40年ぶり制度改正! イマドキ相続で仲良しだった兄弟と骨肉の争いになるポイントはどこか

プレジデントオンライン / 2020年11月14日 6時15分

そろそろ相続のことを考えなければと思っているけど、家族で話題にするのは難しい……。知っておきたい相続の基礎やよくあるトラブルと解決方法を、まずは予備知識として頭に入れておきましょう!

■財産が少ないからこそ、もめごとに発展!

「うちは家族関係が円満だから大丈夫」と思っていても、いざとなるともめるのが相続というもの。

私たちの事務所に相談に来られる方たちの中では、だんとつに多いのが“兄弟姉妹”での争い。たとえ仲良く育っても、それぞれ独立した世帯になると価値観が変わってくるのです。もめる理由では“それぞれの主張が対立する”“一部の相続人が一方的に話を進めている”など相続人同士のコミュニケーション不足が顕著。お互いが譲歩できずに話がまとまらないケースも多くあります。身近な相続人が財産を開示しないのも、もめごとの原因に。

財産が多いからもめると思いがちですが、実はその逆。財産がそんなに多くないから、みんなが満足いくように分けることができず、もめるのです。

また、分けにくい財産の筆頭は、家や土地といった不動産。たとえば相続人の1人が亡くなった親と同居していて、財産は家だけで預貯金はほとんどないというのはよくあるケースです。預貯金が残っていなければ、家を相続する人が他の相続人にお金を払うことになりますが、ここがなかなかスムーズにいかない。親と同居していた人は「親の面倒を見たから家はほしい」、同居していなかった人は「家賃を払っていないのだからお金は分けてほしい」などと、双方に主張の食い違いがあることが多いからです。

いざ相続となったときに争いごとが起こらないようにするには、親が元気なうちから、相続は家族の問題として情報を共有し、コミュニケーションを取ることが大切です。

そして、最も有効なのは遺言書。亡くなった人の遺志がはっきりと残っていれば、それが一番の説得材料となり、相続人同士の余計な争いに発展しにくいからです。

ただし遺言書を作成するときは、作ることやその内容を相続人全員に知らせてオープンにしておくことをおすすめします。そうしないと、遺言書の内容が特定の相続人に偏る恐れがあるからです。

相続トラブル
イラスト=ウメムラノリミチ、以下すべて同じ
相続トラブルよくあるケース

■妹がこっそり生前贈与を受けていた! 留学費用も出してもらっているのに法定相続分どおりなのは納得いかない

【相談者】M子さん・会社員 【相続人】長女(M子さん)、次女
【財産】家、預貯金

亡き父の相続税の申告の際に、5年前に妹が家を建てるときに1000万円の援助を受けていたことが判明。妹は学生時代に留学費用も出してもらっている。これでも平等に分けなきゃいけないの?

きょうだいの1人に贈与した財産があるのに、それを全員に知らせずあとでもめるパターンです。この場合、M子さんとしては隠されていたのは許せないですし、他にもあるかもと疑心暗鬼になっていました。もともと妹さんは留学費用も親に出してもらっていて、昔から妹ばかりひいきされていたというM子さんのうっぷんが、ついに相続で噴き出したわけです。

やはり贈与はオープンにし、公平にしておく。そして相続時にバランスを取るような遺言書を用意しておくべきでしょう。結局、M子さんと妹さんは調停にすすみ、妹への生前贈与1000万円を財産に加算して遺産分割されましたが、他の贈与は特定されず不問となりました。

ちなみに民法改正で、遺留分の計算の対象になる生前贈与は、相続発生時からさかのぼって原則10年以内のものと限定されたため、たとえ遺言書に不満があっても、何十年も前の留学費用などは認められなくなりました。

▼遺留分制度が見直しに
遺留分とは、遺言書があっても相続人が最低限取得できる相続分のこと。過去の贈与(特別受益)をどこまで含めるか決まっていなかったため、裁判の際に争点になっていた。2019年7月からは相続発生時からさかのぼって原則10年以内のものに限定された。また、相続人が自身で行使する“遺留分減殺請求”の対象は不動産や株式などだったが、これもトラブルのもとに。改正後は現金での支払いに限定され、呼称も“遺留分侵害額請求”に変更。

■母親と同居していた姉が、亡き親の財産を教えてくれない!

