1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「生命保険も医療保険も不要」そう断言するお金のプロが入っている3つの保険

プレジデントオンライン / 2021年1月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

老後に向けてどう備えればいいのか。経済コラムニストの大江英樹氏は「まっさきに見直すべきは保険だ。保険への支払いより、手元に現金を残すことを優先したほうがいい。私が入っている保険は3つしかない」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな!』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■老後に必要なのは「保険」ではなくて「現金」

さて、ここまで投資や資産運用についてお話ししてきましたが、定年後のお金について考えた場合、増やすこと以上に大切なことは「無駄を無くす」ということです。

ただし、この「無駄を無くす」ということ、「節約をしなさい」という意味ではありません。節約という言葉には、必要な物でも我慢するという響きがあります。でも定年が近づいた人、定年を迎えた人にとっては、やっとこれからやりたいことができるようになったのです。

趣味や旅行、外食といった楽しみも節約のためにあまりしないということであれば、いったい何のために今まで働いてきたのでしょう。そういう人生を楽しむためのお金はあまりケチる必要はないのです。それよりも、知らないうちに支出してしまっている「無駄」を無くすべきです。

ではいったいどういうものが無駄なのでしょうか?

ちょっと身の回りで考えてみましょう。ほとんど行っていないスポーツジムや会員制クラブの会費、現役時代の習慣でなんとなくとり続けている新聞や雑誌、契約した時についているスマホのオプションプラン等々、案外気が付かないところでこうしたあまり意味の無い支出があるはずです。

これらをちょっと見直すだけで最低でも月に1~3万円くらいの無駄を省くことができます。

■生命保険をやめるだけで800万円も貯蓄できる

さらに大きいのが保険です。

預金通帳
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

たとえば生命保険を考えてみましょう。そもそも生命保険の役割は、保険を掛けている本人が亡くなった場合、残された家族が生活に困らないようにすることです。

60歳時点でもまだ小さい子どもや高校生ぐらいまでのお子さんがいればそれも必要でしょうが、すでにお子さんが独立していたとしたら生命保険はほぼ不要です。仮に奥さんと年が離れていたとしても遺族年金という制度がありますから、一定の生活保障はあります。

ただし、不動産を中心とした巨額の資産を持っている場合の相続対策として生命保険が有効な場合はあります。でも、ほとんどの人にとっては60歳以降の生命保険は不要だと思います。

ところが、実際には年配の人でも割とたくさん生命保険には入っているようです。公益財団法人 生命保険文化センターというところが調べて平成30年12月に出した「生命保険に関する全国実態調査」(*1)によれば、「世帯年間払込保険料」(生命保険)は、60~64歳で年間43.9万円、65~69歳では年間33.8万円となっています。

仮に年間40万円払っている保険料を止めてそれを貯蓄に回せばどうなるでしょう。10年間で400万円、20年間であれば800万円の蓄えができます。老後に2000万円必要という話がありましたが、保険を止めるだけでその4割はカバーできてしまうのです。

(*1)平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」(公益財団法人 生命保険文化センター)

■医療保険は本当に必要なのか

さらに医療保険を考えてみましょう。生命保険はやめても医療保険に入っている人は結構多いと思います。でもよく考えてみてください。

医療保険というのは医療費をまかなうためのものではないのです。医療費をまかなうのは、公的医療保険である「健康保険」です。日本は国民皆保険ですから、サラリーマンも自営業者も定年退職者も、必ずいずれかの健康保険に入ることが義務付けられています。医療費はこの健康保険から出てくるのです。

仮に自己負担が高額になったとしても「高額療養費制度」があるため、もし月に100万円の治療費がかかったとしても自己負担は9万円程度で済みます。70歳以上になれば多くの人は5万7600円だけの自己負担で済むのです。

では民間の医療保険はいったい何のためにあるのかといえば、こうした公的な医療保険ではカバーできない部分、たとえば入院したときの食費や個室で入院する場合の差額ベッド料、そして病院にタクシーで通う場合の交通費といったことをカバーするのがその役割です。

だとすれば、別に医療保険に入らなくても、一定の貯蓄があればそこから出せばよいのです。

仮に毎月3千円の医療保険に入っていたとして、20年間払い込み続けると、その金額は72万円になります。もし5日間入院したとして仮に1日1万円の入院給付が出たとしても、5万円です。

それなら保険料を払う代わりにその72万円を貯蓄しておき、そこから払えばよい話です。

■ほとんどの保険は入っても無駄

現金のよいところはお金に色が付いていないことです。保険はその目的にしか使えませんが、預金であればどんな目的にも使えます。すなわち貯めておきさえすれば、使い途は後からゆっくり考えることができるというのが、現金・預金のメリットなのです。

ムダ
写真=iStock.com/takkuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takkuu

定年後には想定外の一時出費が生じることもあります。自宅のあちこちが壊れて修理したり、元気だったのが急に病気になって入院したり、そして認知症リスクも年齢と共に高まってきます。

そんな時に必要なのは、保険ではなくて現金なのです。現役時代の生活の発想を切り替え、無駄を無くすこと、特に大きな無駄は保険ですから、本当に必要な保険以外は見直すべきでしょう。

ではいったいどんな保険が本当に必要な保険なのか? 私が入っている三つの保険を次の節でお話ししながら、どういう場合に保険が必要かをもう一度しっかりと考えてみるようにしましょう。

■それでも入っておくべき3つの保険

私は保険というのは人類が考えた仕組みの中ではとてもよくできたものだと思いますし、保険によって助けられることはたくさんあります。

ただ、多くの人は保険について間違った使い方をしていたり(保険を貯蓄のように使う)、あるいは不要な保険に入ってお金を無駄にしたりしています。したがって私はそういった無駄な保険はやめるべきだと思っています。

が、そんな私が入っている保険が3種類あります。ちなみに私は年齢が68歳で、執筆と講演を主な仕事とし、株式会社オフィス・リベルタスという会社の代表取締役を務めています。会社と言っても社員は私以外には妻ひとりだけなので、どちらかと言えば個人事業主に近いと言った方がいいでしょう。

そんな私ですが、生命保険も医療保険も個人年金保険も一切入っていません。ではいったいどんな保険に入っているのでしょうか?

