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新型コロナを侮り続けるトランプ大統領には、落選してもらうしかない

プレジデントオンライン / 2020年10月7日 18時15分

退院しホワイトハウスに戻ってきたトランプ大統領=2020年10月5日 - 写真=Sipa USA/時事通信フォト

■「すぐに選挙遊説に戻る」と感染を選挙運動に利用

新型コロナウイルスに感染したアメリカのトランプ大統領が5日夕(日本時間6日朝)、ワシントン郊外にあるウォルター・リード軍医療センターから退院し、ホワイトハウスに戻った。入院から3日後の早期退院だった。ウイルスと戦う姿勢を支持者に示したいのだろうが、ウイルスを馬鹿にするとひどい目に遭う。

退院直前には、ツイッターで「すぐに選挙遊説に戻る」と11月の大統領選に向けて自らの健在さを強くアピールし、感染を選挙運動に利用していた。

トランプ氏は2日未明に感染を公表した後、2日夕に入院。入院前には高熱を出して血中の酸素濃度が低下し、酸素吸入を受けた。酸素濃度が下がったのは、肺の機能が落ちたからだろう。いわゆる新型コロナ特有のサイレント肺炎(沈黙の肺炎)を起こしつつあったのかもしれない。

■世界最高の治療が受けられるのは「地位と富」があるからだ

トランプ氏は74歳。感染で高齢者は病状を悪化させて命を落とす危険性がある。

現役の大統領を新型コロナの感染で死なせては、アメリカという国の威信にもかかわるから担当の医師団や側近たちは真剣だ。

これまでに重症患者に使用される抗炎症薬「デキサメタゾン」や抗ウイルス薬「レムデシビル」が投与されたほか、未承認の抗体薬も使われた。現在も専門医による治療が続けられている。公的医療保険のないアメリカでは個人が支払う医療費は高い。最高の地位と巨額な富のあるトランプ氏だからこそ、庶民には受けられない高額な治療が受診できるのである。トランプ氏自身が不死身なのではない。

■「アメリカを再び強い国家にしたい」も保身のためだ

トランプ氏は入院先のウォルター・リード軍医療センターの会議室で、ペンス副大統領らと電話会議する写真を公開した。護衛が付き添うなか、公用車に乗って外出し、集まった支持者に手を振るパフォーマンスも見せた。明らかに自らの新型コロナ感染を選挙戦の武器にしている。大統領選に対するトランプ氏の意気込みはすさまじい。

ツイッターでもこう訴えていた。

「私は新型コロナウイルスについて多くを学んだ。新型コロナに人生を支配させてはならない。恐れるな。あなたたちには最高の医療設備と薬がある。ウイルスに打ち勝てる。すぐにワクチンも実用化される」
「来年は株価が史上最高になる。私に投票してくれ」

本当だろか。ウイルスを侮っている。

トランプ氏は大領職という最高の名誉を手にし、それを手放そうとはしない。人間の欲望は際限がないといわれるが、トランプ氏を見ているとそれがよく分かる。「アメリカを再び強い国家にしたい」と訴えるが、すべて己のためではないのか。

■トランプ政権は新型コロナウイルスを侮っている

トランプ氏の退院で心配なのは、周囲に感染を広げる危険性があることだ。すでに大統領官邸のホワイトハウスでは10人以上が感染し、クラスター(集団感染)が発生している。

なぜ、このホワイトハウスクラスターが起きたのか。理由は簡単である。トランプ氏をはじめとする政権中枢が新型コロナウイルスを侮っているからだ。

ホワイトハウス
写真=iStock.com/vichie81
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vichie81

テレビニュースに映し出される彼らの姿を見ると、大半がマスクを着けていない。新型コロナウイルスは飛沫感染によって広がる。飛沫とは患者・感染者がくしゃみや咳で飛ばすしぶきのことで、このしぶきの中に大量のウイルスが含まれている。大声を上げたり、大きな声で歌ったりしても飛沫は広がる。それゆえ患者・感染者のマスク着用は感染防止に役立つ。

しかもホワイトハウスの面々は3密(密閉・密集・密接)の回避も怠っていた。トランプ政権の中枢が、マスクの着用の意義や3密回避の重要性を知らないわけはない。要はトランプ政権は新型コロナウイルスを軽く見て侮っているのだ。その頂点にいるが、トランプ氏である。

