受験のプロが「コロナ禍では大学付属校を受けるべき」と断言する理由
プレジデントオンライン / 2020年10月24日 11時15分
※本稿は、『プレジデントfamily2020年秋号』の記事の一部を再編集したものです。
■家庭の力が例年以上に問われる
「今年は特に新型コロナウイルスの影響で、家庭ごとの学習の進捗(しんちょく)の差がかなり大きいです。わが子の現状を正確に把握し、苦手な箇所を特定して、いかに効率的に学習させるか、家庭の力が例年以上に試されます」
個別指導塾TESTEA(テスティー)の塾長、繁田和貴氏はこう語る。「多くの塾は個々の生徒の苦手を把握し、適切にアドバイスできているとは言えません」
知識の抜け漏れを残したままカリキュラムを進めていっても、志望校に合格する力はつかないと繁田氏は言う。「自分の課題を探し、対策する作業は、各家庭でやるしかないのです」
繁田氏は秋以降の学習について、次のように提案する。
「本番までに、不正解を正解に変える作業をどれだけ数多く、効率的に行えるかが勝負の分かれ目です。そこで重要なポイントが二つあります。一つ目が“合格に必要な問題だけに学習を絞ること”。もう一つは、“学習プロセスの効率化”です」
■頻出単元の苦手克服が最優先
学習の絞り込みについては、本番で出題されそうなもののうち、現在解けない問題に特化することが重要だという。
「まず、過去問題集で頻出単元をチェックし、なかなか点数が稼げなかった単元が最優先です。次に、模試の結果や塾のテストで正答率が低かったりした箇所を集中的に解いていくことで、得点力につなげましょう」
解けない問題であっても、合否に関係のない問題には時間を割く必要がないそうだ。「正答率が極端に低く、どの子も手が出ないような、いわゆる“捨て問”に時間を使うのは、費用対効果が悪い。どの問題が捨て問にあたるのかは、塾の先生などプロの意見を参考にするとよいでしょう」
■不正解の解き直しは、本人に解説させよう
学習プロセスの効率化については、問題を解いた後の対応が重要になる。「問題を解いて不正解だった場合、解答をノートに写し直して終わりにしている子が意外と多い。これでは学力は伸びません」
雑に問題を解くのではなく、一問一問確実に点を取れるように仕上げることを意識すべきだと繁田氏は強調する。
「問題を解き、解説を読んで理解する。ここまででは不十分です。子供は解説を読んで納得しているつもりでも、再度解いて解答を再現できるレベルまで理解できているかは怪しいことが多い。インプットだけでなく、アウトプットも行い、しっかり理解しているか、次に出題されたときに自力で解けるレベルになっているかを確認しましょう」
具体的な方法としては、ノートやホワイトボードを渡し、「どうやって解いたかを教えて」と言って再現させる方法が有効だそうだ。
「理解が定着しているかは、子供自身に説明させればわかります。解説の内容を子供が自分の言葉で説明できていれOKです。単に問題を再度解かせるだけでは、式の丸暗記で乗り切ってしまう可能性があります。ただ、他人に説明をするとなると、ごまかしが利きません」
無事定着したのを確認し、さらに時間をおいて、再度解き直しをさせることで本番まで続く記憶になるという。
「効率的に記憶を定着させるには、間隔を少しずつ広げながら復習するのがおすすめです。1週間以内に1回、1カ月後にもう1回というのが、この時期の基本パターンです。本番までにいつ、何回復習するか意識して学習計画を立てましょう」
■併願校選びに失敗すると「合格ゼロ」という事態も
さらに効率的な勉強をするために、「今年は第2志望以下の併願校選びが最重要です」と語るのは、スタジオキャンパスの算数講師、内田実人氏だ。「併願校選びに失敗すると、合格が一つも取れないという事態になりかねない」と警鐘を鳴らす。
「例年であれば、夏までに全単元の学習を総復習し、9月以降に第1志望、10月頃から第2志望、第3志望を決めていきます」。しかし、今年は多くの家庭で、学力の仕上がりが1カ月以上遅れているのが現状だそうだ。
「どの家庭も、まだまだやり直したい単元が多いのではないでしょうか。ただ、やり残した単元に気を取られてしまうと、過去問対策の時間が不足してしまいます」
時間不足のあおりをもっとも受けそうなのが、第2志望以下の併願校対策の時間だという。
