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「なんでも温暖化のせいにするな」バッタ大発生も台風増加も環境問題とは関係ない

プレジデントオンライン / 2020年11月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ruvanboshoff

蝗害(バッタ類の大量発生による災害)や台風増加などの異常事態は温暖化が原因なのか。早稲田大学の池田清彦名誉教授は「温暖化のせいとはいえない。地球の長い歴史を振り返れば、過去にもそのようなことは起こっている」という――。

※本稿は、池田清彦『環境問題の嘘 令和版』(MdN新書)の一部を再編集したものです。

■バッタが大発生し、ソマリア政府は「国家非常事態宣言」を発表した

今年(二〇二〇年)一月に、アフリカのソマリアでサバクトビバッタが大発生した。「サバクトビバッタの大群が異常なほど大規模で、膨大な量の穀物や飼料を食べ尽くしている」、そのため、「人々とその家畜の食料源が危険にさらされている」と報じられ、ソマリア政府は二月二日に「国家非常事態宣言」を発表した。

こういう異常事態が発生すると、すわ、温暖化の影響か、とばかりに短絡反応をする一群の人々がいる。なんでも温暖化が原因だ、と思い込む困った人たちだ。

サバクトビバッタ、トノサマバッタなど一〇種近くのバッタは、幼生密度が高いと、体が黒くスレンダーになり、翅(はね)が長く、後脚が短くなり、飛ぶのに適した「群生相」と呼ばれる体形になる。いわゆる飛蝗(ひこう)である。幼生密度が低い時は「孤独相」と呼ばれる体形に成長するが、この二タイプは体形ばかりでなく、行動や食性も異なる。遺伝子に違いはないので、環境要因によって体形が変わる、表現型可塑性の一種である。

ソマリア近辺では大雨が続き、飛蝗の発生しやすい条件が作られたようだ。草丈が短い草地に好んで産卵するため、大雨が降って普段は半砂漠のようなところが、草地化したり干ばつが続いて川が干上がり、川底が草地化したり、大火の後、焼け野原が草地化したりすると、局地的に好ましい産卵場所が出現する。成虫が蝟集してきて交尾産卵し、幼生密度が高くなり、飛蝗が発生するわけだ。

■バッタの大量発生は歴史上いろいろな地域で起きている

飛蝗は、飛行衝動が強く集団で移動するため、同じ方向に一日一〇〇~二〇〇キロメートルの速度で移動し、行く先々で、植物であればなんでも食べつくし、世代を繰り返していく。その結果、飛蝗の通り道にあたるところでは作物が食べつくされて、飢饉が発生する。

干ばつと気候変動の影響
写真=iStock.com/piyaset
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/piyaset

飛蝗と、それがもたらす災害(蝗害(こうがい))という現象は、毎年起きることではないにしても、歴史上、いろいろな地域で起きている。今世紀になって蝗害がひどくなったという話はきかないので、これは人為的温暖化のせいではない。

歴史的に飛蝗が大発生した記録が多いのは中国で、大雨や、干ばつの後では多かれ少なかれ飛蝗が発生したようだ。飛蝗の出現は皇帝の不徳の致すところとの風評が信じられていたようで、時の皇帝はことのほか、飛蝗の発生を警戒したという。日本は飛蝗の発生には適していないようで、大規模な蝗害はあまり聞かない。最近では一九八六年に馬毛島(まげしま)(種子島の西方の無人島)で発生した記録がある。これは一九八五年の山火事のせいだという。

■ギネスに登録されたバッタの大量発生数は一二兆五〇〇〇億匹

近年の最も大きな大発生は一九世紀後半、北アメリカでロッキートビバッタにより起こされたもので、一八七五年の大発生は特に酷く、発生数は一二兆五〇〇〇億匹と言われている。これはギネスの世界記録に登録されている。地上一・六キロメートルの厚さの大群が五日間途切れることなく通過したとの証言もある。不思議な事に、ロッキートビバッタは僅か三〇年に満たない一九〇二年には完全に絶滅してしまった。絶滅原因はよく分かっていないとのことだ。あまりにも増え過ぎた反動で絶滅したのかもしれない。人類も気を付けたほうがよさそうだ。

最近は、アフリカ以外では飛蝗の大発生の話を聞かないのは、農薬漬けになった土地では、バッタの個体数が低く抑えられているためだろう。馬毛島で大発生したのは、この島は無人島で農薬は使っていなかったからだ。

アフリカの東部で作物が食い荒らされて、飢饉になるという現地の人の恐怖は分かるが、サバクトビバッタは食べられるので、一網打尽にする方法を考えて、つくだ煮や塩漬けにして保存しておけば、暫くは飢えを防げるだろう。

■そもそも本当に温暖化しているのか

地球温暖化の例として、氷河が崩れ、シロクマ(ホッキョクグマ)が流氷の上に取り残されたりする映像が流れることがあるけれど、氷河は温暖化したから崩れるのではなくて、後ろからどんどん押し寄せるから、その圧力で崩れているだけだ。