■「米政権中枢の集団感染 危機管理がずさん過ぎる」

10月7日付の毎日新聞の社説は「米政権中枢の集団感染 危機管理がずさん過ぎる」との見出しを掲げ、こう訴えている。

「とりわけ深刻なのは、米政治の中枢であるホワイトハウスで集団感染が発生したことだ」
「9月末の連邦最高裁判事の指名行事が発端となった。大統領の顧問や報道官、複数の共和党上院議員らの感染が確認された」
「マスクをせずに隣り合って会話したり、抱き合ったりする光景が見られたという。トランプ氏もマスクを外して参加していた」
「こうした危機感の欠如は、科学者の助言を聞かず、感染リスクに無頓着なトランプ氏の姿勢と無縁ではないだろう。後の簡易検査で陽性反応が出たにもかかわらず、それを隠した疑いもあるという」

集会でマスクを着けず、3密の回避も無視する。欧米人特有のハグ行為も行われた。感染が広がって当然だ。新型コロナを怖がりすぎてはいけないが、侮りすぎてはいけない。毎日社説が指摘するように危機管理がずさんすぎる。

■こんな人物が再選されるようならアメリカはおしまいだ

毎日社説は指摘する。

「大統領選の投票まで1カ月と迫る中での感染に、トランプ氏は焦りを覚えているようだ。15日に予定される第2回大統領選討論会にも出席する意欲を示している」
「体調がこのまま改善していけば、『コロナに打ち勝った』と訴え、支持拡大を図れると考えているのかもしれない」

「焦り」というよりも馬鹿なのだ。その馬鹿さ加減も世界一である。こんな人物が再選されるようならアメリカはおしまいだ。沙鴎一歩は世界をリードしてきた力強いアメリカに戻ってもらいたいと願う。そのためにはトランプ氏に落選してもらうしかない。

最後に毎日社説は書く。

「トランプ氏の体調はまだ万全ではない。主治医は『危機を完全に脱したわけではない』と警告する。体調が急激に悪化することがないとはいえない」
「そうなれば選挙は大混乱に陥るだろう。トランプ氏のまま戦うのかどうかを含めて、共和党は難しい選択を迫られる」
「政治の混迷を招かない危機管理が求められている」

賛成だ。トランプ氏はウイルスだけでなく、大統領選も侮っている。

■感染したこと自体は、非難されるべきではないが…

10月6日付の読売新聞の社説も毎日社説と同じく「トランプ氏感染 米政権の危機管理が甘すぎる」(見出し)と批判し、冒頭部分でこう指摘する。

「新型ウイルスには、誰もがかかりうる。感染したこと自体は、非難されるべきではない。だが、トランプ氏を始めとする政権中枢の認識の甘さと危機管理のまずさは指摘せざるを得ない」
「トランプ氏は国民に模範を示す立場にありながら、マスクを軽視する発言を繰り返していた。ホワイトハウスでは5月以降、職員らの感染が続いたにもかかわらず、社会的距離の確保やマスク着用などの規範が徹底されなかった」

マスクで100%防げるわけではないが、トランプ氏のようにマスクを軽んじるのは問題である。トランプ氏は大統領という重い職責をどう考えているのか。

読売社説はさらに指摘する。

「政権高官や上院議員、11月の大統領選を指揮するトランプ陣営の幹部ら各層に感染が広がっているのは、極めて深刻な状況だ」
「米国は感染者、死者共に世界最多を記録している。トランプ氏はウイルスが最初に蔓延した中国の責任を強調してきた。一方で、根拠なしに『米国での流行は終息する』とも述べていた。対中批判の説得力は弱まるのではないか」
「政権が優先すべきは、中枢での感染拡大の経緯を精査し、再発防止策を徹底することである。科学的根拠と専門家の助言に基づき、体制を立て直さねばならない」

■いまからでも遅くない。再び入院するべきだ

今後、トランプ政権はホワイトハウスクラスターをどうやって収束させるつもりなのか。周辺に感染させる可能性のあるトランプ氏がホワイトハウス内にいる以上、感染がさらに拡大していく危険性がある。退院などせずに軍の医療施設で治療を続けるべきだった。いまからでも遅くない。再び入院するべきだ。せめて周囲に感染させないようになるまでの2週間は、入院を続けるのが常識である。

最後に読売社説はこう訴える。

「大規模集会で熱狂的な支持を誇示するトランプ氏の手法は、見直しを迫られる。民主党候補のバイデン前副大統領は、感染症対策を最大の争点に位置付け、政権の責任追及に一段と力を入れよう」
「トランプ支持者と反対派の感情的対立の激化が懸念される。平静さを保ち、選挙を円滑に実施することが何よりも大切である」

民主主義国家において選挙はその民主主義を実現するための大きなよりどころである。大統領選を己の利益のためにしか考えていないトランプ大統領は落選して当然である。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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