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「中学受験予測」早慶MARCH付属より日大付属大躍進のなぜ

プレジデントオンライン / 2020年11月19日 9時15分

出典=森上教育研究所

2021年度の首都圏の中学受験に異変が起きている。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「ここ数年、大学付属校が人気ですが、今秋の模試の結果、日大、東海大、東洋大といった中堅大学の付属校の志望者が増え、競争が激化するのは必至です」という――。

■コロナ禍なのに中学受験が過熱する理由

11月に入り、新型コロナウイルス感染拡大が続いている。真冬になればさらに気温が下がり、乾燥する。コロナだけでなく、インフルエンザにも注意が必要になる。そんな中、2月1日に始まるのが、首都圏の中学入試である。ここ数年、中学入試は「大激戦」と形容できるほど活況を呈している。図表1は2015年度以降の中学受験者数だ。

受験者数が増加の一途をたどっていることがわかる。とりわけ、今春(2020年度)の中学入試は1都3県の募集定員総数を上回る私立中学受験者数となった。つまり、中学受験は「学校を選ぶ時代」から「学校から選ばれる時代」に突入したということだ。

なぜ、中学入試が激戦になっているのか。

■中学受験生たちの「志望校選定」に影響を及ぼしているモノとは

その理由は主に3点ある。3点のうち2点はいまの大学入試のあり方に関係している。

①国の大学入試改革の不透明さに不安を覚えた小学生の保護者が、その「改革」に柔軟に対応しそうな私学を選択する道を選んだ。

②ここ数年、国が大学入学定員を厳格化しており首都圏の私立大学が軒並み難化している。このことが小学生保護者の間で周知された結果、中学入試で大学付属校をターゲットにする家庭が増えた。

③少子化と言われるが、都心の「教育熱の高い」エリアでは児童数が増えている点。

中学受験は「お金」のかかる世界である。中学入試の浮沈は、日本の経済状況と密接な関わりがありそうなものだが、来春2021年度の首都圏中学入試はコロナ禍の影響を受けるのだろうか。

結論から申し上げよう。

2021年度の首都圏中学入試の過熱化は沈静することなく、激戦が続くだろう。だからといって、コロナ禍の影響を受けないわけではない。主として中学受験生たちの「志望校選定」に影響を及ぼしているのだ。それらを分析していこう。

■依然として続く「大学付属校人気」だが、早慶付属より……

図表2は森上教育研究所のデータである。9月に実施された4大模試(四谷大塚・日能研・サピックス・首都圏模試センター)の学校別志望者総数に基づいた「前年度比志望者数」が著しく伸長している私立中学校の一覧だ。

4大模試集計にみる各校の前年度比志望者数伸長率
出典=森上教育研究所

これを見て気づくことが2つある。

ひとつは、大学付属校が人気を博しているということだ。この点については、前述した「大学入試改革」「大学入学定員厳格化」による小学生保護者の不安が増大したことを考えるとよくわかる。

もうひとつは、前年比で志望者数を大きく伸ばしている学校の大半が、「中堅校」であることだ。麻布・開成・武蔵・桜蔭・女子学院・雙葉といういわゆる首都圏屈指の難関校「男女御三家」や早慶付属校も入っていない。

4大模試集計のデータに目を通すと、男女御三家6校のうち、麻布・開成・女子学院・雙葉については、前年度比で志望者数を大きく減らすと予想されている。ここからわかるのは中学受験生たちの「安全志向」である。難関校を回避する流れが出てきているのだ。

これは一体なぜだろうか。わたしはコロナ禍がここで大きく起因しているのではないかと睨んでいる。

■自分の成績よりも上の「挑戦校」受験を回避する

振り返れば、この1年間は中学受験生にとって学習が思い通りに進みづらい環境だった。

主として春から夏にかけて塾の対面授業は中止され、オンラインでの双方型指導や授業動画配信での学習を余儀なくされた。また、こうしたイレギュラーな学習環境でペースを乱す受験生も多かった。それは複数の大手塾関係者が口を揃えて述べることだ。

こうした状況を間近に見てきた小学生保護者は、わが子が普段の成績よりも上のレベルの「挑戦校」を受験することに抵抗感を覚えたのではないか。加えて、冒頭に述べたように2020年度首都圏中学入試は激戦であり、ここで苦戦したという話が受験生保護者にも伝わっている。わが子の受験校選定に際して石橋を叩くのは無理もないだろう。

■日大・東海大・東洋大の付属校が大人気!

さて、大学付属校に注目が集まり、中学受験生の「安全志向」が強まるのが2021年度中学入試の特徴であることを考えると、双方を併せ持った「中堅大学の付属校」が人気を博すのは当然である。

日本大学豊山・日本大学第一・日本大学第二・日本大学藤沢・東海大学高輪台・東海大学相模・東洋大学京北……これらの学校の来春の受験者数は激増し、確実に入試レベルが難化することが上記の表で理解できるだろう。

小学生保護者がわが子の将来に漠然とした不安を抱く気持ちはよくわかる。コロナの終息が見えない中にあってはその不安は増幅するばかりだろう。

しかし、「12歳の受験生」に対して、進学する大学をいま決めてしまってよいだろうか。ここは熟考すべきだろう。

■安易に大学付属校を選ぶと、子供の人生が狂う

2019年末に出した拙著『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新聞出版)で、付属校選択のリスクについて次のように書いた(要約)。

矢野耕平、武川晋也『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書/朝日新聞出版)
矢野耕平、武川晋也『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書/朝日新聞出版)

<付属校に入れば、大学受験勉強に追われず伸び伸びと中高生活が送れるという話もあるが、「自由」を持て余すと学力不振に陥る生徒もおり、そうなると大学の内部進学できないこともある。高校生の途中になって慌てて他大学に向けての対策を始めても、付属校の大半はゆるやかな学習カリキュラムなので、他の大学受験生の学力レベルに追いつくのは並大抵ではない。しかも、中学入学以降、日々勉学に励む習慣を捨て去っているのだから、勤勉さを取り戻すのは困難であるといってよい>

大学付属校に進学したからといって「大学進学」が確約されるわけではないのである。このリスクについて十分に考えたうえで、付属校を目指すか否かを決定してほしいと思う。

もちろん、大学付属校ならではのよいところはたくさんある。例えば、高校入試に阻まれることなく、先取り学習をすることができる。また、早期のうちに「やりたい」ことが定まっていれば継続的に何かに一意専心しやすい。

東京都・神奈川県の中学入試本番があと2カ月ちょっとでやってくる。この1年間、コロナ禍という不測の事態に対して、苦労を重ねた親子が多いだろう。受験生が合格を勝ち取り、充実した中高生活へと足を踏み出せることを心から願っている。

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矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験専門塾スタジオキャンパス代表
1973年生まれ。大手進学塾で十数年勤めた後にスタジオキャンパスを設立。東京・自由が丘と三田に校舎を展開。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。主な著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校vs.新名門校』』(SB新書)など。

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(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平)

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