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三浦瑠麗「映画『ロング・ショット』に、強い女が求める男性像を見た」

プレジデントオンライン / 2020年10月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Strelciuc Dumitru

■映画『ロング・ショット』に見る強い女が求める男性像

ある人に勧められて『ロング・ショット』を観た。2020年1月に公開された映画だが、シリアスなものばかり観ていたために本作品を見逃し、ビデオで観たら久しぶりに面白くて、嬉しくなってしまったのだった。主役はシャーリーズ・セロン演じるスタイリッシュなシャーロット・フィールド国務長官と、そのお相手セス・ローゲン演じるフレッド・フラスキー記者。

シャーロットは超党派でキャリアを築いた情熱溢れるプロフェッショナル。日中は打ち合わせや面会や取材が目白押しで、深夜には電話会議。わずかな睡眠をとった後でも早朝のエクササイズは欠かさない。チャーミングで強い女というキャラクターがシャーリーズ・セロンにぴったりとはまっている。

フレッドはユダヤ系のリベラルな記者。自らに妥協を許さない孤高のジャーナリストだが、その実、こだわりと思いは共感を求めて誰かを探している。実はシャーロットは彼の初恋の人で、2人はパーティーで偶然に再開する。

シャーロットにはヒロインにありがちな変な弱さがない。男に教育されて働き方を変えたり、大統領選への立候補を諦めたりもしない。圧倒的にプラス思考な、成功した例としてリアリティのある存在だ。2人が寝る関係になっても、早くいってしまってごめん、と先に謝るのはシャーロット。女の子は男の子に救ってもらう必要などないんだということをここまで明確に示した映画はないだろう。

■男の子の夢を表現した映画

女性が男性に求めていることは、自分の正義感を押し付けたり偉そうに説教を垂れることではない。そばにいて自分の味方をして励ましてくれたり、ポップコーンを片手に映画を一緒に楽しんでくれたり、才能を活かせるように助言してくれたりすることなのだから。

フレッドは、自分の考えを一方的に振りかざすことの偏狭さに気づき、自分を客観視できるまでに成長を遂げる。彼の黒人の親友ランス(オシェア・ジャクソン・Jr)は親友の不幸にとことん付き合ってやる頼りがいのある人物だ。フレッドは長年彼と過ごしながら、彼が共和党員であることを知らなかった。黒人ならば民主党員だろうと決めつけていたからだ。そこには、完全なレイシズムが存在する。フレッドははじめて、自分も狭量なクソ野郎であることに気が付く。

この映画は、外見は冴えないけれど知性とウィットに満ちたフレッドの夢を表現したものであるともいえる。13歳の時に彼女に恋してから見続けてきた夢を。シャーリーズ・セロンが超絶美人でなければ映画として成立しないストーリーではあるので、まあ、男女でいうと片一方の夢しか1度にはかなわないのだけれど。あまりにリアリティがない、という声も聞こえてきそうだが、意外とすべてを手に入れたほんとうに強い女性に必要なのはこういう男性かもしれない。

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三浦 瑠麗(みうら・るり)
国際政治学者
1980年、神奈川県生まれ。神奈川県立湘南高校、東京大学農学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。著書に『21世紀の戦争と平和』(新潮社)、『日本の分断』(文春新書)など。

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(国際政治学者 三浦 瑠麗)

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