それは次の三つです。

①社会保険
②自動車保険
③火災保険(地震保険付き)

私がなぜこの保険に入っているのか、そして保険というものの本質も併せてお話をしたいと思います。

社会保険には色々ありますが、私が入っているのは①厚生年金保険、②健康保険(協会けんぽ)、そして③介護保険です。これは自分で選んで入っているというよりも、義務なので入らざるを得ません。わが国の場合、国民皆保険、皆年金ですから、原則、一定の期間は誰もがこの制度に加入することが必要です。

そしてこれらの保険に加入しているので、私は民間の保険会社の生命保険にも医療保険にも個人年金保険にも一切入っていないのです。なぜなら、これらの公的な社会保険で十分だから、そして明らかにこちらの方がお得だからです。

■国民健康保険に入っていればそれでほぼ十分

公的な社会保険は国が運営する制度ですから、本人が負担する保険料に加えて、かなりの額の税金が投入されています。しかも運営する側は手数料を取っていません。民間保険会社は言うまでもなく営利企業ですから、加入者が払い込んだ保険料の中から社員の給料や利益がまかなわれることになります。

その証拠に、たとえば医療保険を例に取ると、民間の場合は加入する年齢が高ければ高いほど、保険料は高くなります。これは年齢が上がると病気のリスクが高くなるので当然です。

ところが国の医療保険である健康保険は、現役世代の負担は3割ですが、75歳以上の後期高齢者になると現役並みの所得者以外は1割になります。2022年度からは一定所得以上の人は2割に引き上げられる方針ですが、いずれにしてもリスクの高くなる人ほど負担が少ないのです。

これはまさに営利を目的としない国が社会保障制度として税金をつぎ込んで運営されているからです。

したがって、社会保険に入ることはとても重要であると同時に、ある一定以上の年齢になってくると、これに入っていれば民間の保険はそれほど加入の必要性は高くないと言ってもいいでしょう。

■入るべき保険が備えている3つの条件

次に私が入っている自動車保険です。中でも特に重要なのは対人・対物の賠償保険でしょう。

なぜこれらが大切なのかは、保険の本質を考えてみるとよくわかります。私は保険に入るべき、または入らなければならないケースというのは以下の三つの条件が揃った時だと思います。

①滅多に起こらないこと
②でも、もし起こったら到底自分の蓄えではまかなえないこと
③そして、それがいつ起きるかわからないこと

このように考えると、自動車保険の対人賠償というのはいずれの条件にも当てはまります。死亡事故なんて自分が運転していて滅多に起こることではないでしょうが、もし起こしてしまったら何億円もの賠償はとても自分では払いきれません。しかもどんなに気を付けていても運転している限り、それはいつ起きてもおかしくはありません。

つまり、これらは自分ではコントロールが難しいリスクだからこそ、保険という仕組みに頼るしか方法はないのです。火災保険や地震保険もほぼこれに近いと言ってよいでしょう。

ところが同じ自動車保険でも、車両保険は保険料も高いので入らないと言う人がいます。これは合理的な判断です。なぜなら車庫入れの時にこすったりすることは割と起こりうることですし、その程度の修理代ならそれほど高くありません。

したがって起きる確率の高い場合は保険料が高いので、それを払って入ることはせず、自分の車が傷ついたら自分のお金だけで修理をしてもよいのです。

■保険だけが「老後の不安」を解消してくれるわけではない

このように、保険の本質ということを考えてみると、入るべき保険と入る必要の無い保険というのは自ずと区別が付くと思います。

大江英樹『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)
大江英樹『定年前、しなくていい5つのこと 「定年の常識」にダマされるな!』(光文社新書)

もちろん職業や家族構成、遺伝的な体質等々、人によってさまざまなファクターがありますから、全ての人に当てはまるルールというのはありません。私にとっては不要でも、ある人にとっては必要な保険はあるでしょう。

大事なことは、自分にとって必要かどうかを論理的に考えることです。前述したように、保険は将来の不幸や不安に備えるものです。

人間の感情として、健康に対する不安や事故に遭うという不幸は過大に評価しがちですから、論理的に考えろと言ってもなかなか簡単にはいかないと思いますが、不要な保険に入って無駄な保険料を負担するのはやはり避けるべきです。

また、誰もが「老後の不安」を持っています。特に高齢期になってからの医療・介護に関する費用については、どうなるかわからないが故に不安感は大きいだろうと思います。しかしながらこれも必ずしも保険が最も有効な解決策ではありません。

----------

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
オフィス・リベルタス代表 大手証券勤務を経て2012年独立。行動経済学、シニア層向けライフプラン等をテーマに執筆・講演活動。著書に『「定年後」の“お金の不安”をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』ほか。

----------

(経済コラムニスト 大江 英樹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください