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荻原博子「もし住宅ローンが返せなくても、絶対にやってはいけないこと」

プレジデントオンライン / 2020年10月7日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maxsattana

※本稿は、荻原博子『コロナに負けない! 荻原博子の家計引きしめ術』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■コロナ禍で住宅ローンを払えなくなる家庭が急増

新型コロナウイルス感染拡大による経済の悪化で、今後私たちの生活で大きな問題となるのが住宅ローンです。

住宅ローンサービスを運営するMFS(東京・千代田区)によれば、新型コロナウイルスの影響で、すでに住宅ローンの返済が苦しくなっている人が約4割、今後、苦しくなっていくだろうと予想している人まで含めると、約7割の人が住宅ローンの返済に不安を抱いているようです。

住宅金融支援機構の住宅ローンの支払いに関する相談件数も急激に伸びていて、今年2月には15件だった相談件数が3月は214件に、4月は1158件となって、現状では電話がつながりにくくなっています。

相談は、「今月分の支払いができない」という切羽詰まったものから、「収入が減りそうなので、ボーナス払いをやめたい」などという今後を案じてのものまで、さまざまなようです。

■困った時は金融機関に相談を

こうした中で、金融機関も住宅ローンの返済相談に積極的に乗り出しています。

住宅ローンは、借りている側にとっては「返せなくなる」リスクがあります。一方、貸している側の銀行などにとっては、「貸したお金が回収できなくなる」リスクがあります。

リーマンショックの時もそうでしたが、最終的に返済できずに借主に自己破産されてしまうと、金融機関は貸したお金を回収ができなくなってしまいます。

お金を借りているほうの立場が弱いわけではなく、貸主である金融機関にとっても「返済されない」ということは大きな打撃になります。だからこそ、「とにかく相談してください。悪いようにはしません」と、大々的に呼びかけています。

住宅ローンには、政府の支援はほとんどありません。控除などを受けることで、多少は税金が安くなる人もいるでしょうが、今借りている住宅ローンを返済できないという人は、借りている金融機関と話し合いながら、各金融機関が打ち出している対策に沿って対処していくしかありません。

■返せなくても、絶対にやってはいけないこと

給料や売り上げが減ってしまって、住宅ローンが払えない人が増えているせいか、銀行の窓口では相談する人の順番待ちで混み合っているところが出てきました。

住宅ローンは、返済が1日遅れただけでも、借りている銀行からは催促の電話がきます。督促状も届きます。これらの催促をそのまま放置しておくと、後々、大事になることは覚えておいたほうがいいでしょう。

銀行では、普通2カ月間支払いがないと、事故情報(延滞情報)が登録され、ブラックリスト入りしますが、中には1カ月支払いがなかっただけでも事故扱いになるケースもあります。

そうなると、「なんとかしなくては」と思い、自力でお金を工面しようとする人がいます。特に、年配の会社員の場合、体面もあるので「返せなくなりました」と銀行にはなかなか言えず、手軽に借りられるキャッシングなどでお金を都合して返すケースもあります。

「住宅ローンが返せない」からといってキャッシングに走ることは、絶対にしてはいけません。なぜなら、今月はなんとかそれで無事返済できても、来月、再来月とコロナ禍が長引けば、そのたびにキャッシングの残高も増えていくことになるからです。

■安易なキャッシングの先には借金地獄が待っている

いったん下がった給料や収入は、よほどのことがない限り、すぐに元に戻ることはないと思ったほうがいいでしょう。

給料を下げるという決断に至るまでには、会社もかなりのダメージを受けているはず。また、取引先もコストカット意識が高まっているため、いったん取引を減らすと、すぐに従来どおりの仕事の発注はできないケースがほとんどだからです。

そうした厳しい状況の中で、住宅ローンが返せないからと安易にキャッシングに手を出すと、借金地獄にはまる危険があります。特にキャッシングの金利は15~18%と高利ですから、いったん借りると借金が雪だるま式に膨れ上がる恐れも。

一方、金融機関にとっても、「住宅ローンを返済するためにほかの金融業者からお金を借りて住宅ローンを払う」というのは、最もして欲しくないことなのです。

借りる相手が身内ならいいのですが、業者の場合、貸し付けの際に、住宅ローンの残っている家に二番抵当、三番抵当を付ける可能性もあり(一番抵当はお金を借りている金融機関が付けます)、そうなるとトラブルが起きやすくなって、のちのちの対処が難しくなるケースも。