「併願校対策を後回しにした結果、偏差値的には十分狙える学校なのに不合格ということは十分ありえます。特に今年は出願傾向も見えづらく、倍率や難易度も変動する可能性があるため、第2志望校不合格の危険性はかなり高いと言えます。また、毎年定番の併願パターンや模試による合否の読みも、今年は役に立たない可能性があります」
■偏差値ではなく出題傾向で選ぼう
確実に合格を手に入れるために内田氏は二つのことを推奨する。
「一つは第1志望校に似た出題傾向の学校を第2、第3志望に据えることです。これによって、志望校対策を最大限効率化できます。偏差値ではなく、問題の傾向が似ているかどうかで選びましょう」
もう一つは、スタンダードな問題が多い学校を選ぶことだ。
「青山学院、明大付属中野、立教池袋などの大学付属校や吉祥女子、栄東といった学校は、出題内容が一般的な塾の模試や通常授業で扱う問題と似ています。つまり、塾での演習がそのまま志望校対策につながるのです。志望校対策の時間が節約できるため、その分、第1志望校の対策に時間を充てやすくなります」
もし、第1志望校、第2志望校ともに独自性が高く、出題傾向の異なる学校を受験する場合には、注意が必要だ。
「開成と渋幕、桜蔭と渋渋など上位校受験者に多いのがこのパターンです。出題傾向に特徴のある学校を複数受験する場合、学校ごとに対策が必要になります。正直、今年は避けたほうがいいでしょう。個々の学校への対策が不十分だと、共倒れになってしまう危険性が高いからです。どうしてもという場合は、出題傾向に癖のない第3志望校を早めに探して、確実に合格を取れるようにしておきましょう」
■あと3カ月でも子供は大きく伸びる
一方で、中堅校を受験する子の場合、多くの学校はスタンダードな問題が中心だ。その場合は、やり残した単元を多数抱えている子でも、早めに過去問に取り掛かったほうがいいという。
「これらの学校を受験する子は、過去問対策をすることが、やり残した単元の克服にもつながります。早めに過去問に着手し、志望校合格に必要となる苦手単元を優先して学習しましょう。苦手な単元については、新しいテキストに手を出さず、塾のテキストを活用してください。なかなか点が取れるようにならない単元は、5年生のテキストを使うことも有効です」
また、中堅校の場合、大問1は計算問題、大問2は小問集合といった構成も前年を踏襲することが多い。
「問題構成に変化が少ないため、どの問題に時間をかけるか、どの問題を飛ばすかといったテクニックも、練習通りいきやすいですね。過去問演習の際には、解く順番などを意識して解きましょう」
2月までの週末の数を数えると、過去問に取り組める日数は意外と少ない。時間が足りない場合は、不要なオプション講座はやめることも選択肢に入れたほうがいいそうだ。
「本番の得点につながるのかを常に考えてください。時間を有効に活用すれば、あと3カ月でも子供は大きく伸びるはずです」
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フリーランスライター
京都市出身。東京大学経済学部卒業後、国際電信電話(現KDDI)に入社。法人営業、サービス企画等に携わった後、2007年に夫の留学を機に家族で渡米。帰国後、フリーランスライターとして、富士フイルム代表取締役会長CEOの古森重隆氏、聖路加国際病院名誉院長の故・日野原重明氏、政策研究大学院大学前学長の白石隆氏、灘・開成・麻布・武蔵・渋谷教育学園・豊島岡女子学園・女子学院各校の校長など、ビジネス、政治、アカデミア・教育のトップリーダーのインタビューを数多く手掛ける。一男一女の子育て経験を活かしつつ、現在は教育分野を中心に“プレジデントFamily”“Resemom(リセマム)”“ダイヤモンドオンライン”“NewsPicks”など様々なメディアで執筆活動を続けている。2020年6月発売の『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は、15万部のベストセラーとなる。
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(フリーランスライター 加藤 紀子)
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