メンタル不調のときにまず食べるべき最強で手軽な「うつぬけ食材」

プレジデントオンライン / 2020年12月23日 9時15分

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メンタルの不調を食事で改善する方法はあるのか。分子整合栄養学に詳しい佐藤智春氏は「メンタルの不調の要因に、脳のための材料が不足しているのではと考える。そのため脳の材料として最も優秀な食材である『卵』を食べるといい」という――。

■うつ病は脳のエネルギーが欠乏した状態

新型コロナウイルスは経済に大打撃を与えました。そのストレスから「コロナうつ」と呼ばれる症状に悩む人が増えています。

「コロナうつ」という病名はなく、はっきりした定義もありません。コロナ禍のストレスや気分の低下状態を指して、マスコミが作った表現のようです。

では、うつ病とはどういう病気なのでしょうか。

精神医学では、重度の抑うつ状態のことを指します。抑うつ状態とは、「憂うつである」「落ちこんでいる」などと表現される症状です。

うつ病の原因は多岐にわたり、検査や診断の基準がはっきりしていないため、判断方法や出会う医師でも診断に差が出ます。

“こころの耳”という、働く人向けの厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイトがあります。その中で、うつ病について以下のように書かれています。

うつ病は、一言で説明するのはたいへん難しい病気ですが、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことも珍しくありません。つまり、エネルギーの欠乏により、脳というシステム全体のトラブルが生じてしまっている状態と考えることもできます。
私たちには自然治癒力という素晴らしい機能が備わっていて、通常はさまざまな不具合を回復へ導いてくれます。私たちは日常生活の中で、時折憂うつな気分を味わいます。不快な出来事によって食欲が落ちることもあります。しかし、脳のエネルギーが欠乏していなければ、自然治癒力によって、時間の経過とともに元気になるのが通常です。

(厚生労働省「こころの耳 1うつ病とは」より引用)

■脳は何でできているのか

脳のエネルギーとは何でしょうか。脳のエネルギーといえば、多くの人が糖質と答えるのではないでしょうか? 実は、むしろ糖質を過剰に摂ることで低血糖症状からうつ症状をおこす人が少なくないのです。

糖質を過剰摂取すると血糖値の急激な乱高下が起こり、集中力が途切れ、切れやすくなったり、急に眠気がさしたり、日常の仕事やパフォーマンスに支障をきたしたりします。

脳にとって最適な栄養は、脳の構成成分を見ると分かります。

脳は水分を除くと約40%がたんぱく質、約60%が脂質でできています。その脂質の約50%がコレステロール、25%がリン脂質、25%がドコサヘキサエン酸(オメガ3脂肪酸)です。このことを知れば、これらを多く含む食材が脳のエネルギーとして良いのが理解できるでしょう。

脳の構成材料であるたんぱく質、コレステロール、リン脂質、オメガ3脂肪酸、すべての栄養素を含むのが、卵です。特に、たんぱく質は量より「質」が重要とされていますが、卵は口から毎日とらなければならない必須アミノ酸(たんぱく質の材料)がパーフェクトに含まれる、脳にとっても人体にとっても必須の食材といえるでしょう。さらに、卵黄の脂質には脳にとって必要なコレステロールとリン脂質とオメガ3脂肪酸がバランスよく含まれています。

ご飯
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■「コレステロール=悪」という誤解

栄養学の言葉は、ギリシャ語が語源になっているものが数多くあります。たんぱく質であるプロテインは「一番大切な物」という意味を持ち、リン脂質の一種、レシチンは「黄卵」を意味します。

レシチンはマヨネーズの乳化にも活用される天然の乳化剤です。体内で水と油をなじませる役目があり、余分なコレステロールを排泄する働きがあることも分かっています。

コレステロールやレシチンは神経系のシグナル伝達に関与し、記憶、認知の機能の向上を助けます。特に、レシチンは神経伝達物質であるアセチルコリンのもとにもなるため、メンタルダウンかなと感じた方は意識的にそれを含む食品の摂取は必要です。

過去には「コレステロール=悪」という誤解がありました。1913年、ロシアの病理学者ニコライ・アニチコワがうさぎに酸化コレステロールを投与し、動脈硬化を発症させたことからコレステロールが問題視されたのです。しかし、うさぎは草食動物で、そもそも、コレステロールを分解ができないため、そのような結果になるのは当然です。実験自体に疑問を呈するドクターがいなかったのが不思議ですが、それが卵が悪者になった原因でした。

■コレステロールが低いと抑うつ度が高い

血清コレステロールと心の健康度の関連についての研究があります。疫学研究の端緒となった、医学誌『ランセット』(Morgan, RE. et al. Lancet 1993;341.75-79)で1993年に発表された研究です。

この研究は、50歳以上の男性約1000名を対象に、血清コレステロールと抑うつ度の関係について分析しています。集団全体を総コレステロール160mg/dL未満(低い群)、160~199mg/dL(標準群)、200~240mg/dL(境界群)、241mg/dL以上(高い群)に分け、抑うつ度を比較すると、「低い群」が他の3つの群に比べかなりの差をもって抑うつ度が高い。

