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「忘年会どうする?」「帰省する?」そう尋ねられた感染症専門医の答え

プレジデントオンライン / 2020年12月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

今年の年末年始はどう過ごせばいいのか。感染症専門医の田中雅之氏は「『密』を避けることが基本。オンラインでできるならそうすべきだ。万が一帰省する場合や家族や友人と会う場合は、感染リスクを抑えるポイントを守ってほしい」という——。

■感染症専門医が勧める「年末年始の過ごし方」

私の友人や同級生のグループラインには先月あたりから少しばかり、「いつもの忘年会どうする?」「新年会無理かな?」というメッセージが流れている。

それに対し、

「コロナだし、今年は集まれないよね?」
「少人数で集まらない? 屋外なら平気でしょ?」
「子供産まれたばかりだし、参加は難しいわ……」
「え、怖くない?」
「……(既読スルー)」

このような多様なリアクションを見かけています。

いくら「3密」が流行語大賞を獲得しても、「密」という漢字が今年の漢字として認定されても、日常生活を具体的にどのように過ごすことが今適切なのかは十分明確になっていない方も多いのではないでしょうか?

多くの人が手探りの中、適切な感染対策を講じていると信じながら生活されているのではないでしょうか? まさに自分のラインを眺めているだけでも、その「手探りの年末年始」が始まっているのかなと肌で感じます。

1年を通して新型コロナウィルスに関する様々な情報が飛び交いました。そして現状も「新型コロナウィルス流行×日本の年末年始」に関して、十分な知見や科学的な根拠があるわけではないです。

その中で、今ある知見や根拠あるいは様々な指針など参考に、感染症専門医が、昨年までの日本の年末年始を思い浮かべた時に、感染症対策という観点から懸念される点を皆様と共有したいと思います。これから年末年始を迎える皆様にとってなんらかの生活のヒントになるのではないかと思っています。

■念頭に置くべき、感染リスクが高まる5つの場面

まずは「例年」のイベントとその内容を整理し、『今年はここに注意』と題して各イベントの感染対策としての注意点を記載していきたいと思います。

2020年12月中旬
①職場の忘年会
2020年12月下旬
②クリスマス
③帰省、帰省先での忘年会や新年会
2020年12月大晦日
④大晦日
➡大掃除
➡除夜の鐘
➡カウントダウンライブ
2021年1月
⑤お正月
➡家族との新年の挨拶
➡初詣
➡お正月遊び
番外編:年末年始の救急外来

これらのイベントの多くは、内閣官房のHPに添付された注意すべき5つの場面とまさに合致するものもあるでしょう。

内閣官房のHPより
内閣官房のHPより

当然例年と同様の開催が困難であることは、この1年、新型コロナウィルスと向き合ってきた皆様なら理解も容易だと思います。では、一つ一つのイベントを細かくみていきましょう。

■忘年会は可能な限り開催の見送りを

年末年始のイベント①職場の忘年会

職場のみならず、多様な集いが年末には集中しています。忘年会の名の下に、旧友との交流、付き合い程度でそれほど前向きでもない集いや、同僚と1年間の仕事を労う集いなど本当に様々なタイプの忘年会があると思います。

ブッフェ形式、予約も多く密な2次会、飲みすぎて嘔吐してしまう人、その方を介抱する人、終電の異常な混雑、3次会のカラオケでの熱唱など様々なシーンが想起できます。

『今年はここに注意』

➡可能な限り開催を見送りましょう

12月のこの時期に集わなければならない特段の理由は実はそれほどないのかなとわたしは薄々毎年思っておりました。これを機に、是非ともスライドしてみるのもいい機会かなと思います。混雑も避けられ、ゆとりある集いになるかもしれません。

➡オンライン開催:いかがでしょうか?

➡最小人数:大人数で集まることがこれまで楽しく、忘年会らしいと感じていたかもしれませんが、感染リスクを考慮すれば可能な限りで最小人数での開催にしましょう。

➡冬なので鍋料理が出されたりすることがありますが、小分けに取り分けたものを食べましょう。間違っても、自身の使用をしているお箸で鍋をつつくようなことも避けましょう。

バーチャルハッピーアワー
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

■オンラインは◎、少人数で、料理は小分けに

年末年始のイベント②クリスマス

日本のクリスマスは、繁華街ではイルミネーションや百貨店なども賑わいを見せます。中には、教会で行われるミサへ参加する、あるいは、家族や友人とパーティーを催す方もいると思います。

『今年はここに注意』

基本的には忘年会同様です。可能な限り開催を見送りましょう。3密を懸念しながら過ごすといいのではないでしょうか。私は、過去にクリスマスの時期にカトリック系の教会に行ったことがありますが、通常よりも大変混雑します。

