橋下徹「特措法、感染症法の改正論議で絶対に見逃せないこと」
プレジデントオンライン / 2021年1月20日 11時15分
■国会議員は罰則の意味合いを誤解している
本メルマガ前々号(Vol.230【危機突破のノウハウ(1)】大事なのは「自分の持ち味」。菅さんは適切な権力行使で正面突破を!)において、菅義偉政権は病床逼迫の状況を打開するためにも医療側に権力行使をすべきだと強く論じた。新型コロナへの対応をしていない医療機関や医療従事者に対して、コロナ対応を促す権力行使をすべきだ、と。そのための法律を作らなければならないということも論じた。
そんな中、現在、感染症法16条の2という規定は、「厚生労働大臣や都道府県知事は、医療機関側に必要な協力を求めることができる」となっているところ、その規定を改正し、単なる「協力を求める」から「指示と勧告」、そして従わない場合には「施設名の公表」までできるようにすることが検討されているという報道があった。
この流れ自体には賛成だが、罰則として施設名の公表を使うことには断固反対だ。
また、現在コロナ対応に使っている新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいて、飲食店への休業要請を行うにあたり、それに従わない場合には「店名の公表もあり得る」と、これまた政府は店名の公表を制裁としてちらつかせるが、これにも断固反対だ。
そして、やっと特措法の改正論議が始まり、休業に関して罰則付きの命令を加えて、それとワンセットで補償(支援)も付けるという法改正が進みそうだが、ここでの議論においては罰則の意味合いを国会議員たちが誤解しているように思える。というのは、罰則にどれだけの効果があるのか、という議論が展開されているからだ。
■「罰則を付ける」のオンパレードだが、それでいいのか?
さらに、この特措法の改正論議に合わせて、その他の法律の改正論議も噴き出てきたが、「罰則を付ける」のオンパレードだ。特に、入院を拒絶した感染者や保健所による行動履歴の調査を拒否した検査陽性者等に対して罰を加える方向になるらしい。
僕は、有事のときに国民に罰則付きで義務を課すことに賛成だが、今の議論は平時と有事の切り替えをしない前提での議論になっており、非常に不安を感じる。平時も有事も区分けせずに、一般的に入院拒絶や調査拒絶をした者に罰を加えるという法改正なら、これにも断固反対だ。
なんか、弁護士会っぽい主張になっているけど(笑)、僕は弁護士会のような単純な反対論者じゃないからね。
そもそも今の政府のコロナ対応について国民が不満と不安を感じているのは、政府の対応が迷走していると国民が強く感じているからだ。
この点を批判するのは簡単である。単純な批判は多くのコメンテーターや学者に任せておけばいいが、重要なことは「なぜ政府の対応がここまで迷走しているのか」その原因を探り、その対応策を考えることだ。
本来この役目は政治家である国会議員や知事たちが担うものだが、このメルマガでしっかりと論じて、皆さんと日本という国の「欠陥」とその「修理方法」について考えていきたい。
(略)
■大事なのは罰則の中身ではない、補償額の算定法だ
確かに金額の算定は難しい。しかし、だからこそこの一番難しいところを決めるのが国会議員なのではないか。
それなのに、簡単に決めることができるが実際はどうでもいい罰則の中身だけを明確に定め、一番難しいが一番重要な補償金額・支援金額の定め方から逃げている今回の特措法改正案は、国会議員が責任を果たしていない最悪の法律改正案だと言える。
(以下省略/全文はメールマガジンでお読みください)
(ここまでリード文を除き約1400字、メールマガジン全文は約1万1800字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.232(1月19日配信)の「本論」から一部を抜粋したものです。気になった方はメールマガジン購読をご検討ください。今号は《【権力行使の大前提(1)】なぜ僕は「罰としての店名公表」に断固反対するか》特集です。
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元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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