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コロナ恐怖を煽りながら、今はGoToを特集するワイドショーの無責任

プレジデントオンライン / 2020年10月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■「フェンダーギター」に見る世界と日本の違い

新型コロナウイルスの狂騒も落ち着き通常の様子に戻りつつあります。喧伝されていた9月中旬の連休後2週間が経過しますが静かなままです。恐怖をあおるメディアのプロセスもフェイクを語る話者も、起きている真実の前に消え去りました。

残されたのは、ファクトに誠実に従い現実的な方法論を示し希望を灯し続けた者たちでした。私たちは教訓も得ました。人々は、自律性を取り戻し良い判断と素晴らしい回復力を示しました。

ノーベル物理学賞が発表されました。私たち人間は、物理法則に沿って暮らしていてそこから逃れることはできません。ウイルス流行も物理法則のような自然現象の一つです。私たちは、自らが受ける影響をほんの少し変化させることしかできません。

私は、海外のフェンダーギターの売り上げが過去最高に達している(注1)ことを拝見し世界で復活の狼煙(のろし)があがったと喜んでいました。その後、フェンダーの主な楽器輸入商社の方とお話しする機会がありました。日本では、売り上げが激減し何カ月も低迷が続いているとのこと。

予想しない言葉でした。

日本ではミュージシャンやエンターテインメントの活動の場がなくなり、ライブハウスや楽器屋さんが倒産しクローズし続けていることも伺いました。スローハンドと呼ばれたエリック・クラプトンの滑らかなエレキギター(注2)を聴きながら、日本人はナイーブなので状況以上に精神的にションボリしてしまうのかもしれないと思いました。

相互監視を行い、自主的に「自粛警察」や「マスク警察」を生み出した土壌もそこにあるかもしれません(注3)。多様性や独創性を喜ぶよりも均一な多数への埋没に安心するのは、日本人の特徴かもしれません。

■恐怖をあおったメディアが「Go To」を特集

私は、9月に松任谷正隆さんにお会いしてFM放送の収録を行いました。その際に、日本の医療者は「感染への警戒を怠ってはいけない」と不安にさせてばかりで積極的な行動再開への希望ある言葉は伝えてこなかったとお話ししました。

「今回のコロナは新型ウイルスだけれども、季節性として流行っていた見慣れたコロナウイルスの新種の一つです。落ち着いてきたらそれに従って活動再開をしていくべきです。そういう世界はもうすぐやってきます。私は、全力で応援します」と続けました。

専門家は、マスクでは演奏できないサクソフォンや管楽器をどうしたらよいか、アドバイスしたって良いはずでした。世界では、前向きな分析が行われています(注4)

市民の方々は賢く、自主的に9月の連休中を使って旅行を楽しみました。ワイドショーもあれだけ恐怖を惹起し批判しておきながら、今度は「GoToトラベル」「GoToイート」を特集しています。東京都のコロナ陽性者も陽性率も、重症者数も数カ月変化していないにもかかわらず、です。

メディアがどういうものか、その性質を明確に示しています。日本全国の人々が、世界中のファクトをWEBサイトで自分で確認し理解していました。メディアを「パンとサーカス」(注5) として看破して見なくなってもいる点が痛快な点です。

人々を応援することで希望を生み出すという話題についてお話しした松任谷さんとの収録の一部は、FM東京のエールプラネットで放映されました(注6)

■新型コロナウイルスの死亡率は低い

新型コロナウイルスの死亡率が、第2波では0.9%だと発表されました。第1波は5.8%のため、大きく下がっています(注7)。実際は捕捉できないはるかに多数の方が感染していると思われるため、0.9%より低いでしょう。

世界的平均でも2%ほどで、日本はさらに格段に低くトリインフルエンザ致死率40%の100分の1ほどの死亡率です(注8)

もし死亡率が最近急に下がったというなら、ここ数カ月で集団免疫ができたのでしょうか? そうではありません。10年経っても2009年のインフルエンザウイルスの性質は何ら変化していません。私は、単なる計算違いだと思います。