私の知る限り、原稿を書いている12月中旬現在、クリスマスミサに関するガイドラインなど出ておりませんが、各教会や団体が指針を提示しています。中には、オンラインの教会ミサを行なっているところもありました。密を避けるためにも、今年はオンライン参加にしてはいかがでしょうか。

■帰省は感染するリスク、させるリスクを高める

年末年始のイベント③帰省

帰省は、普段なかなか会えない地元の友人や先輩、後輩と再会する貴重な機会です。久しぶりに集まれば酒も進み、会話が盛り上がることは確実でしょう。しかし、これが感染リスク、相手を感染させるリスクを高めてしまいます。

感染の流行都市からの移動こそが、感染拡大のリスクとして報告されております(Cell. 2020 May 28;181(5):990-996.e5.)。帰省前のあなたの地域の流行状況はどうでしょうか? 仲間は流行地より帰省していませんか? そのような方がいれば会合は必ず見合わせましょう。昔からの旧知の仲間きっと今年直接会えなくても来年またいつもと変わらない仲間として集ってくれることでしょう。

もし帰省する場合は、公共交通手段を利用する方が多いでしょう。今年の暦を考慮すれば、28日仕事納め、翌29日に帰省という方も本来多かったでしょう。

『今年はここに注意』

このあたりは少し医学論文を付け加えながら科学的根拠と共に解説しましょう。まず、旅行というのは感染を拡大させます。帰省も同様です。そして、これは海外旅行だけではなく、国内であっても人の移動が感染リスクとなります。

米国のサンフランシスコ(Clin Infect Dis. 2020 May 21;ciaa599.)や中国(Travel Med Infect Dis. Jan-Feb 2020;33:101568.)から国内旅行に関する人の移動と新型コロナウィルス感染症の増加が明らかになったという報告があります。

フライト スケジュールをチェック
写真=iStock.com/AleksandarNakic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AleksandarNakic

■帰省する際の感染リスクはここが高い

飛行機と電車に関して、機内では3分程度で、新幹線の車内では7分程度で空気が完全に入れ替わっているとアナウンスされています。しかし、感染リスクが全くないとは言い切れません。

飛行機内の感染に関する過去の報告(Lancet. 2005 Mar 12-18;365(9463):989-96.)では、ビジネスクラスでは、元々感染者の近くに座った人への感染、エコノミークラスでは、トイレでの接触感染による感染あるいは到着前後の接触した可能性があるのではないかと言われています。

これは新型コロナウィルスの感染を直接調べた報告ではないですが、とても参考になる知見が含まれておりましたので、機上の際注意点としてまとめたいと思います。

飛行機移動の際の注意点
・出来るだけ周辺が空いている席・空いている飛行機利用してください
・搭乗中もマスクを着用してください
・空港滞在時間を減らしましょう・ラウンジやレストラン利用も出来るだけ控えましょう
・搭乗前後に手洗いをしましょう
・搭乗前にトイレを済まして、機上でトイレの使用を最小限にしましょう

■電車も絶対に安全とは言えない

次に、電車内の感染に関する中国の報告(Clin Infect Dis. 2020 Jul 29;ciaa1057.)では、新型コロナウィルス感染と電車内の感染リスクが記載されております。感染者と近い距離、長時間の一緒にいることのほかに、前後の座席よりも左右の方の座席の方が感染リスクは高いと報告されております。中国の電車事情をそのまま日本に当てはめられないかもしれませんが大変参考になると思います。

日本には、新幹線のような座席だけではなく、普通列車の並列座席や4人掛けなど様々なタイプの座席があると思いますが、以下の注意点は参考にしていただければと思います。

電車移動の際の注意点
・隣にお客さんがいるならその席は避けた方が良いです。
・近くに会話をしているお客さんがいたら目の前の座席は避けましょう。
・前後にお客さんがいても、左右にお客さんがおらずその席しか空いてなければ座っても良いかもしれません。
・あらかじめ乗車率の少ない時間帯や時期の電車を選んで乗車しましょう。
・電車内の手洗いは最小限にしましょう。

これらの注意点を守っても感染リスクをゼロにすることはできません。マイカーでの帰省も今年は可能であれば検討しても良いかもしれません。最小人数で、最小限の休憩で地元まで人との距離を取りながら帰省されてはいかがでしょうか。もちろんオンライン帰省という形で今年帰省を楽しむこともぜひご検討ください。

フェイスマスク
写真=iStock.com/imagean
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imagean

