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「5年間で貯金が1500万→680万」62歳独身で毎月9万円の食費はぜいたくか

プレジデントオンライン / 2020年9月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chachawal Prapai

親から相続した都内のマンションに住む62歳の独身男性は、老後不安に悩んでいる。55歳の時、1200万円の退職金を手にしたが、「ずっとマジメに働いてきたんだから」と5年間で700万円分を浪費してしまった。今も唯一の癒やしである食費に月9万円超を使っている。家計相談を受けたファイナンシャルプランナーのアドバイスとは――。

■退職金1200万円を手にした途端、700万円浪費した62歳独身女性

「年金生活に入ったら、暮らしていけるかどうかが心配で」

心配そうな顔で家計相談に来たのは、継続雇用で働いている都内在住の会社員・田中則夫さん(62歳・独身)。現在、手取りで月約20万円の収入がありますが、家計は毎月赤字です。

年金だけに頼る暮らしに突入すると収入が今以上に減るので、貯金(現在680万円)を取り崩すことで何とかやっていけるのか試算してほしいといいます。結果は後ほど報告しますが、その前に、田中さんのキャリアを振り返ってみましょう。

約7年前、田中さんは55歳の時、大卒後に就職した企業で役職定年を迎えました。「今退職するのなら退職金が割り増しされる」と聞き、退職を決断しました。受け取った退職金は1200万円。それまでの貯金(当時300万円)と合わせ、資産は1500万円ほどになりました。

その後、すぐに今の会社に営業事務として再就職しました。当初の手取り月収は約32万円。比較的高待遇の給与を得ることができました。暮らしているマンションは相続を受けたものでローン負担はなく、管理費(月2万6000円)や固定資産税(年約13万円)を支払うだけ。今までずっと独身できたため、生活費もそう多くはなく(月26万5000円)、再就職先の収入は生活するのには十分な金額でした。

「それに、前職の退職金などの蓄え(計1500万円)もあるし……」

そんな気の緩みもあり、それまでずっと憧れていた高級時計やブランドバッグ、高級靴、バイクなどを立て続けに購入し、その他にも、旅行などで散財してしまったそうです。「長年、自分はマジメに働いてきたんだから、これくらいのぜいたくは許されるはず」。再就職してからの数年間で支出額はどんどん増えていきました。

そして、気が付いた時、退職金を含む貯金の残りは約800万円にまで減っていたのです。

■再就職先(警備)の月給は当初32万から60歳時に継続雇用で20万に

そのまま60歳の時、今の会社で定年を迎え、継続雇用となりました。警備部門に配属が変わり、関連会社の警備室で警備員・管理者として働いています。

ただ、手取り月収は約20万円と、雇用保険からの「高年齢雇用継続基本給付金」がひと月あたり2万円強。定年を迎える前より10万円も減り、月22万5000円ほどの収入となりました。

スマート フォンを使って女性の手のクローズ アップ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Chachawal Prapai)

支出状況は変わりませんから、毎月4万円前後の赤字です。痛いのはボーナスの支給がないこと。そのため、赤字分は全額を蓄えから補填する暮らしとなってしまいました。定年時には今の会社からも退職金が出ましたが、勤務期間が短いため、100万円にも満たない程度でした。赤字補塡を2年ほど続けた結果、今の貯金額は約680万円まで減ってしまったということです。

一方で、見通しの明るい話もあります。

今の会社では70歳まで働く道が残されています。65歳までは継続雇用で、それを超えると嘱託社員として働けます。さらに収入が下がると言われていますが、70歳まで職があるのは助かります。最近の定年延長の話題の影響で、その年齢が75歳まで延長される可能性も出てきました。時々夜勤もある仕事ですが、体力が続く限り、できるだけ長く働き続けたいと考えているそうです。

■63歳からは「特別支給の老齢厚生年金」月約10万円受給できるが

このように、田中さんは「長く働ける」「働きながら年金が受給できる」という2つの収入が得られる状況にあることがわかります。来年(63歳)からは「特別支給の老齢厚生年金」が受給でき、月に約10万円入ってきます。65歳からは基礎年金と厚生年金を合わせ月に約16万円です。

63歳からは、今の手取りに10万円ほどの収入が増えるので、黒字で暮らせます。65歳からも働くことができれば、給与収入が手取りで約14万円と言われているそうですから、年金と合わせ約30万円の収入となります。

働き続けるのなら月の暮らしには問題がないように思えますが、毎月の生活費が支払えればよいというだけではいけません。マンションの固定資産税や火災保険、また、家電の買い替えなど臨時で支出する必要も出るでしょう。

そういったものを支払うために貯金を使うと、老後資金にするはずだった貯金はあっという間になくなります。ですから働けるうち、収入があるうちは貯金を減らさないだけではなく、できれば80代、90代になった時のことを考えて、貯金額を増やすことも考えていく必要があるのです。

