後輩から声をかけられない「ウザい年長者」が無意識にやっているマイナス言動
プレジデントオンライン / 2021年1月7日 11時15分
■人生を上向かせる秘訣とは
人生をラクにする、とんでもなく簡単なやり方がある。
それは「若者から好かれる」ということだ。いま私は47歳だが、人生がこの10年ほど自分の想像以上にうまくいった理由は、若者と仲良くできたからだと思っている。
私の考える「若者」とは、35歳を過ぎている当人から見て「自分よりも6歳以上、年下の人物」を指している。なお、34歳あたりまでは自身が「若者」当事者であり、そんな若者が自分よりも年下の人間のことを「若者」と呼ぶのは少し違和感がある。35歳ごろまでは「若者」にカテゴライズされる自分の立場や印象を活用し、「どうすれば年上にかわいがってもらえるか」を意識するほうが、人生はうまくいく。
私はウェブメディアという若い世代が続々と参入してくる業種で長らく仕事をしていたから、若者と付き合う機会が多かった。
2000年代初頭のネットニュース黎明期から現場で働き続けた私は、業界ではもはや「長老」的扱いである。下手をすると、若者から「老害」扱いされてもおかしくない年齢だ。だからこそ「老害」認定をされぬよう、相手の年齢に関係なく、常に敬語を使うなど丁寧な対応を心がけてきた。
そうした姿勢に好感を持ってもらえたのか、若者から飲み会などに頻繁に誘ってもらえるようになった。これが結果的に、自分の人生を上向かせたのだ。
■「相手に好かれる」ことの重要性
若手に処世術を説くビジネス書などでは、よく「立場のある人を篭絡すべし」みたいな原則論が登場する。要は「かわいがられる若手になれ」ということだ。これは多額のカネを握っていて、決定権や発言力を備えている実力者に気に入ってもらえれば、仕事を獲得したり、出世したりするのに有利だよ、という論である。
この指摘は真理だと、私も思う。順調にキャリアアップするためには間違いなく、実力者から高い評価を受け、その人から重用されなければならない。これこそ、社会人になったらます真っ先に意識すべきことである。
若ければ若いほど「不器用なところもあるけど、何事にも一生懸命に頑張ってくれる」「まだまだ青いが、真面目に話を聞いて、面倒な業務にも嫌な顔せずに取り組んでくれる」といった低いハードルが設定されるものだ。社会人経験を重ねてハードルの難易度が上がってしまう前に実力者に存在を覚えてもらい、気に入ってもらえれば、以降の職業人生が格段にラクになる。
こうして、ある程度の地位を獲得したとしよう。そこから何をすべきかといえば、今度は「若者からいかに好かれるか」を考えることが重要になってくる。
■ここ10年、一緒に飲んだ人の9割は若者だった
いやはや、本当にギョーテンの話なのだが、私の場合、この10年ほど一緒に飲んだ相手の90%は年下だった。
ネットの仕事をしているからこそ、ともいえるが、10年前の37歳の段階で22歳~31歳くらいの若者と数多く接していた。それから10年が経過しても、ここのところで会った方々は25~37歳くらいの若者だらけだ。40代となるとガーンと減ってしまう。雑誌の編集者と会うときは40代が多いのだが、ネット関連だと責任者以外は20~30代が圧倒的に多い。50代以降と会うのは、会社員時代の先輩が「久々にどうだ」と誘ってくださる席くらいになってしまった。
■ウザいオッサンの言動を反面教師に
そんな状況がずっと続いてきたので、仕事をスムーズに進めるには若者から煙たがられないことが極めて重要だと、自然に意識するようになった。そして行き着いたのが、過去に自分が遭遇した「ウザいオッサン」の所業の逆をやればいい、ということだった。自分が若者だったときに受けたイヤ~な扱いを反面教師にするよう心がけたわけだ。具体例を挙げてみよう。
・上司が私と先輩に「メシ食いに行くぞ」と同時に声をかけたとき、先輩は「なんで中川なんかと一緒に行かなくちゃいけないんですか」と上司に返していた。
・相手が年下だとわかると、途端に「さん」付けから呼び捨てないしは「君」付けになる。
・飲み会や会議に、年上は遅刻をしてもいいと思っている。
・メールの書き方が年下に対してぞんざい過ぎる。
・自分が仲良くしてもらっている先輩について「あいつは信用ならないぞ」などと頼んでもいないのに助言してくる。こちらはその先輩のことが好きで付き合っているのに……。