■大掃除、除夜の鐘、カウントダウンライブ……

年末年始のイベント④大晦日

➡大掃除

隅々まで大掃除されている方もいるかもしれません。業者に頼む方もいらっしゃるかもしれません。やり方や時期にばらつきがあると思います。

『今年はここに注意』

基本的には3密にならない範囲で行いましょう。業者が入るような場合には、同じ空間で密な状況にならないようにしましょう。

➡除夜の鐘・カウントダウンライブ

除夜の鐘を聞きに、さらには歌手のライブやクラシックコンサートが企画されています。

『今年はここに注意』

カウントダウンライブに関しては、オンライン配信が予定しているアーティストもいるようです。人数制限もない通常通りの開催という情報はあまり聞かないですので、例年通りの参加は物理的に難しいでしょう。基本的には飛沫が飛び交うような所作は控え、それを浴びるリスクのある環境が生じないように主催者側も参加者側も注意して楽しみたいところですね。

■初詣、新年の挨拶も油断は大敵

年末年始のイベント⑤新年

まさに日本独特のイベントが目白押しのお正月です。思い浮かぶイベントごとに注意点を列挙していきたいと思います。(初日の出・家族との新年の挨拶・初詣・おせち料理・お年玉・お正月遊び)

『今年はここに注意』

初日の出:密にならぬよう、出来るだけ少数でかつ屋外で拝みましょう。是非2021年素晴らしい年になるよう願ってください。

初詣に関しては、神社が「神社における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」というものを公表しております。参拝前に参考にしてみましょう。

神社側は既に分散参拝や手水舎の柄杓の撤廃や甘酒提供の自粛など様々な対応が推奨され、各施設でそれぞれ取り組まれているようです。私たちも人出の少ない日時を選択した密にならない参拝を心がけましょう。

おせち料理は、通常お重に入っています。そこから取り箸をしようして、各個人に取り分ける形が多いでしょうか。今年はその取り箸にも懸念があります。可能であれば、取り分けられた状態でおせち料理を楽しむと良いでしょう。

おせち料理
写真=iStock.com/hichako
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hichako

また、家庭でアクリル板を用意するのは難しいかもしれませんが向かい合って座らず、一度に大勢で集わず短時間で過ごしましょう。食事の際にも3密を考慮しながら過ごされるのを忘れないでいただきたいです。

お年玉や年賀状に関して、お年玉の受け渡しや年賀状を家族内で読み回すことも感染リスクを高めます。ただし、なかなか回し読みもせずに年賀状を保管するわけにもいかないでしょうから、その後にしっかりと手洗いに努めていただければと思います。

羽子板・凧揚げも屋外のアクティビティーになります。密を回避して、共有物を使用した後の手洗いはやはり徹底しましょう。

■年末年始は新型コロナ以外の病気にも要注意

年末年始の病院の救急外来では次のような患者さんをよくお見受けします。

①風邪

連日の飲み会に疲れ、体調を崩し、それでも無理して参加し、その後本格的に体調不良に陥った患者様です。

②急性アルコール中毒

過度な飲酒によって、急性アルコール中毒の状態になり意識が混濁した状態で救急搬送されるような方にも深夜の救急外来で頻繁に遭遇するのもこの時期です。

③ノロウィルスなどによる感染性腸炎

繰り返す嘔吐と下痢で一晩中トイレに篭り格闘した後の患者様です。前日の飲み会で生牡蛎を堪能していたりすることも多いでしょうか。冬場のウィルス性腸炎には注意が必要ですね。食事も注意が必要ですね。

『今年はここに注意』

年末年始の医療機関は、スタッフが事前にシフトを組み、通常の診療体制を縮小して患者様の入院対応や救急外来の体勢をとっています。通常と比して、マンパワーが不足しています。医療者も年末年始の休暇を短期間でも取得しています。

さらに今年は、発熱が主訴である方など症状によって診療の時間や場所を分け、通常の診療体制とは異なる状況となっている診療所や病院が多いです。

緊急の受診の場合、必ず医療機関へ電話などで受診の方法や診療時間を確認・相談することをお勧めします。さらに、保険診療としてオンライン受診という新しい方法も今年は多くの医療機関で使用することができるようになりました。感染対策として活用していただければと思います。

今年散々繰り返し目や耳にした、今年の漢字『密』や、流行語にもなった『3密』は、感染対策を考える際に極めて重要なキーワードです。決しておろそかにはできません。この基本を忠実に守って、穏やかな年末年始を過ごしてほしいと思います。

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田中 雅之(たなか・まさし)
KARADA内科クリニック医師 日本感染症学会専門医 日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
2010年東京医科大学卒業、東京医療センター初期研修を経て、同病院総合内科で後期研修を行う。その後、5年間北海道の医療過疎地域での診療経験もあり、医師として患者や医療機関やその地域に対してお手伝いできることがないか常に考えながら行動することをモットーに地域医療に従事してきた。現在は、KARADA内科クリニックに勤務。東北大学医学系大学院博士課程に所属し、臨床のみならず研究にも従事している。

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(KARADA内科クリニック医師 日本感染症学会専門医 日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医 日本内科学会認定総合内科専門医 田中 雅之)

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