茶系ドリンク」に注力し始めた。

スタバとタリーズは国内店舗数で1位と4位だ。現在スタバは1580店以上、タリーズは750店以上を展開する。ともに女性客が多いのも特徴だ。

その両社が、同時期にティーに注力し始めたのはなぜか。

理由のひとつは、「タピオカブーム」だ。現在は人気のピークを過ぎたが、ブームで間口は広がり、消費者は(無意識のうちに)タピオカドリンクのベースとなる茶系への関心が増した。実際、2019年の茶生産量は全世界で過去最高の614万9600トンとなり、10年前に比べて約43%も増えた(ITC=国際茶業委員会調べ)。

各社はどうやって茶系飲料を訴求しているのか。その時代性と消費者意識の変化をお伝えしたい。

■スタバは中目黒の「ティバーナ」を六本木でも展開

7月1日、スターバックスが六本木に新しいスタイルの店をオープンさせた。

正式店舗名は「スターバックス コーヒー 六本木ヒルズ メトロハット/ハリウッドプラザ店」という。本稿では通称の「ティバーナ」(TEAVANA)で記したい。

この店は、紅茶をはじめ、さまざまな茶系ドリンクを前面に打ち出す。コーヒーも飲めるが、主力はティーだ。同社の表現を借りれば「色鮮やかで香り豊かな“ティー”を多彩なビバレッジで展開」となる。来店客層として、近隣で働く女性も意識した。

オープンして3カ月近くたった。新型コロナウイルスの影響で多くの都心店舗が苦戦する中、女性客も増えて浸透してきたという。

もともと「ティバーナ」は、米国のスターバックスが買収したブランドだ。日本では昨年2月に東京・中目黒に開業した「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」(以下、「ロースタリー」)の2階全体を、茶系商品を打ち出した「ティバーナ」ブランドで展開している。

一方、六本木の「ティバーナ」には、十数種類の店舗限定ティーメニューが並ぶ。店のオープンに合わせて、新たに開発した商品も提供する。

中目黒「ロースタリー」の開業後、同社は「あれだけの店ができたのでティー事業の足掛かりを得られた」という。その後の店づくりや商品開発も、ここで培ったノウハウを展開することも行う。

六本木のこの店にも、そうした横展開が透けて見える。まるで映画やドラマの登場人物が、他の映画・ドラマで活躍する“スピンオフ”のようだ。

■コンセプトは「お店で飲みたくなるお茶」

今回は、新型コロナウイルスによる外出自粛も意識して、メニューを開発したという。

例えば「ゆず&シトラス ラベンダー セージ ティー」(ホット/アイス)は、特長的なティーにシトラス果肉とルビーグレープフルーツジュレを合わせ、ゆず果皮を用いた。

「お茶(茶系飲料)は自宅でも飲めますが、わざわざ来店されて、スターバックスで飲みたくなる場合、どんなメニューがふさわしいのかを考えながら、部内で開発しました」

こう説明するのは、コーヒー&ビバレッジ部ビバレッジ商品開発チーム チームマネージャーの中島史絵氏だ。埼玉県さいたま市などの店舗勤務を経て、2006年からビバレッジ(飲料)開発を担当。十数年にわたり、多くの新商品を企画開発してきた。

同店では人気のフラペチーノ系もそろえた。「洋系」「和系」で区分すると、洋系では「ストロベリー & パッション ティー フラペチーノ」や「アップル クランベリー & ブラック ティー フラペチーノ」(期間限定品)があり、和系では「和三盆 抹茶 フラペチーノ」「和三盆 ほうじ茶 フラペチーノ」などもある。紹介した商品の価格は、540円から680円(+税、以下同)だ。

スターバックスの「アップル クランベリー & ブラック ティー フラペチーノ」
写真提供=スターバックス コーヒー ジャパン
スターバックスの「アップル クランベリー & ブラック ティー フラペチーノ」 - 写真提供=スターバックス コーヒー ジャパン

商品によっては、注文後にバリスタがシェイクした後で提供されるものもある。手軽さを打ち出しつつ、ひと手間かけた形式で提供する。

■伊藤園系のタリーズは茶系飲料に強みあり

一方、9月2日からタリーズが販売している期間限定ドリンクは2種類ある。「宇治抹茶フルーツティー ペア&アップル」(ホット/アイス。ショートサイズは430円)と「ほうじ茶リスタ」(アイスのみ。同560円)だ。

前者は、毎年人気の抹茶を使ったドリンクに、今回初めてフルーツ=洋梨を組み合わせ、果肉入りアップルソースでトッピングした。後者はダブルに焙煎したほうじ茶を使った濃厚なシェイクだ。トッピングのクーベルチュールチョコレートも楽しめる。

タリーズの「宇治抹茶フルーツティー ぺア&アップル」
写真提供=タリーズコーヒー ジャパン
タリーズの「宇治抹茶フルーツティー ぺア&アップル」 - 写真提供=タリーズコーヒー ジャパン

「茶葉をそのまま挽いて粉末にしているので、お茶本来の風味と香りが楽しめます。他社はお茶を異文化と融合させる『フュージョン系』に力を入れますが、うちは愚直に、あくまで素材にこだわって勝負します」と、マーケティング本部マーケティング第二グループ グループ長の工藤和幸氏は自信を示す。