■なぜ、ひとり暮らしの女性が食費に月9万円超も使うのか

それを実現するには、毎月の支出の仕方を変え、わずかでも貯金ができるようになってほしいもの。ご本人も下げられる支出を知りたいということで、家計表から毎月の支出を振り返っていきました。

食費(月9万2000円)は単身者としてはかなり高額です。理由を尋ねると、「恥ずかしながら、あまり自炊したことがなくて、外食中心なんです」とのことだった。最近は、会社帰りに飲食店に立ち寄って注文するメニューの単価も高額化した上、コンビニでお菓子やスイーツを買って、スマホで動画や海外ドラマを見ながら食べることが最高の癒やしになるそうです。

急にこうした食習慣はなかなか変えられないかもしれませんが、少しずつ自宅で食事をとる回数を増やすことにしました。ただ、すぐさま炊飯機を買って、鍋を買って……となると作らなければならないプレッシャーがきついということなので、せめて総菜などを買って食事をする回数を増やし、コンビニ利用率を減らすことにしました(月7万1000円に減額)。支出の大幅な削減できませんが、今後さらに食事の工夫をしたいと思えることを期待します。

■総合的に月4万5000円の支出削減に成功し、赤字家計脱出

交通費(月2万1000円)は大部分が通勤費なので現状維持です。娯楽費(月2万8000円)はなんとなく購入してしまうネットショッピングでの支出がメイン。自由な時間はインターネットを見ていることが多く、つい目についたものを買ってしまうのだそうです。ここは利用できる金額の上限を作るなどして、支出額の制限をかけることにしました(月1万5000円)。

通信費(1万8000円)は自宅でのインターネット環境の維持とスマホだけに絞り、固定電話は解約することにしました(9000円に減額)。このスマホも、自宅にいればWi-Fi環境で利用できますし、通話はあまりしないということでしたので、格安スマホに変えました。

また映像系のサブスク(定期購読)も利用頻度の多いものだけを残し、あとは解約することにしました(2万4000円→2万2000円に減額)。

このようにして、全体的に4万5000円ほどの支出を削減することができました。無理や苦痛を感じて削減するわけではないので、この状況は継続できそうだと田中さんは話します。

収支の状況としては、月5000円ほどの黒字が出ることが多くなったという程度ではありますが、赤字補塡のために貯金を使う状況よりはずっとよくなりました。

メタボ家計BEFORE→AFTER

次の誕生日から特別支給の老齢厚生年の受給が始まると、毎月10万円近くを貯金に回していけるでしょうし、年金受給しながら働くのであれば、生活をある程度楽しみつつ、貯金額を増やしていくことも可能でしょう。

■70歳まで働き続け、老後資金を840万円上乗せする

読者の皆さんの中にも、退職金が出ると、「たくさんお金があるから少しくらい使っても、大丈夫だろう」と思うこともあるかもしれません。ですが安易に使ってしまうと、田中さんのような不安を抱えることになってしまいます。

また、老後資金を考えた時、毎月の生活がなんとかなるということばかりを考え、計算するだけでは足りません。生きていく中では年間で支払わなければいけないものもありますし、臨時でかかるお金もあります。

総菜屋の商品陳列棚
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

介護・医療費や、家のリフォームが必要となるケースもあるでしょう。そういった生活費以外の支出をある程度想定して、生活費の他に単身であれば最低でも500万円ほどを準備し、備えておきたいものです。

今回の田中さんの場合、月の支出22万円で、来年(63歳)から継続雇用で働ける70歳までの7年間に新規に貯金できるのは、約10万円×12カ月×7年で、840万円になります。現在の貯蓄680万円と合わせると約1500万円になります。

■70歳以降は、働かなければ収入は年金月16万円のみ

しかし、継続雇用が終了する70歳以降は、さらに他の就職先を見つけない場合、勤務先からの給料がないため、月の収入は年金の16万円のみとなります。よって、支出をさらに削ったり、貯金を切り崩したりしてやりくりする必要があります。

老後いくら必要かがわからない、今あるお金を使うと自分の将来はどうなるのかを知りたい。

そう考えた時は、ファイナンシャルプランナーにライフプラン表を作ってもらったり、インターネット上の無料のライフプランシートへの書き込みをしたりして、自分の将来を見てみるとよいでしょう。

■【家計費コストカット額ランキング】

1位 -2.1万円 食費
外食ばかりの暮らしに「家で総菜を食べる」ことを取り入れる
2位 -1.3万円 娯楽費
ネットショッピングは1万5000円を上限に
3位 -0.9万円 通信費
固定電話は解約し、スマホは格安に変更
4位 -0.2万円 その他
サブスクの契約内容を一部見直し

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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