【相談者】S江さん・会社員 【相続人】長女、次女(S江さん)
【財産】家、預貯金

1人暮らしの母を同居介護していた姉が通帳もすべて管理していました。母が亡くなったあとに通帳を見せてほしいと言っても「介護で使い果たしたから残っていない」の一点張り。きっと隠している財産があるはず。
ムンクの叫び風のイラスト

身近な人が財産を開示しないために、もめごとに発展するケースです。高齢の親と同居していたお姉さんが、介護費用を含めた預貯金を管理し、親が亡くなっても妹のS江さんに通帳を見せない。S江さんからすると当然、見せてもらえるものであって、残っている預金があれば、自分にも分けてもらいたいと思うわけです。

相続人なら、被相続人が亡くなったことを証明すれば、銀行の取引明細は入手できますので、不信感がつのったS江さんはすべて調べあげました。すると、預金が1000万円ぐらい残っていたのです。結果的に、預金は全部S江さんに渡り、お姉さんは自宅をもらうことに。

この場合、お母さんの介護が始まったときから、預金の明細を姉妹で共有しておくべきでした。S江さんはお姉さんに介護を任せっぱなしにするのではなく、実家にも定期的に顔を出すなどしてコミュニケーションを取り、支出を知らせてもらっておけば、疑心暗鬼にならずにすんだでしょうね。

■家族で親と同居。父の亡き後、弟の要求が容赦ない!

【相談者】Y子さん・フリーランス 【相続人】長女(Y子さん)、長男(弟)
【財産】家、預貯金

1人暮らしの父の面倒を見るために、夫と一緒に実家に同居。父が亡き後、私はそのまま家をもらって住み続けるつもりでしたが、別居している弟から「家は譲るので時価評価した分の金額がほしい」としつこく要求されています。

親と同居している人は家をもらいたい、同居していない人はお金を多くもらいたいという、よくある事例です。この弟さんのように知識があって、家を売らないなら路線価よりも高い時価で払ってほしいという人も少なくありません。

仮に「不動産は長女に」という遺言書があれば、不動産の所有はY子さんに確定、弟さんが相続するのは、現金の法定相続分(2分の1)と、遺留分(家の4分の1)のみでした。しかし遺言書がなかったばかりに、家も遺産分割の対象。Y子さんが家をもらうのであれば、時価の半分を弟さんに渡さなければいけません。

お父さんがY子さんに生前贈与する手もありますが、贈与税や登録免許税など、余計な費用がかかります。相続まで待てばこうした費用もかかりませんから、やはり遺言書で指定しておくのが理想なのです。

結局、この姉弟は調停に。家庭裁判所は時価がベースになりますから、Y子さんが弟さんの主張どおり、時価評価でお金を支払い決着しました。

▼遺言書の用意の仕方
1.自筆証書遺言
本人が手書きで作成する(財産目録はパソコン可)。保管は本人だが、法務局で保管も可能。家庭裁判所の検認が必要だが、法務局に預ければ検認は不要。
2.公正証書遺言
公証役場で公証人が作成する。原本は公証役場、正本は本人が保管する。作成手数料がかかるが、家庭裁判所の検認が不要なのはメリット。
3.秘密証書遺言
自分で書いた遺言書を公証役場に持って行き、本人のものであることを明確にして作成する。保管は本人。家庭裁判所で検認手続きが必要。

■父の財産が1億円以上! 相続税を減らすためにプランニング

【相談者】E美さん・会社員 【相続人】長女(E美さん)、長男(弟)
【財産】家、預貯金、土地

数年前に母は他界し、父は老人ホームに。父の財産は、今は空き家の実家、駐車場などいくつかの土地、預貯金などで1億5000万円。計算すると相続税は1000万円以上! このままだと私たちの持ち出しになるかも……!?

