「タワマン購入者の9割は儲かった」残された選択肢は"マイナー路線"だ
プレジデントオンライン / 2020年11月6日 11時15分
■持ち家は値上がりするが、払った家賃は戻って来ない
タワーマンションを買った人は9割以上が儲かっている。資産性の意味で鉄板商品だ。しかし、都心のタワーマンションは非常に高く、買える人は少なくなった。これを買えないからと言って、思考を止めてはいけない。次に有利な選択肢もあるし、取ってはいけない選択肢もある。その整理がつけば、あとは行動あるのみになる。
持ち家購入の理由は、「家賃がもったいない」と「持ち家は資産になるから」が現在の2大理由になっている。まさにその通りであり、この10年で持ち家と賃貸の資産の差額は平均3400万円になっている。持ち家は値上がりし、払った家賃はもう戻って来ないからだ。
■持ち家と賃貸のこの10年間のお財布事情
持ち家と賃貸の資産状況を比較してみよう。
平均10年経過したマンション購入者の値上がり益は平均600万円で、購入価格6000万円を10%上回っている。これに対して、同じマンションに賃貸で住んでいたら、家賃は物件価格の4%相当なので、6000万円の4%、年間240万円が10年で2400万円支払うことになる。つまり、持ち家が+600万円、賃貸が-2400万円なので、その差は3000万円となる。
これに加えて、住宅ローン控除というローン残高の1%を所得税還付する軽減税制がある。対象となる残高は上限4000万円のため、年間40万円、10年間で400万円のキャッシュがもらえる。これを加えて、3400万円の差になる。これが持ち家と賃貸のこの10年間のお財布事情である。
相場価格の変動がなくても、その結果は持ち家に軍配が上がる。1年の平均下落率は2%で家賃の4%より低い。10年で20%下落は40%の賃料を払うことの半額で済む。
■「まずは賃貸」という選択肢はない
日本人はローンを借りることに対して消極的だが、今の住宅ローンは「借り得」な状態にある。マイホームの住宅ローン金利はネット銀行なら、0.5%を切る水準にある。そして、先述の住宅ローン控除で、ローン残高の1%は所得税還付できる。金利が0.5%で、1%の税還付をすると、0.5%のマイナス金利になる。住宅ローンを借りると、金利を払うどころかお金がもらえるのが実態なのだ。
話を簡素化するために購入価格=ローン借入額にすると、マンションの利回り4%(賃料を払うなら、物件価格の4%相当になるから)に0.5%のマイナス金利なので、マイホームは実質4.5%の利回りの物件になるということだ。
これだけ金利が低いと、
もし、物件価格が値上がりしないにしても、価格が下がらなければ、10年で27%の資産形成をしたことになる。4000万円で購入していれば、1000万円以上になっている。こうした含み益は自宅だけは3000万円まで無税となっている。こうした値上がり益には不動産投資の場合には20~40%程の税率が課せられる。これだけ、日本は持ち家取得を促進している国なのだ。制度を使わない手はない。まずは賃貸という選択肢はないということだ。
■アベノミクスで買いそびれた人は全員後悔している
「オリンピック後に価格が暴落する」など、マンション価格を巡る下落の希望的観測は多い。今買うと高値つかみになるのではないか、は購入判断を鈍らせる。こうして買いそびれた人は全員後悔している。「あの時買っておけば良かった」と。アベノミクスの金融緩和以降、首都圏のマンション価格は上がり続け、5割高にまでなったのだから。
新築マンション価格は土地代+建築費+粗利益の足し算によって価格が決定される。おおよそ2年前に仕入れた土地が今分譲されているのが実態である。金融緩和すると不動産の購入資金に潤沢に資金が貸し出される。こうして地価が上がっている。これを推進している黒田日銀総裁の任期である2023年まで新築価格は下がる理由はない。この後、建築して売り出す2025年まで新築マンション価格は下がらないのである。新築が下がらなければ、中古が下がるわけがない。
リーマンショック後に不動産事業への資金が滞り、その下げ幅は新築で13%、中古で7%となった。これだけ下げたのは、倒産した不動産事業者が続出して、資産の投げ売りを迫られたからだ。今は未曽有のカネ余り状態で資金が不足することは考えられない。
■今はバブルではないから、バブル崩壊もあり得ない