・相対する若者はそれほど興味を持っていないにもかかわらず、飲みの席で自分がいまハマっているもの(たとえばゴルフ)がいかに素晴らしいか力説し続け、「お前らも大人のたしなみとしてやったほうがいいぞ」と押し付けようとする。
・プロジェクトメンバー全員の頑張りで達成したことであっても、自身のリーダーシップが最大の要因だったと自画自賛し、それを上に報告する。
・発注相手に対して「仕事を出してやっている」という態度でエラソーにし、ときに接待を要求する。
とまぁ、こんな調子でいくつも出てくるのだが、「若者に好かれる」には、「自分が若者のときにイヤだった年上の行動」をしなければいい、ということに気付いたのだ。
■カッコイイ年長者の振る舞いをマネすべし
一方「これはカッコイイ!」と思った年上の言動もある。それらについては「将来、ぜひマネしよう」と記憶に留めることを心がけた。実際、自分がオッサンになってからマネしていることも多い。こちらもいくつか挙げてみる。
・自分のほうが高い給与を得ているので、飲みの席で当然のように多めに払ってくれる。
・部下や後輩が仕事でミスをしたとき、まったく怒ることもなく、とくに表情を変えずに「わかった。あとはオレがなんとかする」とだけ伝え、どこかへ出向くか、どこかへ電話をかける。それで問題が解決する。
・下請けに対し、常に「皆さんのおかげで仕事が回っております。ひいては私も給料がもらえています」という態度で接する。
・部下や後輩が何かに困っている様子をすぐに察知して、「どうした?」「何かあった?」と声をかけてくれる。相談してみると「それだったら○○さんを紹介するよ。彼だったら助けてくれるはず」などと適切な人に繋いでくれる。
・「取り急ぎ相談したいことがあるのですが、話を聞いてもらえませんか? いますぐが無理でしたら、なるべく早いうちに時間を作っていただきたいです」とお願いしたら、「いますぐ」ないしは「こちらの想定以上に早いうち」に時間を作ってくれる。
■「悩める若者」のよき相談相手として
これまで年上の人々から、さまざまな「若者に対して忌避すべき行為」と「実践すべき行為」を見せられただけに、現在、若者に対しては極力「実践すべき行為」だけで接するよう心がけている。もちろん、私にも道徳心に欠けているところがあるし、アル中だし、聖人君子でもないので、あらゆる場面でそのように行動できているわけではない。それでも、無理のない範囲でかくありたいと努めている。
こうした先輩の姿を追うことに加えて、もうひとつ、忘れてはいけないと捉えているポイントがある。それは「若者は年長者よりも悩むことが多い」という点だ。悩める若者に対して、年長者は真摯に向き合わなければならない。
悩んでいることや迷っていることを気軽に相談できる年長者になれれば、若者からの信頼感はおのずと高まるものだ。私はこれを心がけたからこそ、若者が仕事に悩んだり、転職するかどうか逡巡したり、年収をいかに上げるか苦悶したりする場面で「すみません、一緒に飲みに行ってもらえませんか? ご相談したいことがあります」と誘ってもらえるようになったと考えている。
■イヤな老害にならずに済んでよかった
2020年11月1日、私はセミリタイアに合わせて東京から佐賀県に引っ越した。その前の月である10月には、1日に2~3回は「会いませんか」「飲みませんか」といったお誘いをいただいた。前述したとおり、90%は年下からのお誘いだ。皆さん口々に「寂しくなります」「いろいろ楽しかったですね」「これまでありがとうございました」「近いうちに佐賀へ遊びに行きますよ」「東京にいらっしゃるときはぜひお声かけください」などと言ってくれた。ありがたいことだ。
こうした温かい声を若者からかけてもらったときに、しみじみ思ったのは「イヤな老害にならずに済んでよかった……」ということだ。自分が年上から受けたよい扱い、悪い扱いの両方を理解したうえで、若者に対して私なりに誠実に接した結果、こうして「有終の美」を飾ることができたのだ。東京で過ごした最後の1カ月間、私のことを次々に連れまわしてくれた愛すべき若い皆さんには、本当に感謝している。
■年齢に関係なく、互いに学び合える関係性を目指して
そして、これまた感激したのだが、私が佐賀県でそれなりに楽しそうな人生を送っていることをSNSや記事で発信するようになったのを受けて、若者たちが佐賀まで足を運んでくれるようになったのである。佐賀行きのきっかけを作ってくれたライターのヨッピーさん(やはり年下)が中心となり、東京の編集・ライター・IT界隈の人々が佐賀に暮らす私を訪ねるという「中川まつり」が企画された。
メンバーを見ると、編集プロダクションの株式会社ノオトで代表を務める宮脇淳さんは私よりも1歳年上だが、その他は全員年下である。そんな人々が「中川さん、佐賀でちゃんと生きてるのかな、ウヒヒ」とばかりに、大挙して顔を見に来てくれたのだ。こんなにうれしいことがあるか! さらには、近々予定されている東京出張の話をしたところ、若者から「それなら『中川さんをもてなす会』を企画しますよ!」と言ってもらえた。
また最近では、福岡の若手のライター軍団からも「ぜひ会いましょう!」「話を聞かせてください!」と宴席に誘ってもらったりしている。
当然、こうした場で私は、若い彼らに対してエラソーにならないよう留意するし、丁寧な言動で接することを心がけている。こちらの経験や知見をもとに伝えられることは伝えるが、一方で、彼らから学べることがあれば素直にコウベを垂れて学ぶ。
このように、年齢に関係なく、相互に学び合える関係性にこそ発展性があるのではないだろうか。「年齢」を無駄に意識するばかりに、エラソーにしたり卑屈になったりする必要はない。触れ合う人すべてに「丁寧」に接すればいいだけなのである。
■地方では40代後半でも「若者」扱いしてもらえる!?
最近、もうひとつ驚いたことがある。それは「地方で暮らすと47歳でも案外『若者』認定をしてもらえる」ことだ。先日、私が住む佐賀県唐津市の隣に位置する伊万里市の「金吾農園」へ行ってきた。農園主の吉田金吾さんは74歳。彼は「オレほど失敗し続けてきた人間はいない」「人の話ってもんは、成功話じゃ面白くない。失敗話が面白いんだ」などと言い、数々の失敗談を話してくれた。現在は泥で小屋を建てている最中で、この日はわれわれの一行4人で小屋づくりの手伝いをした。
一息つきながらお茶を飲んでいたときのことだ。金吾さんは「あんたたちみたいな、いい若者が来てくれてよかった」と言ってくれた。47歳にして、まさかの若者認定である! 金吾さんは、養鶏を手がける若者を支援したり、数多くの若者と一緒に小屋づくりや農作業にいそしんだりして、慕われている。
金吾さんは、仲間と一緒に捕まえたというイノシシの肉のカレーをわれわれが「うまい、うまい」と食べていたら、離れた場所にある山小屋にまで連れて行ってくれ、冷凍庫に保管されていたイノシシ肉を「持ち帰りんしゃい」と渡してくれた。「また、いつでもいらっしゃいな」と穏やかにわれわれを見送ってくれる金吾さんの姿を目に焼き付けながら、私は彼のことがすっかり好きになってしまった。
東京では毎度「年上プレイ」をしてきた私だが、金吾さんとお会いしたことで、これからさらに「年長者」としての振る舞いを学ばせてもらえるだろう。そんな機会を得ることができたのは、本当にありがたい。
今後は、金吾さんのような“よき年長者”から学んだことなども含め、自分が培ってきたものを若者にもっと惜しみなく還元していきたい──そう、心を新たにした次第である。
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・35歳あたりを過ぎたら、「自分はもはや“年長者”にカテゴライズされる人間である」と自覚すべし。
・よき年長者になるには、自分が年長者から受けた扱いを参考にしつつ、「どのような言動が若者から好まれるか」を意識するところから始めてみよう。
・年齢にかかわらず、相互に学び合える人間関係を構築することが理想である。年長者だって、若者から学べることは多い。
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ライター
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『TVブロス』編集者などを経て、2006年よりさまざまなネットニュース媒体で編集業務に従事。並行してPRプランナーとしても活躍。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。以来、著述を中心にマイペースで活動中。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットは基本、クソメディア』『電通と博報堂は何をしているのか』『恥ずかしい人たち』など多数。
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(ライター 中川 淳一郎)
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