この報道には、もう一つ見逃せない点が隠されています。

感染者数が実際ははるかに多かったので、正しい計算をしたら致死率が低下したという事実です。つまり初期に薄く広がってしまっていた全数の捕捉ができていなかったことを示しています。

躍起になって追いかけ回したPCR陽性患者さんを上回る感染者が、全国規模で発生していたことを意味しています。

クラスターと呼ばれたものは追跡できる一部だったのです。濃厚接触者全員を追跡すること自体が不可能な作業でした。

たぶんそれは今も変わっていません。本当は、死亡率が低いため気がつかずに霧が拡散するようにウイルスは全国に広がっています。

あたかも綺麗な地方に、コロナ陽性の都民がウイルスを伝搬するようなイメージを作って東京都封鎖寸前までもっていったメディアの罪は重いと思います(注3)

■コロナとインフルの同時流行はありうるか

マスクを「する」「しない」でもめることができる(注9)のは、ウイルスが致死的ではない証拠です。どちらでもよいので、疫学的見地を離れて社会的に議論の余地があるのだと思っています。

不織布マスク
写真=iStock.com/spukkato
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/spukkato

飛沫拡散防止にあまり意味のないマウスシールドや、透明板をテレビで多用しているのも同様です。何かしていることを示したいけれど、全員が防護着を着てしまうと誰が誰だかわからなくなって映像が作れません。

そもそも、それほど厳重に行う必要もないウイルス。やったふりの弱い防御で十分。そういう認識なのだと思います。

日本はこれから冬を迎えます。日々の暮らしのために、これから起きることを予想してみます。

専門家も含め、年末年始にかけて冬季に新型コロナとインフルエンザが猛威を振るうという予測が主流となっています。「従来型コロナは冬に突出して流行、「新型」も同様の傾向…研究論文」(注10)、「コロナ、秋・冬に感染者増加か インフル流行との重なり懸念」(注11)といったものです。

「フランスで新型コロナ再び急増、ICUがひっ迫の都市も」(注12)という報道に接すると、日本でも冬に急増する不安に包まれます。欧州のロックダウンの可能性をお聞きになった方もいらっしゃるでしょう。

けれども、私は両方のウイルスが流行しないのではないかと予測しています。感染症の流行は、たくさんの要素が絡み合って起きてきます。予想の一つとしてご参照いただきたいと思います。

■冬季オーストラリアのコロナ

アジアオセアニアは、世界の中でもコロナウイルスの被害が軽微な地域です(注13)。AFP通信の図をみるとよくわかります(注14)

インドは特殊で、ヒマラヤやカラコルムなどの山脈で中国と人々の移動が分断されてきたので季節性コロナウイルスの移動も少なかったのかもしれません。ウイルスの流行は、地政学的な側面を持ちます。今後、海外からの研究が待たれます。

季節が逆で、流行の中で先に冬になってくれた同じ傾向を持つオーストラリアと日本のコロナの状況を見てみましょう(図表1)。

worldometer corona Australia, Japan
worldometer corona Australia, Japan(画像=筆者作成)

半年おきの波の周期まで、なんとほぼ同じ流行形態です。この波形の並列は、ほとんど報道されずに、欧州のロックダウンばかり報道されています。

オーストラリアは、横軸の始まりの2月が夏で今が冬。日本は逆です。オーストラリアでは感染爆発は起きずに、冬の最中に収束しました。

少数が発症し回復を繰り返し重症者も少ない蔓延期に入ったものと思われます。蔓延期のフェーズチェンジについてはお書きし(注15)、その認識を元に最初のコラムを記しました(注16)。陽性者の激増に反し、死亡者増加は軽微だったことも指摘しました。

この周期で考えると、11月から2月ごろまでは「谷」の部分になるので流行しない時期になります。次の小さな山が来るとすれば、2021年3~4月になるのではないでしょうか。そしてオリンピックの夏頃は、世界的に流行は収束していると考えています。

■オーストラリアでインフルエンザは流行しなかった

図表2は、オーストラリア政府発表の2020年冬季のインフルエンザ流行の図です(注17)。これまでの5年を通して、最低レベルの流行になっています。

AUSTRALIAN INFLUENZASURVEILLANCE REPORT No. 11, 202024 August to 6 September2020
AUSTRALIAN INFLUENZASURVEILLANCE REPORT No. 11, 202024 August to 6 September2020

まとめるとこうなります。

☆新型コロナの流行は、アジアオセアニアでは軽微であり日本もその一つだった。
☆南半球で季節が逆のオーストラリアの新型コロナウイルスCOVID-19の流行パターンは日本と同じ形態だった。(図表1)
☆流行中に冬を越したオーストラリアでは、冬季の最中でも収束した。(図表1)
☆オーストラリアでは、冬になってもインフルエンザはほとんど流行しなかった。(図表2)
☆渡航制限から海外からのウイルス持ち込みは激減している

それが既に起きた観察されたファクトと現状です。映画『TENET』(注18)のように、時間の逆行はできません。

冬季は、カゼをひきやすい時期であることは間違いありません。ウイルスに対しては、ワクチンが最も有効です。念のため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、これから登場する新型コロナウイルスワクチン接種は必要だと考えています。

■アビガン急転直下で承認の見通し

内服治療薬のアビガン錠は、実際に薬剤を使って現場の治療経験を積んでいる日本集中治療医学会と日本救急医学会から推奨されていました(注19)。さすが治療をされている先生方は自粛一辺倒とは違うな、と思いました。

5カ月遅れの10月になりアビガンは、なんと急転直下で承認見通しが立ちました(注20)。治験無効の記事に対して、担当の先生ご本人がファクトをプレジデント誌のインタビューで答えています(注21)

既に米国では長期投与のトライアルがなされ、ロシアでは後発ジェネリック薬品が開発され薬局で用いられるような時期に(注22、注23)開発国の日本がやっと承認という事になりました。

多くの専門家の先生は、治療薬についてのコメントは控えていらっしゃるようでした。また各種薬剤の承認については、PCR検査の熱狂とは裏腹に応援も無く非常に淡泊だったと感じています。

過ぎてしまったことは仕方ありません。けれども国民の安心感への寄与を逃しただけでなく、国益の事を考えると残念でなりません。

■うがい、手洗い、マスクは続けていい

うがい、手洗い、マスクなどの習慣は、他のカゼの予防や喉を寒気から守るので当面続けるとよいと思います。

同時に、春先から続く自粛や警戒一辺倒の対策は、ウイルスの広まりや時間経過による人々の免疫の変容からも既にレガシーになりつつあると考えます。日本は、国際飛行場の検疫システムも拡充し人々の移動への準備が整ってきています(注24)。海外との数多くの人の移動に備える準備をしています。

積極的に迎え撃つ方向へ状況は確実に変化していることを感じます。

どんなスポーツでも、防御一方で得点しなければ勝てません。良くて引き分けですが、防御のみでは相手が得点することも多いでしょうから負けるだけです。それに、積極的に行動しなければ希望も見出せず滅入るだけです。

アジアでの流行と西欧は大きく違うことや、一足早く冬になったオーストラリアとの比較などの考察はお目にかかれていません。

冬季にオーストラリア同様、コロナもインフルも流行が小規模になるという予想は間違うかもしれません。でも、「そういう考えもあるんだ」と思考の多様性は担保することになります。

不用意な楽観主義は、被害をかえって大きくするだけだと思っています。けれども、厳重すぎる新型コロナウイルスの指定感染症の取り扱いを現実的なものに改変する必要があると思っています。それは、前回お書きした「社会的終焉」を加速することになると思います。来年は、大勢で演奏を楽しむ野外音楽を楽しみたいものです。

私は、皆が希望を持ち得点を重ねていく応援をしたいと考えています。

■English abstract

Globally, Fender guitars sales have reached a record high. However, in Japan, the music industry has been sluggish due to the SARS-CoV-2 epidemic and sales of musical instruments overall have been devastating.

Initially, the fatality rate of COVID-19 was incorrectly calculated as being higher than it actually was in Japan. The case fatality rate was erroneously estimated because the numbers of asymptomatic and infected patients were not recorded correctly. Accurately calculated, the rate (about 0.9%) is lower than in other countries, but in reality, it may be lower.