E美さんの家のように財産がたくさんあると、生前対策をしなければ将来、多額の相続税を支払うことになります。相続対策で知っておきたいのは、現金は持っていても課税評価は額面のままということ。しかし家や土地は賃貸にすれば「小規模宅地等の特例」が使えて課税評価がぐんと下がります。ですから相続税を減らしたいなら、現金で不動産を買って貸し、すでに持っている空き家や空き地は売却など資産組み替えが必要なのです。

そこで、実家は貸し出すことを提案しました。また駐車場も空き地ですから固定資産税が高い。建物を建てると6分の1に下がりますので、駐車場や未利用の土地はアパートを建てるか、売却して別の不動産を買うことを検討してもらいました。さらに残った現金で、生命保険に加入すれば、相続税はゼロに。結局、E美さんは実家を貸し出し、土地は売却して新たに不動産を購入。生命保険にも加入し、相続対策に間に合いました。

▼主な相続税の特例
「小規模宅地等の特例」
用途や面積など一定の要件を満たせば、事業用や賃貸用、居住用の土地の評価額を引き下げることができる。
「配偶者の税額の軽減」
被相続人の配偶者の課税価格が1億6000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までなら配偶者に相続税がかからない。
「事業承継税制」
会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について相続税の納税が猶予される。
相続税は、どれぐらいかかる?

■夫と義母を介護してみとりました。何もしていない義妹夫婦と平等に財産を分けるなんてありえない

【相談者】A子さん・会社員 【相続人】長男(A子さんの夫)、長女(夫の妹)
【財産】家、預貯金

夫の母と暮らして夫婦で介護。義母を病院などに連れていくのは私の役目。仕事を休んで時間を工面しました。一方、夫の妹夫婦はたまに顔を出すだけ。それで財産を平等に分けるっておかしいですよね。

夫の親の介護をしても、夫の妻は相続人ではないので、話し合いのテーブルにもつけず、感謝の言葉もないという話はよく聞きます。

A子さんもそうです。夫の妹さん夫婦は何も介護を手伝っていないのに、法定相続分どおりに分けるのはおかしいと思っています。

こういった問題を解決するために、2019年7月から相続人以外の親族が無償で介護や看護をしたら“特別寄与料”として金銭の支払いが請求できるようになりました。そこでA子さんは、夫とともに相続の話し合いに参加し、介護にかかった時間や費用をつけた介護ノートを見せながら、この貢献分はほしいという希望を伝えました。そうすると最初は介護のことは考慮せず法定相続分をもらおうとしていた妹さん夫婦も、A子さんの働きに納得。結果的にA子さん夫婦は法定相続分に加えて特別寄与料ももらえることができました。A子さんだけでなく、A子さんの夫もしっかりと主張したことが功を奏したようです。

▼スムーズに特別寄与料を請求するために
特別寄与料として請求できるのは療養看護をした分だけ。仮に通院で仕事を休んだら、その分を時間換算で払うものなので、たとえ財産がたくさんあっても、相続人1人分とはいかない額なのだ。特別寄与料をきちんともらうためには、貢献度がわかる介護ノートや介護アプリで、日付入りの記録を残して共有しておくのがおすすめ。薬代やおむつ代、交通費などの出費も記録しておくと、使い込みの疑いをかけられずにすむ。
【特別寄与料の計算例】
特別寄与料は「介護報酬基準額×介護日数×裁量的割合0.7~0.8」で算出される。
(例:要介護3で2年介護の場合)
5840円×730日(2年)×0.7=298万4240円

■二世帯住宅で親が亡くなり姉1人に。売りたいのに応じてくれない

【相談者】N美さん・公務員 【相続人】長女、次女(N美さん)
【財産】家

20年前に二世帯住宅を建て、1階に母と独身の姉、2階に私たち家族が住んでいました。母が他界したので、家の名義は姉と私に。子どもたちも巣立ったので、家を売って住み替えたいけれど、姉が頑として応じない……。

このケースのように共有名義で二世帯住宅に住んでいて、相続のときに困るケースは少なくありません。N美さんのように家を売りたくても、お姉さんが応じなければ、売るに売れません。