余計なトラブルに巻き込まれないためにも、困ったらすぐに住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する。今は、それがベストな方法です。

■金融機関から提示される3つの方法

住宅ローンが払えなくなって金融機関に相談したら、どんなことを言われるのだろうかと心配な人は多いと思います。

金融機関には多くの方が相談に来るので、「返済が困難になったお客様には、こう対処しよう」というノウハウが蓄積されています。主に次の3つに集約されます。

①返済期間を延ばす
②一定期間だけ、返済額を減らす
③ボーナス返済を見直す

本当に大変な状況にある人に対しては、①と②を組み合わせるなどして臨機応変に対応しているので、困ったら相談してみましょう。金融機関が返済猶予などの条件変更に迅速かつ柔軟に対応するよう、金融庁からの強い要請も出ています。

買い手と売り手の間の不動産売却契約の署名
写真=iStock.com/undefined undefined
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/undefined undefined

③については、現状では困っていない人も、いざという時のために知っておいたほうがいい方法です。詳しく説明しましょう。

■ボーナス返済は即刻やめるべき

「①返済期間を延ばす」を選んだ時のリスクは、住宅ローンの総返済額が増えてしまうこと「②一定期間だけ、返済額を減らす」方法を採った時のリスクは、将来の返済総額が増えてしまうこと。これらについては、拙著『荻原博子の家計の引きしめ術』も参照していただきながら、なるべくリスクを回避しつつ、効果的に活用する方法を検討してください。

とりわけすぐに実行したいのが、「③ボーナス返済額を見直す」です。

会社経営が苦しくなると、真っ先に減らされるのが残業代やボーナス。次が基本給で、それも限界となれば、いよいよリストラということになります。これからは、こうした事態が起きる可能性があります。

残業代については、安倍政権の働き方改革によって減っているという会社も多いかもしれません。ただし、ボーナスについては、減額されながらも一応は支給されていたのではないでしょうか。

ところが、これからはボーナスもかなり減りそうなので、住宅ローンをボーナス払いにしている人は、ボーナス時の返済を見直してみる必要があります。

実は、住宅ローンではボーナス併用払いが多く、半数以上の人はボーナス払いを併用しています。銀行で住宅ローンを組む際に、「月々7万円、ボーナス払い30万円なら、返せますか?」と聞かれると、それなら何となく払えそうな気がする人が多いからです。

■返済してはじめて気づく、ボーナス払いの落とし穴

ただ、実際に支払いが始まると、通常月の返済は7万円でも、ボーナス月は月々の7万円に加えボーナスの30万円を支払わなくてはならないので、支払額は37万円となります。30万円支払えばいいと思っていたものが37万円なるのですから、かなりの負担です。

しかも、今後ボーナスがカットされてしまうと、この額は払えません。ですから、なるべくボーナス払いをやめるようにしましょう。

荻原博子『コロナに負けない! 荻原博子の家計引きしめ術』(毎日新聞出版)
荻原博子『コロナに負けない! 荻原博子の家計引きしめ術』(毎日新聞出版)

「ボーナス払いをなくして、月々の支払い額を増やす」というのは、年間の支払額の配分を変更するだけなので、金融機関も簡単に応じてくれます。

たとえば、3000万円を金利1.5%、35年ローンで借りた場合、2000万円を月々返済にし、1000万円をボーナス返済にすると、月々の返済額は6万1236円ですが、そのかわりボーナス月の返済額は24万5382円(内ボーナス加算は18万4146円)と、かなり大きくなります。

これを、すべて月払いにすると、月々の返済額は9万1855円で、3万円ほど返済額が増えます。ボーナス払いをやめれば、その分、月々の支払額は増えます。

■「8割家計」を実現すればリスク対応力UP

それでもなんとか家計をまかなえるように、無駄を省いてコストダウンしておけば、ボーナスをカットされても、それほど慌てずにすむかもしれません。私が「生活費をそれまでの8割にしましょう」と提案しているのは、家計のリスク対応力を上げるためです。

また、ボーナス払いがなければ、ボーナスを貯金に回すこともできます。貯まった分を住宅ローンの繰り上げ返済に回せば、ますます安心感が高まります。

今の状況でも、家計をやりくりすれば月々に支払う住宅ローンの額を増やせるという人は、できる限りボーナス払いをなくす努力をしましょう。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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