夢のような研究結果「水を飲むだけでやせる」は本当か

プレジデントオンライン / 2020年9月29日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vadym Petrochenko

生活習慣病のエキスパートである池谷敏郎医師の著書が売れている。『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)は13万部を突破。さらに無駄な脂肪を燃やす方法について『代謝がすべて』(角川新書)を上梓した。今回はこの最新作から、「水を飲んでやせる秘密」について紹介しよう──。(第2回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『代謝がすべて』(角川新書)の一部を再編集したものです。

■水を飲むだけでエネルギー消費が増える

水を飲むだけでやせる。そんな夢のような研究結果があります。

健康な男女14人を対象にしたある研究では、500ミリリットルの水を飲むことでエネルギー消費がどう変わるかを調べたところ、飲み終わってから10分以内に効果が出始め、男女ともにエネルギー消費が30%増え、その効果は1時間以上続いたそうです。

この研究では、1日1.5リットルずつ水の摂取量を増やすと毎日のエネルギー消費量が50キロカロリー増え、この習慣を1年間継続すると1万7400キロカロリー余計にエネルギーを消費することになり、脂肪組織2.4キログラムに相当する、と結論づけられています。

■体内でエネルギーを使ってお湯を沸かすようなもの

水を飲むだけでエネルギー消費が増えるなんて、「え、本当?」と不思議に思うかもしれません。でも、体内で起きていることはとてもシンプルです。

この研究で飲んでいる水は、22度という体温よりも低い常温の水です。温度の低い水を飲めば、体の中で体温と同じ温度にまで温められますよね。温めるには当然エネルギーが必要です。そのエネルギーはどこから来たのかといえば、もちろん自分でつくりだしているわけです。体内で、エネルギーを使ってお湯を沸かしているようなもの。

ですから、水を飲むだけでやせる(=エネルギーを使う)ということは、決して不思議なことではありません。

■大事なのは「温度」

逆に、「水太り」とか「水を飲むだけで太る」というほうが摩訶不思議です。外来にいらっしゃる患者さんのなかにも、ときおり「水の飲み過ぎで太った」などとおっしゃる方がいるのですが、よくよく話を聞いてみると、お菓子を食べていたり、主食のごはんをおかわりしていたり、太った原因は水以外のところにあります。

本当に水だけで太った人は今まで見たことがありませんし、水だけでは太りようがありません。

水を飲むことは、基礎代謝を上げる助けになります。こまめに水分補給をするようにしましょう。

そのときに大事なのは、水の温度です。代謝を上げるには、温かい水よりも冷たい水(体温よりも低い温度)を飲みましょう。これは、水に限らず、飲み物全般に共通していえることです。

■自ら体温を上げる生活をする

水を飲むなら温かい水よりも冷たい水のほうが代謝は上がるというのと同じで、温かい部屋で厚着をしてぬくぬく過ごすよりも、少し肌寒さを感じるほうが代謝は上がりやすくなります。

これについては、私が出演したテレビ番組で、次のような簡単な実験を行ったことがあります。冷え性を自覚している人たちと冷え性ではない人たちに、薄着をして寒いところに立ってもらい、それぞれ体温がどう変わるかを調べたのです。

「自称・冷え性」のグループと「自称・冷え性ではない」グループで、体温はどう変わったと思いますか。

じつは、「自称・冷え性」の人たちは「寒い、寒い」と言いつつも、脇で体温を測ってみると37度を超えていました。一方、「自称・冷え性ではない」人たちは体温が下がっていました。

この差はどうして生じたのかといえば、冷え性を自覚している人たちは寒いからこそ震えたり、脇や手をこすり合わせたりして、自然と体の内側から熱をつくりだしていたのです。一方で、冷えを感じていない人たちは平然としているので、どんどん熱が体外に逃げていって、じつは体は冷えていたのです。