タリーズは「お~いお茶」で知られる伊藤園のグループ会社だ。茶系には強みがある。

「茶系に本腰を入れ始めたのが2013年に伊藤園から本間代子(のりこ)が来て、製品開発の専門チームを立ち上げてからです。本間は日本茶、中国の茶芸師、英国の紅茶協会の資格など公的制度の資格も取得した“お茶のプロ”で、茶葉を提供する生産地を探すことから始め、年々、茶系の味を深めていきました。近年のタリーズは、コーヒー系よりも紅茶系商品の伸びのほうが高いほどです」(広報担当者)

専門店として2017年から「タリーズコーヒー &TEA」という業態も始め、現在11店を展開する(2020年9月現在)。一方、伊藤園には「オチャルーム アシタ イトウエン(ocha room ashita ITOEN)」という高価格の店がある。タリーズを取材してきた筆者としては、上質感を伊藤園に任せ、タリーズは「身近さ」を訴求したほうが強みになると感じる。

タリーズの「ほうじ茶リスタ」
写真提供=タリーズコーヒー ジャパン
タリーズの「ほうじ茶リスタ」 - 写真提供=タリーズコーヒー ジャパン

■上質な「ティーサロン」が減った理由

なぜ「身近さ」がポイントになるのか。その理由は茶系の歴史を紐解くとよく分かるだろう。昭和から平成の途中まで、喫茶店に来る女性客は総じてコーヒーよりも紅茶を好んだ。「紅茶のおいしい喫茶店」というフレーズで始まる歌も流行ったほどだ(柏原芳恵「ハロー・グッバイ」1981年)。

この曲がヒットした昭和56年は、喫茶店(カフェも含む)の国内店舗数が15万4630店と、調査史上最も多かった年だ(総務省統計局「事業所統計調査報告書」を基にした全日本コーヒー協会の発表データ)。それが現在は7万店を割り、ティーサロンも減った。

「ティーサロンが減った理由」を、元ドトールコーヒー常務でフードビジネスコンサルタントの永嶋万州彦(ますひこ)氏に聞いたことがある。同氏はこう解説した。

「昔に比べてコーヒー好きの女性も増えました。紅茶がおいしい店は、気のきいたスイーツやサンドイッチなど、サイドメニューの上品さ、上質な雰囲気が求められたのです。だから百貨店との相性もよく、館内にティーサロンがあります。しかし働く女性が一般的となって忙しく、平日の昼間に紅茶でゆったり過ごすという生活習慣も減りました」

■紅茶の老舗は女性客が約8割を占める

筆者は学生だった1980年代、東京・青山のティーサロン(現在は閉店)でもアルバイトをした。欧米の高級洋食器で飲食を提供し、1杯650円のロイヤルミルクティーや900円前後のサンドイッチの注文がよく入った。常連客には、近くのカルチャースクールでの受講を終えた主婦が多く、滞在時間も長かった。

その後もずっと飲食店の興亡を見てきたが、現在は女性の社会進出もあり、ティーサロンも上質よりも気軽さ、フードメニューは軽食よりもしっかり取れる傾向に変わった。

それを象徴する店が東京・渋谷にある「ケニヤン」だ。昭和時代からセイロン産などオリジナル紅茶をそろえ、パスタやドリアなどフードメニューも人気だ。9月上旬に訪れたが、コロナ禍でも入れ替わりでお客が訪れていた。創業40年を超える老舗で女性客が約8割を占める。店内は入店しやすい雰囲気となり、ドリンクのテイクアウトも行う。老舗店も時代を意識している。

渋谷で40年以上続く老舗「紅茶の店 ケニヤン」の外観
写真=筆者撮影
渋谷で40年以上続く老舗「紅茶の店 ケニヤン」の外観 - 写真=筆者撮影

こうした時代の変化に前述のタピオカ流行が加わり“茶系再び”になったと思う。

■ウィズコロナは「生活文化」を変えるチャンス

カフェが茶系に注力する理由として、「消費者の健康志向」も指摘したい。

例えば、冒頭で触れた茶生産量の他にも、国内の飲料市場における「無糖飲料製品構成比」が「2019年は約49%」となった(全国清涼飲料連合会調べ)。無糖の炭酸水の伸びが目立つが、むぎ茶飲料も伸び、緑茶飲料も手堅い。

店で出す茶系も、以前からハーブティーなど身体によさそうなメニューが目立つ。

茶系に力を入れる各社に残された課題は「生活習慣」を変えることだ。多くの消費者は朝からコーヒーを飲む。日本では、紅茶は優雅な「アフタヌーンティー」のイメージもあり、朝のイメージは薄い。

ウィズコロナが続く現在は、そうした生活文化を変えるチャンスだ。リモートワークで、いつもと違う朝の飲料で気分転換を図る人もいれば、外出時のカフェでも違うメニューを頼んでくれるかもしれない。大手カフェが展開すると、メニューの多様性も増す。

コンビニコーヒーの拡大や定着もあり、コーヒー系が注目されてきたが、今後はティーにも注目が集まりそうだ。本質を考えて訴求する店が増えれば、潮流も変わるだろう。

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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)

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