ホッキョクグマの研究をしているカナダの進化生物学者のスーザン・クロックフォードによると、ホッキョクグマは、気候変動で絶滅していないどころか、四〇年前に比べて、相当増えているという。

南極の氷も増えたり減ったりしているし、北極の氷も同じだ。一九五九年に米国海軍の潜水艦「スケート」が氷の全くない北極点に浮かんでいる写真があるという(渡辺正『「地球温暖化」神話』一〇三ページ)。六〇年とか一〇〇年ぐらいの時間のスパンというのは、地球の歴史から見たらほとんど点みたいなもので、そんな短い時間に起こる気温の上下を、温暖化とか寒冷化とか呼んでもたいした意味はない。

二〇一八年と二〇二〇年の冬にフロリダ州南部を寒波が襲い、木に張り付いて生息している、イグアナという、でっかいトカゲが、寒さでバタバタ落ちている映像があった。少し前、イランの空港が大雪で閉鎖になったりもした。地球の気候がいろいろアンバランスになっているとは言えるかもしれないけれど、それが温暖化の影響か、氷河期の前触れか、よく分からない。

過去のデータを見れば、現代だけが温暖化しているわけではないことが分かる。例えば、「中世温暖期」といって、一〇世紀頃結構暖かかった時がある。暖かかったけれど、それは人為的温暖化とは無縁である。もちろん人間の活動はあったが、化石燃料を使ってもいなかったし、CO2を人為的に増やすなどということはなかった。そういう時でも温暖化しているわけだ。

■太陽が原因で寒冷化することもある

もう少し前の日本では、縄文時代の最中、七〇〇〇年ぐらい前から五〇〇〇年前ぐらいの間はヒプシサーマル期といって、現在より摂氏数度気温が高かった。「縄文海進」が起こり、東京湾のまわりの低地は全部海の底だった。その時代の温暖化は、なおさらCO2とは関係ない。

近々で一番寒かった時は、一六〇〇年代の後半から一七〇〇年代のアタマぐらいである。それからずっと一八〇〇年代の半ばまで寒さが続いて、ヨーロッパで食べ物がなくなって困ったということがあって、それは太陽の黒点が無くなったことと関係する。一六四五年から一七一五年の間、マウンダー極小期といって黒点がほとんど無くなった。その時期が一四世紀半ばから一九世紀半ばまで続いた小氷期のピークだった。

太陽の黒点については、ガリレオ以来すでに約四〇〇年の観測の歴史があり、黒点の数は太陽活動の活発さを表す指標になっている。黒点の数は約一一年を周期として増減を繰り返してきた、ということも分かっている。

太陽の活動が活発でなくなると、どうも寒冷化する。

地球の温度変動は、太陽の活動のほうが、CO2よりもはるかに重要な要因なのだけれども、太陽の活動は人間がコントロールできないから、これはどうしようもない。人間がコントロールできないことは環境問題とは言わない。

■「温暖化のせいで台風が増えた」も誤り

台風も同じことで、これも環境問題ではない。

池田清彦『環境問題の嘘 令和版』(MdN新書)
池田清彦『環境問題の嘘 令和版』(MdN新書)

CO2が増えて温暖化したから、台風が増えるという俗説は事実に反する。気象庁のデータを全部調べてみたが、日本では台風の数は、傾向として徐々に減っているし、大きさも小さくなっているし、被害総額も昔のほうがうんと大きかった。

伊勢湾台風(一九五九年)なんて大変だった。死者・行方不明者の数は五〇〇〇人を超えて、明治以降の台風の災害史上最悪の惨事だった。

若い人は伊勢湾台風とか狩野川台風(一九五八年)とか知らないから、去年に比べたら、今年は台風がいっぱい来たと、ほんとに数年単位の現象だけを見て温暖化のせいだろうか、などと言っている。温暖化というのは、そんな一年や二年の話ではない。そういうことをちゃんと知っておく必要がある。

朝日新聞やNHKは、なんでこの期(ご)に及んで、温暖化を煽っているのだろうか。NHKは政府の言うことを聞かないと民営化されて甘い汁を吸えなくなるので、分からないでもないが、朝日新聞(他のマスコミも似たりよったりだが)はどんな利権があるのだろうか。政府が温暖化阻止と言って、政策を進めている以上、温暖化は噓でしたとは言えない状況になっているのだろう。

温暖化が噓だということになると、炭素税は取れなくなるし、関連補助金は、出す必要がなくなるし、エコカー減税もいらなくなるし、原発もいらなくなるし、ということになり、困る人がいっぱいいるのだろう。原子炉をさらにまだ作ろうなどと発言している人もいるが、短期的に儲かれば、あとは野となれ原子力とでも思っているに違いない。

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池田 清彦(いけだ・きよひこ)
早稲田大学名誉教授
1947年、東京都生まれ。東京教育大学理学部生物学科卒。東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は、理論生物学と構造主義生物学。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」への出演など、メディアでも活躍。ビートたけしとは同じ小・中学校の出身。

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(早稲田大学名誉教授 池田 清彦)

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