■「血行をよくする」ことを意識する

冷えを感じている人たちのほうが実際は体温が上がっていたとは、面白いですよね。この実験結果から私が伝えたいことは、決して、冷え性が得ということではありません。

寒さを感じて体温を上げるために自ら熱をつくりだす行動をとることが代謝を上げることにつながる、ということです。

ですから、暑い夏よりも寒い冬のほうが体を温めようと熱をつくりだす分、基礎代謝は上がります。

同じように、冷えを感じたときには着込んだり部屋の温度を上げたりするよりも、あえて着込まず、部屋も暖め過ぎず、ストレッチをしてみたり、ゆっくり腰を下ろすだけのスロースクワットをしてみたり、あるいは座ったまま手足をグーパーする、貧乏ゆすりをするだけでもいいので、少し体を動かすことで体温を上げるようにすると代謝が高まります。

上着を脱ごうとする男性
写真=iStock.com/BilevichOlga
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BilevichOlga

手足を動かすと、筋肉で熱がつくられるとともに末端の血管が開いて血流がよくなり、末端まで温かい血液が行き渡るようになるので、手足の先まで温まります。でも、体表面が温かくなれば、今度は体表面から熱が外に逃げていくので、また内側から熱をつくりださなければいけなくなって、エネルギー消費が増えるのです。

そういう意味で、血流をよくする行為は、代謝をよくすることにつながります。

■サウナや入浴の代謝アップ効果は?

体を温めるといえば、最近、若い人たちの間でサウナが人気です。サウナも「代謝にいい」というイメージをもっている人は多いと思います。

サウナに入ると体が一気に温められて、バーッと汗をかきますよね。上がった体温を37度前後まで下げるために汗をかいて調節するわけです。汗をかくということも、エネルギーを消費します。

なおかつ、高温のサウナ室に入ると心臓がバクバクと動き心拍数が上がりますよね。同時に、体温が上がると、私たちの体は体表面に近い血管を広げて血流をよくして、熱を体の外に逃がそうとします。

■「どうやって体温を上げたのか」がポイント

上がり過ぎた体温を下げるためにエネルギー消費が増えるので、一時的には代謝が上がります。たしかに家で横になっているよりはエネルギーを多く消費するものの、たとえば運動をして汗をかくのと同じくらいのエネルギー消費量があるかというと、そうではありません。

運動をして汗をかくのも、サウナに入って汗をかくのも、同じように充実感があるかもしれません。むしろ汗の量でいえば、サウナのほうが多いかもしれませんね。どちらも上がり過ぎた体温を下げるために汗をかくことは同じですが、「どうやって体温を上げたのか」が異なります。

運動の場合、自分で筋肉を動かしてエネルギーを消費した結果、熱が生まれて体温が上がるわけですが、サウナの場合、自分で筋肉を動かして熱を生みだしているわけではありません。体温を上げるほどの熱を生みだしているのは何かといえば、サウナ室の片隅にあるヒーターです。

■筋肉を動かして自分で熱をつくりだす

お風呂も同じです。半身浴だろうと全身浴だろうと体が温まるのは、ガスや電気で温まった水から熱をもらっているわけですよね。自ら熱をつくりだして体温を上げているわけではありません。

池谷敏郎『代謝がすべて』角川新書
池谷敏郎『代謝がすべて』角川新書

たとえお風呂で1、2時間の半身浴をしたとしても、がんばってエネルギーを消費して熱をつくりだしているのは、給湯器のほう。残念ながら、お風呂に入っている私たちではありません。

上がった体温を下げるために代謝は多少上がるとはいえ、その効果は微々たるもの。数十分のサウナや1、2時間の半身浴では、その後の楽しみのビールやつまみを帳消しにしてくれるほどのエネルギー消費にはなりません。

ちなみに、たとえサウナ後に体重が減っていたとしても、それは、水分が減っただけです。脂肪が燃焼されたわけではありません。

基礎代謝を上げるには、熱をつくりだす作業を他人任せにしてはいけないのです。筋肉を動かしてエネルギーを消費し、自分で熱をつくりだす。それが代謝を上げる基本です。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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