No technology has yet been developed to track the number of individuals with COVID-19 in entirety. Nevertheless, the pandemic has independently settled according to the laws of nature. Humans can only weakly affect the phenomenon caused by the law by any means.

The situation indicates that the Japanese tend to be excessively reluctant. The damage caused by COVID-19 was fortunately less extensive, and people can once again enjoy an active lifestyle. I was a guest on a Tokyo radio program with the famous musician Mr. Masataka Matsutoya to encourage and support people.

I predict that neither SARS-CoV-2 nor influenza will prevail in Japan during the winter season from 2020 to 2021 for the following reasons.

☆ The damage caused by the COVID-19 pandemic in Asia and Oceana, including China, is less extensive than western countries. Japan is one such country located in the Asia region.

☆ Although the seasons in Australia, which is located in the southern hemisphere, are in contrast to those of Japan, the pattern of the COVID-19 pandemic is similar in both countries (Figure1). In Australia Influenza is not prevalent either (Figure2).

☆ In Australia, the epidemic period passed during winter, which gradually converged contrary to expectations (Figure1).

☆ The transmission of the virus from overseas to Japan decreased due to the continued travel restrictions. This policy will be in place until winter.

I look forward to the day when people can get together and enjoy music again.

【参考文献】
1.Fender has sold more guitars in 2020 than any other year in its history”, By Richard Bienstock, Guiter World, 9 Sep 2020
(1.日本語記事「フェンダー、新型コロナウイルスのパンデミックによって過去最高の売上の見込み」、NME Japan9月11日)
2.エリック・クラプトンのすごいところ三行で教えろ『楽器レジェンドの“今北産業”』
3.「東京を封鎖しろ」なぜ日本人はこれほどコロナを恐れてしまうのか
4.Study shows how wind instruments vary for risk of virus transmission
5.「パンと見世物」
6.みんなの応援村 presents エー ル・ プラネット、松任谷正隆、小山薫堂、中井美穂 FM東京2020年9月26日
7.「第2波コロナ致死率『0.9%』大きく減る」(日本テレビ9月4)
8.Fatality rate of major virus outbreaks worldwide in the last 50 years as of 2020
9.「機内でのマスク拒否で降ろされた乗客、日本でも2人」CNN Japan 9月15日 
10.「従来型コロナは冬に突出して流行、「新型」も同様の傾向…研究論文」9月13日読売新聞
11.「コロナ、秋・冬に感染者増加か インフル流行との重なり懸念」、時事メディカル8月24日
12.「フランスで新型コロナ再び急増、ICUがひっ迫の都市も」CNN9月17日
13.「日本は日本のコロナを考えよう。過度の自粛は必要ない」6月25日
14.新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数 10月2日 AFP通信
15.「感染者ゼロを前提にすると、新型コロナは終わらない」9月9日
16.「日本のコロナウイルスは終わった。さあ旅にでよう」6月11日
17.Australian Influenza Surveillance Report No 11 - 24 August - 6 September 2020
18.TENET
19.コロナ治療薬5種、投与に学会指針 重症度別に 「効果、費用、副作用など考慮」毎日新聞 9月19日
20.アビガン審査、3週間で終了 西日本新聞 10月4日
21.「アビガンが『有効でない』とは言っていない」研究代表・土井洋平医師の独白120分笹井恵里子 9月17日(初出「プレジデント」2020年10月2日号)
22.FDA Approves Expansion of Phase 2 COVID-19 Trial to U.S. Long-Term Care Facilities, 08/27/2020
23.Coronavirus tracker: Avigan generics nab COVID-19 green light in Russia; HHS Secretary Alex Azar drove push to strip FDA of lab test oversight: report Sep 18, 2020
24.入国者検査、1日2万人に拡充へ TBSニュース10月3日

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大和田 潔(おおわだ・きよし)
医師
1965年生まれ、福島県立医科大学卒後、東京医科歯科大学神経内科にすすむ。厚労省の日本の医療システム研究に参加し救急病院に勤務の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。東京医科歯科大学臨床教授を経て、秋葉原駅クリニック院長(現職)。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、米国内科学会会員、医学博士。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)、共著に『のほほん解剖生理学』(永岡書店)などがある。

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(医師 大和田 潔)

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