内臓脂肪よりヤバい、突然死を引き起こす「エイリアン脂肪」の恐怖

プレジデントオンライン / 2020年9月27日 11時15分

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生活習慣病のエキスパートである池谷敏郎医師の著書が売れている。『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)は13万部を突破。さらに無駄な脂肪を燃やす方法について『代謝がすべて』(角川新書)を上梓した。今回はこの最新作から、「腹回りの内臓脂肪より恐ろしい『敵』」について紹介しよう──。(第1回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『代謝がすべて』(角川新書)の一部を再編集したものです。

■行き場を失った脂肪は臓器にまとわりつく

脂肪が増えて内臓脂肪を処理しきれなくなってくると、「怖いこと」が起こります。

通常、脂肪はお腹まわりにつく「内臓脂肪」か、皮膚のすぐ下につく「皮下脂肪」としてたくわえられますが、内臓まわりにしても皮膚の下にしてもスペースには限りがあります。これらに入りきらなくなって行き場所を失った脂肪が、本来はつくはずのない心臓や肝臓などの臓器やそのまわり、筋肉などにつくようになるのです。そして、各臓器でさまざまなトラブルを引き起こします。

たとえば、肝臓に余計な脂肪がついた状態が「脂肪肝」です。脂肪肝といえば「お酒の飲み過ぎでなる」イメージがいまだに根強いですが、最近では、アルコールが原因ではない脂肪肝が増え、問題になっています。

■動脈硬化、心筋梗塞、心不全が次々と……

非アルコール性の脂肪肝が悪化して肝臓に慢性の炎症を引き起こすことを「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」といいます。NASHの人は、動脈硬化や心筋梗塞などの発症率が2倍以上高くなるという統計があるほか、肝硬変、肝臓がんへと進行するリスクが、アルコール性の脂肪肝以上に高いとも指摘されています。

心臓のまわりについた脂肪も、怖い存在です。心臓に血液を送る冠動脈などに細い血管を伸ばし、細胞にダメージを与える毒素を送り込んで、密かに動脈硬化を進めてしまうのです。そして、やがては心筋梗塞や心不全といった重大な病気を引き起こします。

ひっそりと心臓に寄生するかのように付着し、命を奪っていくことから「エイリアン脂肪」との異名をもちます。

健康診断などで脂肪肝と診断された人は、すでに心臓にもエイリアン脂肪がついている可能性が大です。脂肪をためこまない生活に切り替えなければいけません。

■腹回りが大きくなるほど「がん」も増える

日本人の死因の第1位を占める「がん」や、高齢化とともに増え続けている「認知症」といった病気も、内臓脂肪の蓄積によってリスクが高まります。

内臓脂肪は、さまざまな炎症物質を放出し、体内で慢性的な炎症を引き起こします。体にとって、慢性炎症はエラーのもと。

慢性炎症があると、細胞分裂の回数が増えてDNAのコピーミスを起こしやすくなったり、活性酸素が過剰に生まれて細胞内のDNAが傷つけられたり、正常な細胞に「遺伝子編集酵素」というものが生まれて遺伝子変異が重なったりと、がん細胞が生まれやすく、かつ、がんが進行しやすい環境になってしまいます。

実際、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、4万人以上を対象とした研究結果をもとに「内臓脂肪ががんの発症リスクを高める」ことを報告しています。内臓脂肪はお腹まわりにつく脂肪なのでその過多は腹囲に表れますが、IARCによると、腹囲が11センチ増えるごとに肥満に関連するがんのリスクが13%上昇したそうです。

■内臓脂肪型肥満は「アルツハイマー型認知症」のリスク3倍

同じように、認知症も内臓脂肪が多いとなりやすいことが、わかってきています。

認知症にはいくつかのタイプがあり、「脳血管性認知症」の場合は、脳梗塞や脳出血などの脳の血管障害が引き金となって発症するので、内臓脂肪が増えて動脈硬化のリスクが上がれば、当然、脳血管性認知症のリスクも上がります。

認知症のなかでも最も多い「アルツハイマー型認知症」のほうも、無関係そうに見えるかもしれませんが、じつは内臓脂肪と大いに関係しています。

たとえば、アメリカの研究では、中年期に腹部肥満(内臓脂肪型肥満)だった人は、高齢期以降にアルツハイマー型認知症を発症するリスクが3倍高くなると指摘されています。

同じように、約1万人を対象としたイギリスの研究では、BMI〔体格指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕が高いほど、ウエスト/ヒップ比が大きいほど、体脂肪量が多いほど、脳の灰白質の容積が小さくなっていたそうです。

灰白質とは、神経細胞の細胞体が集まっている領域のこと。アルツハイマー型認知症をはじめ、脳の神経細胞が死滅していく認知症の患者さんの脳内では灰白質の萎縮が見られます。

■異常なタンパク質が蓄積して悪さをする?

なぜ内臓脂肪の蓄積がアルツハイマー型認知症につながるのか、そのメカニズムはまだ完全には明らかにされていませんが、いくつかわかってきていることがあります。

まず、脳内でアミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が分解されずに蓄積することが、アルツハイマー型認知症を引き起こすといわれていますが、じつは、アミロイドβを分解する酵素とインスリンを分解する酵素は同じなのです。

そのため、糖の代謝が悪くなってインスリンが大量に分泌されるようになると、分解酵素がインスリンを分解するので手一杯になるので、アミロイドβが蓄積されてしまうのではないか、との説があります。

■老化原因物質AGEsもどんどん増える

また、食後高血糖が続くと、終末糖化産物(AGEs)が生じ、活性酸素が増加します。その結果、炎症が生じて、脳の神経細胞がダメージを受けることもわかっています。

若い女性と年配の女性の肌
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AGEsとは、タンパク質と糖が熱せられてできる有害物質のこと。老化の原因物質のひとつといわれています。血中のブドウ糖が過剰になると、体内にあるタンパク質と結びつき、体温で加熱されて糖化が起こり、AGEsができるのです。

お腹まわりに脂肪をたくわえればたくわえるほど、がんのリスクは増え、脳は萎縮すると考えると、ぞっとしませんか?

■全身のオーバーヒートを回避する

内臓脂肪を代謝しきれなくなった体は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常、がん、認知症、体全体の免疫力まで、全身の様々な“オーバーヒート”を起こします。「たかがメタボ」と思っていた方は、今すぐ認識を改めてください。

池谷敏郎『代謝がすべて』角川新書
池谷敏郎『代謝がすべて』角川新書

「メタボリックシンドローム」とは、代謝異常症候群です。メタボの先にあらゆる病気や不調が待っているわけですが、逆にいえば、代謝を理解して内臓脂肪をためる生活から抜け出し、代謝を正常に戻せば、多くの病気の予防になります。

あなたがたくわえている脂肪は、“備蓄用”の範囲に収まっていますか? お腹に手を当てて、よく考えてください。その手に脂肪を感じるのであれば、すでに代謝のオーバーヒートがはじまっている可能性は高いでしょう。

代謝力をアップさせ、全身の脂肪を燃やしていただくため、このたび『代謝がすべて』(角川新書)を著し、そのメカニズムから対処法まで詳しく書きました。ぜひこちらも参考にしながら、健康的な体と生活を取り戻してください。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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