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パワハラ防止のために知っておきたい「かりてきたねこ」の7文字

プレジデントオンライン / 2020年10月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LisaValder

職場で「パワハラ」と言われないためには、なにに気をつければいいのか。産業カウンセラーの渡部卓氏は「どのような状況、どのような相手でも意識してほしいポイントがある。それは『かりてきたねこ』の7文字に詰まっている」という――。

※本稿は、渡部卓『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

■パワハラ防止にもなる「かりてきたねこ」

ビジネスであれプライベートであれ、相手の意向に沿わない意見を言う行為は、誰にとっても気が重いものです。

相手に対して、こちらがネガティブな反応を示す以上、どうしてもその後の影響が気になります。

そこで、シチュエーションや相手別に、できるだけ丁寧に、誠実に自分の意見を伝える言い方を紹介していきたいと思います。

その前提として、どのような状況、どのような相手であってもつねに意識してほしい「共通のポイント」があります。つねに「かりてきたねこ」を意識する、ということです。「かりてきたねこ」とは、パワハラ防止対策や、組織のコミュニケーション改善の研修などをする際に必ず伝えている私の造語です。多くの研修講師たちにも引用されています。部下を叱り、自分の意見をしっかり伝え、パワハラの誤解を回避するうえで欠かせない心得だと考えています。具体的には、

か──感情的にならない
り──理由をきちんと話す
て──手短に済ませる
き──キャラクター(性格や人格、外見や言動の特徴)には触れない
た──他人と比較しない
ね──根に持たない
こ──個別に伝える

という、7つのポイントの頭文字を取ったものです。

相手に伝える前に、このポイントをチェックしておけば、何を伝えるにしても、無用な対立感情を生まず、すんなり受け入れてもらえる可能性が高まります。とくに、言い方次第で人間関係がこじれてしまいがちな「NO」に対して、リスクを軽減する効果があるのです。

では、一つずつ解説したいと思います。

■カーッとなったら「6秒数える」

■「か」感情的にならない

これはNOを言う場合に限らず、あらゆるシチュエーションの会話で大事です。感情だけが先行して、理性が働かない状態でコミュニケーションしてはいけません。

運転にたとえるなら、ハンドル操作もブレーキも利かない自動車と一緒です。自分をコントロールできないまま、人と接するのは危険です。トラブルになるのは必至でしょう。人間ですから、腹が立つときはあります。理不尽な要求や、何度指摘しても改善されない仕事内容などに、感情を込めた言葉でNOを突きつけたい場面もあります。

そんな気持ちが湧き上がってきたら、冷却期間を設けましょう。私はアンガーマネジメントの研修会で、怒りを感じた場合、まずは6秒間我慢しろと教えています。これを“カウントシックス”と呼びます。

具体的には、カーッときたときに、机の下など相手の見えないところで(あるいは、頭の中でイメージして)指を折って6つ数えるのです。6なので、片手だけでは数え切れずに、両手を使う。左手から1本ずつ指を折っていったとすると、5から6になる際に右手に移り替わることになります。その際に、意識も切り替わるのです。

また、怒りは6秒程度がピークで、それを過ぎると鎮静化に向かうと言われていることも、このカウントシックスが効果的な理由です。

それでも感情が収まりそうにないときは、いったんその場から離れるのも手です。トイレに行って自分の顔を鏡で見れば、怒っている顔を客観的に認識できる。そこで感情の波が収束し、気持ちが落ち着いてから、元の場所に戻って、冷静に自分の意見を伝えればいいのです。

■「説明責任」は現代のビジネスで必須

■「り」理由をキチンと話す

なぜNOなのか。あなたにはその理由をキチンと説明する義務があります。断られる理由がわからなければ「自分のことが嫌いだからだ」「面倒くさがって頼みを聞いてくれない」などと相手は誤解します。そういう小さなすれ違いで、敵を作ってしまうのは損です。たった一度のNOによって、それまで築いてきた人間関係を壊したり、職場で悪評が広まるのは避けるべきでしょう。

また、現代のビジネスでは、説明責任が求められるのは当然です。「改善提案はよくできていたが、上が納得しない」なんてひと言で部下を引き下がらせることができたのは、いまは昔の話です。

