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連載・伊藤詩織「立っているだけで買春交渉を持ち掛けられた女性」

プレジデントオンライン / 2020年10月29日 9時15分

2017年10月に世界中でMeToo運動が起きて20年で3年。何が変わったのだろう。

■立っているだけで買春交渉を持ち掛けられた女性

2018年3月8日の国際女性デーだった。この日は大粒の冷たい雨が東京に降り注いでいた。17年10月にハリウッドの大物プロデューサーによる性暴力、セクハラ被害が報道されたのをきっかけに、世界中で♯MeToo運動が起きてから初めてのウィメンズ・マーチが開かれ、悪天候にもかかわらず大勢が思い思いのサインボードを掲げながら渋谷を行進していた。

『MeToo』『私の趣味は家事じゃない』『My Body My Rights』。英語の看板も多く、参加者からも英語が聞こえてきた。

私はその様子を取材しながら海外から日本に移り住み、女性として日本で生きることへの息苦しさを感じているという女性たちに取材をした。その1人がマリアさん(仮名)だ。フィリピン出身のマリアさんは日本の企業に勤め始めて3年がたつという。彼女がこのマーチに参加すると決めたのには、理由があった。

日本にきて間もないころ、駅で友人と待ち合わせをしていると指を1本、2本と何やら数字らしきサインを見知らぬ男性から送られることがあった。日本に来たばかりのマリアさんは、その意味がわからず、最初は日本流の挨拶なのかと思った。日本滞在歴が長い同郷の友人に相談すると「それ、私もされたことがある。値段交渉をしてるみたいだよ。気持ち悪いよね」と教えてくれた。

■何気ない日常だったのに……

これから友人と楽しく出かけようと、待ち合わせをしていた、そんな何気ない日常だったのに……。突然、自分を性の対象として、値段交渉をしてくる人がいる。その事実に驚き、傷ついた。

自分の体が突然誰かにモノのように値付けされる。そんな尊厳を傷つけられるような経験は誰にもしてほしくないとマリアさんは語った。マリアさんがボードで掲げた『My Body My Rights』(私の体、私の権利)という言葉は行進のシュプレヒコールとなり、渋谷に響き渡った。

20年10月、MeToo運動が世界中で広がってから3年がたつ。マーチしていなくたって、サインボードを掲げていなくたって、MeToo(私も)と声をあげられない人々の声に耳を傾けたい。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。

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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)

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