そもそも二世帯住宅は、1つの土地に1つの建物が立っているため、二世帯住宅という形でなければ売れません。そこが共有名義になっていたら当然、名義人全員の承諾が必要です。N美さん夫婦は、お姉さんの分を買い取ってもいいから何とかしたいと思っていますが、お姉さんは今の家が気に入っていて住み続けたいとゆずらないので、深刻な対立になっています。

こんなふうに二世帯住宅を共有名義にすると、売却したくても足並みがそろわないので、共有名義は避けたほうが無難。このままお姉さんが結婚せずに亡くなったらN美さんが相続できますが、それも先の話。今住み替えたいなら、自分たちの住んでいる部分だけを貸すしかないでしょうね。

■親が80代になって認知症気味。もっと早く財産整理をするべきだった!

【相談者】K里さん・派遣社員 【相続人】長女(K里さん)、長男(弟)
【財産】家、預貯金

そろそろ実家の財産を整理しなければ、と思っているうちに、親にもの忘れや理解力の低下など認知症のサインが。どうにか財産を整理して遺言書も作ったけれど、もっと早く取り掛かれば、こんなに苦労せずにすんだかも。

認知症と診断されると、相続人は対策ができなくなります。本人の判断能力が低下し、法定後見人の申請を家庭裁判所に出すと、弁護士など第三者が選任されることになります。通帳も預けてしまい、本人の介護のための出費しかできなくなるのです。

K里さんのように、親が認知症と診断される前に、財産の詳細を教えてもらったり、分け方の案を決めて遺言書を作成しておいたりすることが大切です。認知症の診断前であれば、公証役場で意思確認やサインもできる方がほとんどですので遺言書が作れます。同時に家族の1人を任意後見人に指定してもらい、その人が財産を管理する契約をしておくことがおすすめです。財産が多いときは、その管理を家族間で行う民事信託を活用することも考えておきましょう。

K里さんが言うように、実家の財産整理は早いほど楽。その際は1人でしないで、兄弟姉妹で一緒に行うか、役割分担して情報共有するのが重要なポイントです。

▼親の財産整理の進め方
親と同居していないなら、親が80代に入ったら実家を片付けて、財産を確認しておきましょう。財産の内容は、項目をチェック。不動産なら固定資産税の納付書、預貯金は通帳、株式は証券会社からの通知があればわかります。
ここをチェック!
・不動産
・預貯金
・株式
・投資信託
・生命保険
・金地金
・自家用車、美術品等の家庭用財産
・ゴルフ会員権
・負債

■親が離婚して父が再婚。交流がないばっかりに財産はもらえず

【相談者】T子さん・会社員 【相続人】長女(T子さん)、義母、義きょうだい1人
【財産】家、預貯金

10代の頃に両親が離婚し、父は再婚。ほとんど交流はなかったけれど、後妻との間に子どもが1人いたそうです。でも父が亡くなったときは、財産のことは全く知らされずうやむやに。もっと主張すればもらえた!?

離婚、再婚は当たり前の時代。T子さんのように離婚したお父さんが再婚して、後妻との間に子どもができても、T子さんは後妻の子どもと立場は同じ相続人です。しかし、夫が亡きあと、後妻が先妻の子に財産を教えない、何も渡さないなどして、T子さんのようにうやむやにされることはざら。特にしっかりしている後妻だと、生前に自分たちに有利な遺言書を作っていたり、生前贈与でほとんど後妻の財産になっていたり、ということも起こりえます。そもそも遺言書の存在すら知らされず、それで終わることもあります。

そうならないためにも、ふだんから、親と交流を持っておくことが大切です。お父さんと話をして、生前贈与をしてもらっておく、あるいは遺言書で決めてもらえれば安心でした。ただし遺言書があっても、亡くなるまでに資産がなくなり、結果もらえないことも。できれば生前にもらっておいたほうがスッキリするし、後妻の感情にもさわらなくてベターですね。

----------

曽根 恵子(そね・けいこ)
相続実務士
夢相続代表取締役。公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士。出版社勤務を経て、1987年に独立。これまで1万4600件以上の相続相談に対処してきた。著書に『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本 '19~'20年版』(成美堂出版)など。

----------

(相続実務士 曽根 恵子 構成=池田純子 イラスト=ウメムラノリミチ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング