フォント選びで時間をムダにしがちな人に教えたい「段取り」のワザ

プレジデントオンライン / 2020年10月23日 11時15分

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細かいことが気になりすぎて、仕事が進まない。そんなときはどうすればいいのか。精神科医の西脇俊二氏は「すべてが大事に思えて優先順位がつけられない人は、すべての段取りを書き出すところから始めるといい」と説く——。

※本稿は、西脇俊二『繊細な人が快適に暮らすための習慣』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■繊細な感性の持ち主ほど「段取り」が苦手

繊細だったり敏感だったり、「細かいことが気になる」性質の人からの相談が今、増えています。「仕事や家事がはかどらない」「わかっていても細かいことが気になって中断し、結局のびのびになってしまう」といった内容です。

精神科医をしている私自身も、そうした性質の持ち主ですから、悩む人の気持ちがよくわかります。本稿では、私が実践して効果の上がった方法を紹介します。

こうした悩みを改善するには、優先順位力が必要です。

敏感な人は日常生活において、さまざまな迷路に入り込みます。たとえば、仕事で企画書を書くとき。「まず骨子を決めたほうがいいのはわかっているのに、文字のフォントや置き方のデザインを工夫してしまう」といったケース。

家でも、来客の前に「玄関がキレイかどうかチェックしなきゃ」と思いながら、絶対に見られるはずのないキッチンの壁の油ハネを一生懸命拭いてしまったりします。

優先順位が頭ではわかっていても、その通りに行動できません。

これらの原因は「完璧主義」です。タスクを構成するすべての部分が大事に見えて、細部まで手をかけずにいられないのです。

しかし、完璧主義は、必ずしも「完璧に仕上がる」ことにはつながりません。細部に凝りすぎて肝心な部分が抜けた、時間がかかって期限を守れなかった、などの失敗も起こりえます。

■すべての段取りを「細かく書き出す」ことで解決できる

対策としては、「細かく段取りを書く」ことが有効です。

「細部に凝りすぎるのが問題なのに、細かく書いて大丈夫?」という心配は無用です。書くことで、「必要な細部」と「不必要な細部」を選別できるからです。

西脇俊二『繊細な人が快適に暮らすための習慣』(KADOKAWA)
西脇俊二『繊細な人が快適に暮らすための習慣』(KADOKAWA)

この練習のベースになっているのは、発達障害の子供たちに行う「課題分析」というアプローチです。ひとつの作業の手順を、限りなく細分化するという方法です。

たとえば「冷蔵庫から麦茶を持ってきて」ではなく、「冷蔵庫の前に行く」「冷蔵庫のとびらの取手を持つ」「前に引く」……と、細かくガイドするのです。

これを参考に、作業着手前に5分間、手順シナリオをつくってみましょう。

たとえば企画書を書く際のシナリオなら、企画書作成に必要な作業を一つひとつ書き出してみます。

・企画書のタイトルを決める
・企画の概要をまとめる
・企画がいいものであるとする根拠をまとめる
・参考になる事例をまとめる
・フォーマットや文字サイズを整えて企画書に落とし込む

こうしてみると、作成開始直後にタイトルのサイズやフォントに悩むことなく、まずはA4用紙1枚にこれらの内容をまとめてみようという気になりませんか?

内容がまとめられたら、その後で、体裁を整えれば完成です。絵を描く際にまずはラフスケッチをするように、何をするにも作業前の5分でシナリオを作ってみるだけで、実際の作業がぐんとラクになります。

この習慣は、敏感な方ならではの「緊張」を解く効果もあります。心静かにシナリオを書くと、作業開始後も平静をキープしやすく、「全部大事に見えてしまう現象」を予防でき、余分な作業に集中し始めなくて済みます。

■「こんなことまで書かなくても」が後で助けになる

手順を書き出すときの「細かさのレベル」は、あなたの感覚で決めて構いません。ただし、自分が思うよりも心持ち細かくするのがコツです。

「こんなに当たり前のことまで書かなくても」と思うレベルまで書いておけば、調子が悪いときの助けになるからです。

調子の良いときは当たり前にできることでも、ストレスが溜まると心乱れて、「次、どうするんだっけ?」となりがちです。

細かいガイドはそんなときのセーフティネットになります。書かれていることにただただ従っていれば、いつしか課題をクリアできるというわけです。

■達成感を感じられる「スモールステップ」のすすめ

この手法の基盤にあるのは、「スモールステップ」もしくは「ベビーステップ」という考え方です。ある目標に到達するためにいくつかの段階を設定するとして、それが「3段」ならば段差はかなり大きく、上るのは大変でしょう。