そして、この傾向は50歳代以降、80歳代まですべての年齢階級で認められ、高い年齢階級ほどその差が大きいことがわかっています。抑うつ度に影響を及ぼす年齢、健康状態、身体機能の影響を加味しても、低コレステロール値であることが抑うつ度を高めていることを示しています。

■自殺行動との関係もある

さらに、つい最近ではうつ病患者を自殺未遂行為の有無別に分け、血清コレステロールを比較した研究が発表されました(Messaoud A, et al. Annals of General Psychiatry 201716:20. Is low total cholesterol levels associated with suicide attempt in depression patients?)。このデータは、うつ病患者のなかでも自殺行動を実際に起こした患者は、そうでない患者より血清総コレステロールが低いことを示しています。

これらの結果は、血清総コレステロール値が低いと心の健康度も低く、その水準値は自殺行動のリスクまで反映しているのかもしれないことを示しています。近似した研究結果は多く、血清総コレステロールと抑うつ状態が関係しているのは間違いなさそうで、特にシニア世代の男性では関係が強まるようです。

■毎日卵を10個食べ、体調不良から回復

本来、コレステロールは8割が自分の肝臓で作られ、食事でとり入れられるコレステロールは2割程度。食事で多くとっても血液中のコレステロールは肝臓でコントロールされるので、健常者であれば、それほど心配することではありません。

2015年より、コレステロールの摂取量に関して基準が撤廃されました。「コレステロールを含む食品を減らしても、血中コレステロール値が低下するという明確な証拠がない」ことが理由です。

私が働きすぎで体調不良になった25年前、肉・魚などのたんぱく質はまったく食べられず39kgまで体重が落ちました。そのとき、整体師に勧められたのが、毎日卵を10個食べることでした。それを1年間実行した結果、復活しました。その後学んだ分子栄養学で、卵が筋肉や脳内物質の材料となったことが理論的に裏付けされました。元気になった今も、毎日3~4個は欠かさず食べています。

もし、自分が落ち込みやすくなったと感じたら、自分の脳の栄養素が足りているか見直すチャンスかもしれません。リモートワークや外出自粛で、おにぎりや、カップ麵、パンなど炭水化物に偏った食事を済ませる人は要注意です。炭水化物だけの食事にはくれぐれも気をつけてくださいね。

普段の食事で無理なく卵をとるためのアドバイス
●炭水化物に卵をちょい足し
ごはんが好きなら→卵かけご飯(ごはん粒が卵の脂質で覆われ、血糖値の乱高下を避けられます)
パスタが好きなら→カルボナーラ
そば・うどんが好きなら→月見にしよう
●すき焼き風に…
少しリッチに、焼肉のつけダレに卵黄を
しゃぶしゃぶは卵ポン酢で
●お鍋の最後は…
卵雑炊や卵スープで〆てみて
★完全栄養食である卵の数少ない弱点は、ビタミンCと食物繊維が入ってないこと。色とりどりの野菜のサラダにゆで卵や温玉をトッピングしたり、キノコ、海苔、わかめ等の海藻のおみそ汁に生卵を入れたりしてみてください。
★ストレスの多い時は、消化の良い半熟卵がベストです。

■卵はパーフェクトな「うつぬけ食材」

今回のキーワード

良質な脂質とたんぱく質、特に、抗うつ作用や記憶学習の改善のほかにセロトニンの原料になるアミノ酸「トリプトファン」も含む卵は、脳の栄養不足を助けるキー食材であり、パーフェクトな「うつぬけ食材」の代表といえます。

佐藤智春『その不調、栄養不足が原因です』(主婦の友社)
佐藤智春『その不調、栄養不足が原因です』(主婦の友社)

私が学んだのは、今までの栄養学ではありません。体の細胞が何で構成され、どのような栄養で身体が作られているか、血液データを元に臨床ドクターと一緒に個体差で考える実践の分子整合栄養学です。

最近、落ち込みやすくなったり心の不調を感じたら、「脳の栄養が不足してるかも?」と一度、食生活を見直してみましょう。

もし、脳の栄養不足で本来の実力が出せず、パフォーマンスが落ちてしまったら、とてももったいないです。今からは1人1人が自分を守るセルフメディケーションの時代です。私のセミナーでは、よく、人体を車に喩えて話します。どんな高級車でもガソリン(栄養)が入っていなければ、走ることができません。ストレス社会で必要以上に脳のアクセルをふかすことで、エネルギーを多く消耗しがち。脳にとって、卵は最強のスーパーフードです。

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佐藤 智春(さとう・ちはる)
バイタルアナリスト
分子整合栄養医学協会認定・分子整合栄養アドバイザー。バブル時代、スタイリストとして多忙をきわめ、体調をくずす。1995年より分子整合栄養学を金子雅俊氏に師事。その後、セルフメディケーションの提案をライフワークとする。キャリアアップを目ざす多くの女性に向け、ライフステージ・マネジメント®講座や企業の講演も行っている。著書に『卵を食べれば全部よくなる』(マガジンハウス)、『男は食事で出世させなさい』(ポプラ社)、『中高生の身長を伸ばす7つの習慣』(主婦の友社)などがある。

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(バイタルアナリスト 佐藤 智春)

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