エコノミストが断言「コロナ禍でも2020年代に日経平均3万円を超える」の根拠
プレジデントオンライン / 2021年1月4日 9時15分
※本稿は、今井澂『2021 コロナ危機にチャンスをつかむ日本株』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■株価は名目GDP成長率を見れば上昇は明白
銀行では1つの口座を管理するのに2000~3000円かけています。以前の銀行は、口座管理にコストがかかっても利ざやで十分儲かっていました。しかし超低金利の時代に入って、もはや利ざやでは儲けられません。それで新規の口座や休眠口座から口座管理料を1500~2000円ほど取るようになりました。預金者としては銀行にお金を預けると減ってしまう時代になったのです。
いっぽう、たとえば日本人は401kでも7割は預金になっていて、超低金利でほとんど利益が出ません。だからこそ、これから年金で株を買う時代がきます。逆にいうと、今までは多少、年金の余裕があっても株は買わなかったのです。
実は株価というのは面白いもので、過去20年間では名目GDPと同じ成長率になっています。ちなみに国別の株価は過去20年間で中国が54倍、アメリカが3.9倍、イギリスが3.8倍、ドイツも3.8倍、日本は1.7倍になりました。日本は他国に比べて上昇率が低いのですが、それでも銀行預金よりははるかに儲かりました。
多くの日本人は、株は損すると思っています。損するのが怖い。たしかに、株価の暴落はしょっちゅうありました。ただしPBR(株価純資産倍率)では1倍以下になったことはほとんどないし、たとえなったとしても次の瞬間に必ずまた上がりました。
今は新型コロナショック対策でお金をうんとばらまいています。それが名目GDPを上げるのですが、2020年3月以降、これからの株価は5~10年は上がっていくという数字が出ています。
■ゴールデン・クロスが「長期的な上昇を予告」している
言い換えると、株価の10年の移動平均と20年の移動平均、あるいはそれほど長い期間ではなくても1年の移動平均と2年の移動平均からも、これからの株価がよくなるのはほとんど間違いないということがわかります。短いほうの移動平均線が長いほうの移動平均線を抜くと「ゴールデン・クロス」といって、長期的な上昇を予告するという経験則があるのです。
株式会社マネースクエア、チーフテクニカルアナリストの宮田直彦氏によると、このゴールデン・クロスは2回発生しています。第1回目はアベノミクスが始まって以後、2013年1月の1万1138円から2015年4月の2万0580円まで30カ月上がりました。上昇率は84.8%です。2回目のゴールデン・クロスは2017年6月の2万0033円から2018年9月の2万4120円までの16カ月で、20.4%上がりました。
名目GDPの上昇と菅新政権の発足等を勘案すると、今後3~4年は間違いなく株価の上昇が続くと考えていいでしょう。
仮に4年間上昇するとすれば28カ月なので、84.8%上がった30カ月にほぼ近いということになります。ただし、今度は50%と低く見積もったとしても、日経平均は現在2万3000円台ですから、結果3万5000円くらいにはなるわけです。
■「2020年代には日経平均3万円が達成される公算が大きい」
株をやっていない人は、株価の右肩上がりのトレンドがなくなってしまったから怖いと思っていますが、右肩上がりのトレンドも戻ってきた可能性があります。
私の友人で、かつて東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)の為替資金部次長や調査部次長を務めた龍谷大学経済学部の竹中正治教授は、時事通信社の総合金融ビジネス誌『金融財政ビジネス』2019年12月9日号において数々のデータを示し、「2003年以降の企業利益の長期トレンドを見る限り、日本株の右肩上がりのトレンド回復は本物の可能性が高い。20年にかけて景気後退でまた落ち込む局面はあろうが、2020年代には日経平均3万円が達成される公算が大きそうだ」と書いています。
私の意見も竹中教授と同じです。
付言すると、円安ということも日本の株価に大きなプラスになっています。今の円の実効レートは過去20年と30年の平均と比べて18~24%割安なのです。だから円安が企業収益にプラスになって、これも企業収入が下がったとしてもそれをかなりカバーすることになると考えられます。
■日本人の知らない日本株の魅力、バフェットが商社株購入の理由
今や株価が上がる状況になっていて下値にも限界があります。ところが、多くの日本人の頭のなかでは株はまだ怖いようです。その思いを払拭してくれるのが、投資家のウォーレン・バフェット氏です。
私も昔、アメリカの金融街であるウォールストリートにいたので、バフェット氏のスピーチをずいぶん聞きました。
