自民党と公明党が繰り広げる「仁義なき戦い 広島死闘編」の全真相
プレジデントオンライン / 2020年11月24日 18時15分
■自民党の議席がある広島3区に、公明党副代表が鞍替え出馬へ
広島で自民党と公明党が抜き差しならない関係となっている。衆院広島3区の候補者をめぐり、両党が独自候補を擁立する構えで譲らないのだ。
20年もの間、一貫して選挙協力を続け、成熟した連携を続けて来た両党のせめぎ合いは、すでにヤクザ映画『仁義なき戦い』の域に近づいてきた。そして、この問題は、ポスト菅を目指す岸田文雄前自民党政調会長の命運も左右する——。
11月19日、山口那津男代表は首相官邸で昼食をともにしながら菅義偉首相と会談した。主なテーマは、感染が急拡大する新型コロナウイルス対策だったが、山口氏は、その日の中央幹事会で広島3区に斉藤鉄夫副代表の公認を決めたことを報告。菅氏は無言でうなずいていたという。
斉藤氏は当選9回。党幹事長や環境相などの要職を歴任した重鎮だ。比例中国で当選を重ねてきたが、齢68歳での「鞍替え」出馬となる。当選回数を重ねてベテランとなった時に、選挙区から比例代表に転向することは、しばしばあるが、斉藤氏のような「逆の例」は非常に珍しい。
■しかし自民党広島県連は11月18日から候補者公募を開始
広島3区の現職は河井克行元法相(自民党を離党)。妻・案里氏が出馬した昨年の参院選をめぐり、公職選挙法違反の罪に問われている。河井氏は自身の進退を明言していないが、自民党が次の衆院選で公認することはあり得ないので、事実上の「空白区」となっている。そこに、公明党が割って入った。
公明党側には斉藤氏を擁立する理屈がある。夫婦による買収事件で選挙区内は自民党に対する不信感が充満している。1年以内に行われる衆院選では自民党の新人を擁立しても苦戦するのは確実だ。ならば、与党で公明党候補を担いだ方が得策という判断だ。広島県で長く知名度もある斉藤氏は格好の人物でもある。
「平和の党」を標榜する公明党は、広島の選挙区で議席を得るのは悲願でもある。
西田実仁・党選対委員長は19日の記者会見で「政治の信頼を回復し、与党として議席を得るには斉藤氏の擁立が最善と判断した」と語っている。
公明党は10月に、独自候補擁立の意思を自民党側に伝えていた。しかし自民党広島県連は了解せず、11月18日から候補者の公募を始めてしまった。公明党側は、話し合い決着は難しいと判断し、見切り発車したのだ。両党間の相互不信は、過去20年間、最大のものとなっている。
■岸田派幹部は「けんかを売られた」と公明党側に不快感
公明党の怒りの矛先は、岸田文雄前政調会長に向けられている。広島は岸田氏の地元。県連会長の宮沢洋一参院議員も岸田派の長老だ。それにもかかわらず、今回の問題で岸田氏は積極的に調整に加わらなかった。それに対する不満は大きい。
公明党側は広島3区で譲らなければ次期衆院選では岸田派を応援しないと非公式に伝えているという。岸田派所属議員たちの間にも動揺が広がる。
岸田派幹部は「けんかを売られた」と公明党側に不快感を隠さない。しかし、それと同時に自分たちが担ぐ岸田氏に対しても不安がくすぶる。
岸田派は、池田勇人元首相がつくった党内きっての名門派閥だが、「政策には明るいが政局に弱い」という意味で「お公家さん集団」と揶揄(やゆ)されてきた。岸田氏は「お公家さん」の象徴のような存在だ。閣僚や党の要職を長く務め、無難にこなすのだが、存在感がない。迫力もない。人気も出ない。
10月の党総裁選では菅氏に水をあけられた。その後、無役となり「次」への準備を再開させたが、菅氏を全面的に支えるのか、独自色を見せようとするのかがわかりにくく、埋没気味だ。
■むしろ、放置して、話をこじらせてしまっている
そこで起きた、お膝元・広島での難題。岸田氏は、公募により独自候補を擁立する方針を追認する姿勢だが、積極的に動いているわけではない。むしろ、放置して、話をこじらせてしまっている。「ニュー岸田」を見せられていない。
総じて良好な関係を続けてきた自公両党だが、次期衆院選をめぐっては、各地で火種を抱える。公明党は大阪府内で4つの選挙区で公認候補を擁立する方針。だが11月に行われた大阪都構想をめぐって自民党と公明党は対応が割れた。そのしこりが残るため、従来のような協力ができるかどうか、不安視される。
他にも、公明党が候補者を世代交代させる選挙区では、地元の自民党との関係がぎくしゃくしているところもある。
そして広島の難題。万一、ここで決裂して、他の都道府県にも不協和音が波及すれば、次の衆院選で、思わぬ苦杯をなめることになりかねない。選挙協力にとどまらず、連立政権にもひびが入る事態に発展するかもしれない。
そうなったら岸田氏は「A級戦犯」にされる。とてもではないがポスト菅を目指す状況にはならない。
■「広島3区」問題は、「岸田包囲網」の様相を呈し始めた
山口氏と菅氏が会談した11月19日。岸田氏は二階俊博幹事長、山口泰明選対委員長と会談した。二階氏は「自民党の公募を続けてほしい」と語ったという。一応、党県連の方針が認められた形で、岸田氏も一息ついた。
が、機を見るに敏の二階氏のこと。いつ方針を豹変させるか分からない。そもそも二階派と岸田派は、静岡5区、山口3区で次の衆院選公認候補をめぐって、つば競り合いを繰り広げている。二階氏は岸田氏の味方ではないのだ。広島で岸田氏にダメージを負わせ、広島、山口の調整も優位に進めようと考えても不思議ではない。
そして党総裁である菅氏の決断も岸田氏にとっては心配材料だ。公明党の支持母体である創価学会との独自のパイプを持つ菅氏は、公明党との関係を重視する。総裁の判断に委ねられれば「広島3区は譲る」となるのではないか。そもそも、広島県以外の自民党議員は「独自候補を出しても苦戦する。与党の議席を維持できるなら公明党に譲ればいいではないか」という声が多いのも事実だ。
「広島3区」問題は、自公両党の問題ではあるとともに、「岸田包囲網」の様相を呈し始めた。
(永田町コンフィデンシャル)
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