しかし5段ならば比較的容易ですし、10段ならもっと楽です。段差の小さい段をたくさんつくればつくるほど、スムーズに目標を達成できるのです。

敏感さを抱える人にとって、スモールステップは欠かせない知恵です。ストレスを軽くするための基本姿勢、といっても良いでしょう。

こうした「じっくり鍛える系」のノウハウの共通のコツは、一段一段を思い切り低くすることです。

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写真=iStock.com/Jakraphong Pongpotganatam
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「(実行しなくていいから)計画を書くだけ書こう」「(企画書を書き上げなくていいから)1行目だけ書こう」という目標設定なら、簡単に達成できますね。

この小さな達成を、何度も体験することが大切です。HSPといわれる繊細な方々はとくに、自分を過小評価する傾向がありますが、スモールステップは、そんな心のクセをも少しずつ修正してくれるでしょう。

■人から見れば「どうでもいいこと」に時間をかけるクセ

優先順位力を鍛え完璧主義を緩和する「細かいシナリオ」によって、日々の仕事を効率化できれば、ムダな動きが減って、時短効果もアップします。疲れも溜まりにくくなるでしょう。

とはいえ、その習慣が根付くまでには時間がかかります。スモールステップ式は、ラクである代わりに、完全に身に付くまでが長いのです。

ですから、1カ月や2カ月で変われるなどという期待は禁物です。逆に、「なかなか変わらない期間」を利用するのがおすすめです。

今のうちに、自分がよく行うムダ作業の検証をしましょう。といっても、目的は「ムダ削減」ではありません。「このムダ、あってもいいんじゃない?」という視点で考えるのです。

繊細だったり敏感だったりする性質をもつ人々は、美しさにこだわりを持つ傾向があります。そのこだわりは多くの場合、第三者から「そんなのどっちでもいいのに」と言われそうなポイントです。たとえば文書を作成していて、「改行」の位置を気にする、などです。

(一文字だけはみ出して改行、惜しい……)
(文字ビッシリで余白が少なすぎる、美しくない……)

そんなことを考えて、内容には問題ないのに数文字足したり、減らしたり。

上司が見たら、「そこはどうでもいいから、早く出して!」と言いそうです。

■ムダ作業をする自分に胸を張ってOKを出す

しかし、これは本当にムダなのでしょうか。心細やかな人は、ムダ作業を行うとき、同時にそれを気にします。「私、不必要なことをしてますよね、時間かかってますよね、ごめんなさい」と、心の中で誰かに謝っています。

これは「時間のムダ」という実際面以上に、大きなデメリットです。気にしてクヨクヨすることこそが、繊細な人々にとってもっとも強いストレスになるからです。

ならば、いっそ胸を張ってムダ作業をしたほうが得策です。

「改行の位置がキレイだと気持ちがいい」「文書だって見た目が大切!」という立派な理由があるのですから、きちんと意義はあります。

ちなみに私にはしばしば手を洗うクセがありますが、「手を洗うとサッパリする」という理由があるので、特段おかしいとも、なおすべきだとも思いません。「気持ちがスッキリ落ち着く」というプラスの感覚のほうに目を向けて、自分にOKを出しましょう。

■「必要なムダ」にかかる時間を織り込もう

「それじゃ、時間削減ができないのでは?」という心配はいりません。

クヨクヨと気にする「ムダなストレス」を削減する効果は意外に大きなものです。とくに繊細な人、敏感な人はこのストレスにかなりの時間を食われています。

「自分はまた余計なことをして……」などと考えず、それも含めて自分の仕事と捉えられれば、頭も手もスムーズに動くようになるので、結果的に仕事のスピードも上がります。

計画を立てるときは、そのこだわりにかかる時間も含めて考えればいいだけです。

上司を務める人にとっては、こうした繊細なタイプ、些細な点にこだわってはかどらないタイプの人が部下にいると、つい「そんなところはどうでもいいから、早くしろ」と言ってしまいたくなるかもしれません。

しかし、それをグッとこらえて「作業する前に手順をできるだけ細かく書き出すこと」、「こだわりたいところにこだわるのは構わないから、それにかかる時間を織り込んで計画を立てること」をアドバイスしてみるといいと思います。

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西脇 俊二(にしわき・しゅんじ)
精神科医
弘前大学医学部卒業。2009年よりハタイクリニック院長。2008年より金沢大学 薬学部 非常勤講師、2010年よりEuropean University Viadrina非常勤講師も務める。自身もアスペルガーであり、その苦労を乗り越えた経験を生かした著作も多い。テレビ出演のほか、ドラマ『僕の歩く道』『相棒』『グッド・ドクター』、映画『ATARU』等の医療監修でも活躍。

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(精神科医 西脇 俊二)

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