すでに述べたように、バフェット氏は日本の5大商社の株を5%ずつ買ったことを公表し、将来は9.9%まで買い増すといいました。これまでバフェット氏はほとんどアメリカ株一辺倒だったのです。アップル株やバンク・オブ・アメリカ株で7割の資金を運用してきました。海外の株の比率は非常に低く、本気で海外に投資したのは実は今回の商社株が初めてなのです。
バフェット氏は東日本大震災後の2011年5月に切削工具メーカーのタンガロイ(2004年2月にMBOにより東証一部上場廃止)を訪問するために初来日しました。しかし、そのときも、日本で関心を引く大企業の株はいくつかあると語った程度でした。
目下、バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイには手元資金が過去最高水準の1465億ドルあります。そのバフェット氏が、商社株を買った理由については第1章(※註)でも触れましたが商社株は日本株ですので、ここでは日本株をなぜ買ったのかという観点から述べてみます。
註:著者は別章でバフェット氏が総合商社株を買った理由として、今後、食料危機のリスクがある中で食糧関連のビジネスをしていること、また総合商社の株はPER(株価収益率)もPBR(株価純資産倍率)も低くて割安であることをあげている。
■バフェット氏がこのタイミングで日本株に手を伸ばした理由
香港は中国に押さえられてしまって中国化されつつあり、2020年6月には香港国家安全法も施行されました。それで外国企業も香港から逃げ出しています。ピーター・タスカ氏という著名なイギリス出身の経済アナリストがいるのですが、かつてパリミキ(三城ホールディングス、7455)の社外役員の経験もあり、日本の事情をとことん知っている方です(なお、私は同社の顧問をやっていましたので、この方の能力をよく知っています)。
そのタスカ氏が、英文ニュースサイトの「ジャパン・フォワード」への寄稿のなかで「香港の代わりとしてオーストラリアは遠すぎる。台湾は中国に近いからチャイナリスクがある。香港と近いシンガポールは距離的にはいいけれども、北東アジアをカバーするには理想的なところではない。だから、ロンドンとニューヨークとの時差を考えても、最適なのは東京だ」と述べています。
しかも、イギリスの調査グループの資料でも、東京はニューヨーク、ロンドンに次ぐ第3位、上海、シンガポール、香港より上位なので国際金融センターになってもおかしくないと指摘されているのです。今後、世界経済に対する日本の影響力はますます大きくなるに違いありません。
このことが、バフェット氏が日本株に手を伸ばした理由です。
■バフェット氏は日本のITの技術開発力を高く評価
また、経済面で日本が安全なことも1つの理由になっています。
実はこれから金利はどこかで上がっていきますが、そのときに借金の利払いを自分の会社の利益でまかなえていないゾンビ企業も増えていくわけです。
『日本経済新聞』による2018年の統計では、ゾンビ企業は世界に5300社もありました。これは10年前の2倍を超えています。つまり、収益力は弱いけれども、金融緩和の影響によって借金の利率も低くなったため延命をしたのです。
ゾンビ企業の国別の主な内訳は、アメリカが923社、ヨーロッパが1439社、インドが617社、中国が431社、日本が109社です。
ゾンビ企業が少ない日本は経済面で安全だということになります。5年先、10年先を考えれば、やはり金利は上がっていくでしょう。この点を案外、バフェット氏は重視しているのです。
さらに技術開発力という理由もあります。米中新冷戦ではITの力が鍵になっていますが、バフェット氏は日本のITの技術開発力を高く評価しているのです。
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国際エコノミスト
1935年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、山一證券入社。山一證券経済研究所、山一投資顧問を経て、日本債券信用銀行顧問、日債銀 投資顧問専務、白鷗大学経営学部教授などを歴任。主な著書に『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』(岩波出版サービスセンター)、『経済大動乱下! 定年後の生活を守る方法』(中経出版)、『日本株「超」強気論』(毎日新聞社)、『恐慌化する世界で日本が一人勝ちする』『日経平均3万円 だから日本株は高騰する!』『米中の新冷戦時代 漁夫の利を得る日本株』(以上、フォレスト出版)など多数。公式ウェブサイト
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(国際エコノミスト 今井 澂)
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