1980年代のバブルの際は地価が際限なく上昇を続けたことが要因であり、この崩壊後は金融機関がお金を貸さなくなったことで下落をたどっている。バブル期と現在の違いは、不動産鑑定手法にある。
以前は「取引事例比較法」が主流で、隣の土地が1年で2割値上がりすればそれと同様に周辺の地価は2割上昇を余儀なくされた。しかし、この手法は上限なく続くことが可能になってしまい、バブルを生んでいる。
今は「収益還元法」で不動産価値は評価される。どれだけの収入を生み出すかで割り戻して不動産の価格は決まる。その割り戻す利回りは上下しても市場原理が働き、上限や下限は暗黙で存在する。つまり、バブルが起こることはない。
過熱することはあってもそれ自体がバブルと言える水準にはならない。今の水準も決してバブルと言える水準ではない。今がバブルではないのだから、バブルの崩壊で大幅に下げるなどということもあり得ないことになる。
■「儲かる確率の割に価格が安い駅」がお買い得だ
私の推奨する物件は価格が高い。なぜなら資産性が高い物件の法則を守ると「都心・駅近・大規模・タワー・ファミリータイプ」になり、今では億ションになりかねない程高い。マンションは立地がいいほど価格が下がりにくいので、物件単価が上がるほど儲かる確率も上がる傾向がある。しかし、儲かる確率が高いエリアでも単価の安い駅があるので、今回はそれをランキングしてみよう。
私が主宰する無料会員制サイト住まいサーフィンでは新築物件全件に「儲かる確率」を算出している。これは過去の物件の値上がり状況を集計し、売った際に資金が増える、つまり儲かった確率を算出している。これは物件単価が高いところの方が儲かりやすい傾向は顕著だが、儲かる確率の割に価格が安い駅を特定できる。それがお買い得っていうことだ。分かりやすくするために、1位を100としてその価格割安度を指数化した。
■オフィス街に近いマイナー路線が狙い目
トップは南千住駅で儲かる確率が84%だった。この確率なら通常7000万円程になるところを、南千住駅なら割安に購入できるのでお買い得ということになる。駅前は都市計画されたきれいな街並みだが、過去には住むのに敬遠された場所なので地価が割安だ。
2位の新船橋駅はJR総武本線の船橋駅から東武野田線で1駅行ったところにあるので、乗り換えがある分安くなるとはいえ、イオンモールが駅前にあるので、生活のしやすさが特徴だ。
3位は有楽町線辰巳駅で、これも穴場だ。21世紀になって東雲キャナルコートという再開発エリアができてから、湾岸エリアの一角を形成するに至ったが、元々は倉庫や都営住宅が多く、生活水準は高いとは言えない場所だった。
4位の東神奈川駅は横浜駅の1つ東京寄りの京浜東北線なので、東海道線で横浜駅に行くよりも距離の割に通勤時間が長く不便だ。しかし、この程度にしては価格が横浜より極端に安くなるのでお買い得になる。
この他、東武伊勢崎線や東武亀戸線などのマイナーな路線が上位駅に多い。それも近くに価格が高い駅が隣接しているなら、割安感が出やすい。とうきょうスカイツリー駅の次から3駅が8~10位に入る。15位の尾久駅も山手線に近いJRの駅にしては有名ではない。
■コロナ禍でも職住近接は大きく変わらない
7位・11位には都営新宿線の西大島駅と菊川駅が入る。この2駅は都営大江戸線が開通した森下駅と半蔵門線が延伸した住吉駅の隣で、間接的な影響を受けたことになる。
12位・24位は都心へのアクセスがいい日比谷線の入谷駅と三ノ輪駅が入る。この2駅は台東区に属するが、台東区は全般にオフィス街へのアクセスの良さから見直され、資産価値が向上している。
22位の銀座線田原町も同じ理由になる。23位・28位には総武線の錦糸町駅・亀戸駅が入る。総武線はJRの老舗路線だが、人気路線とは違う。
ここで分かることは、何よりもオフィスへのアクセス時間が短い駅を選ぶことだ。コロナ禍でも職住近接は大きくは変わらない。職場だけでなく、繁華街の近くに住んでいないと人付き合いもできなくなるだけだ。その中でも、不人気路線だからこそ相場が安いわけだが、それが最大の狙い目ということになるのだ。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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