■相手が食い下がったら、詳しく話せばいい

■「て」手短に済ませる

相手のやり方や提案、意見に反対の意向を伝える以上、理由を明確に説明すべきではあります。ですが、くどくどと長く話すのはNGです。

相手からすれば自分のやり方や提案、意見が否定される理由をいつまでも聞いていたいわけがありません。あなたが断る理由がわかれば、さっさと次の対応策を考えたいのです。ですので、相手に伝える内容はあらかじめ整理して、的確に、かつ効率よく話すように準備しましょう。それでも相手が食い下がってきたら、さらに詳細に説明するぐらいの姿勢で十分です。

■人格への言及、他人との比較は絶対ダメ

■「き」キャラクター(性格や人格、外見や言動の特徴)には触れない

相手のやり方や提案、意見に反対を示すのは、その人の性格や人格にはいっさい無関係であると強く意識してください。あくまでも客観性のある事由があるからだと、自分自身にしっかり言い聞かせておく必要があります。というのも、人間は断ることの後ろめたさから、ついつい余計なひと言を口にしがちだからです。

たとえば「前回手伝ったときにお礼もしてくれなかった」「キミはいつもルーズだから、ギリギリの状況になるんだよ」などと、問題となっている仕事とは直接関係ない理由は決して口にしてはいけません。相手を傷つけてしまいますし、職場での「人格否定」的な発言はパワハラ認定されるリスクもあります。

■「た」他人と比較しない

相手を誰かと比較する発言は御法度です。比較で褒められている人も決して気持ちよくない“レッドカード”級のNG行為です。

たとえば、新しい仕事を教えてもなかなか及第点の成果物を上げてこない部下に対して、「(前の部下だった)Aさんは一度で覚えてきたぞ……」などと言ってしまったら、部下は深くプライドが傷つきます。あなたを憎むかもしれません。

そもそも部下とAさんを比べることと、部下が新しい仕事を身につけることはまったくの別問題です。むやみに他人と比較する行為は全面的にやめましょう。

■みんなの前で「恥をかかせる」のはNG

■「ね」根に持たない
渡部卓『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春新書インテリジェンス)
渡部卓『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』(青春新書インテリジェンス)

きちんと自分の意見を伝えて、相手を納得させたら、あとはスッパリ忘れましょう。根に持たないようにするのです。そうしなければ、その後、NOを言った相手があなたに接する態度に対して、「あのときNOと言ったから、少し冷たいな」などと邪推をしてしまうことにもつながります。

色眼鏡をかけて相手を見ていれば、人間関係がぎこちなくなり、結果的にあなたが損することにもなるのです。

冷静に厳しいことを言ったあとほど、相手を認め、フォローする言葉を意識的にかけるようにすることで、言った相手だけでなく、自分自身の気持ちも軽くなって、根に持ちにくくなります。

■「こ」個別に伝える

グループLINEやSlackなどのチャットツールで一斉に問いかけられた案件などは別にして、相手にとって好ましくない意見は、みんなの前ではなく、個別に伝えるのが基本です。なので、必ず別室に行く、メールでフォローするなどの配慮をして、ほかの人の目が届かない場所で伝えましょう。

仕事の軽重にかかわらず、否定的な意見を言われるのは、当人は多かれ少なかれダメージを受けるものです。ほかの人の見ている場所でオープンにそれを伝えれば、相手に恥をかかせることにもなります。「何もほかの人の目がある場所で言わなくてもいいじゃないか」と、伝えられた案件への意見とは別の要素で怒りに火を注ぐ結果になるかもしれません。必ず一対一になって、他人の目を気にしなくていい状況を作って、冷静に伝えるようにしましょう。

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渡部 卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー
認定ビジネス・コーチ、帝京平成大学現代ライフ学部教授、武漢理工大学客員教授。1979年早稲田大学政経学部卒業後、モービル石油に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得。90年日本ペプシコ入社後、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジを経て、2003年ライフバランスマネジメント社を設立。14年4月帝京平成大学現代ライフ学部教授に就任、現在に至る。

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(産業カウンセラー 渡部 卓)

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