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「緊急事態宣言が11都府県に」2月7日に解除するため、いまやるべきこと

プレジデントオンライン / 2021年1月13日 21時15分

新型コロナウイルス対策をめぐり、全国知事会の飯泉嘉門会長(下中央)らとテレビ会議を開く西村康稔経済再生担当相(左上)=2021年1月12日午後、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

■営業短縮の協力金は、1日最大4万円から6万円に引き上げ

政府は、1月13日、大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木の合わせて7府県を対象に緊急事態宣言を出した。すでに1月7日には東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に宣言が出ており、対象地域は11都府県に拡大した。いずれも期間は1月8日から2月7日までの1カ月間だ。昨年4月7日の宣言に次いで2回目となる。

緊急事態宣言の発令によって11都府県の防疫に法的根拠が与えられ、知事の権限が強固なものになる。ここで緊急事態宣言の主な中身をざっと拾ってみよう。

政府は会食の場が感染を広げているとみているが、11都府県は政府の基本的対処方針に従って飲食店やバー、カラオケ店に夜8時までの営業時間の短縮を要請できる。応じた店には協力金を現在の1日最大4万円から6万円に引き上げ、応じない場合は店名を公表する。

前回の緊急事態宣言がスポーツクラブや映画館、劇場、百貨店も重点対象にしていたのに比べ、かなり的が絞られている。知見が蓄積された結果だろう。防疫を続けていくためには、社会経済活動とのバランスを取る必要がある。的を絞ったことは評価できる。

■企業に対しては「出勤者数の7割削減」が目標に

イベントの人数制限については「上限5000人かつ収容人数の50%以下」とした。夜8時以降の不要不急の外出の自粛も要請し、とくに30代以下の若者には慎重な行動を求めている。企業に対してはオンラインのテレワークを効率的に行うことによって出勤者数の7割削減の目標を示した。

感染の拡大はなんとしても抑えたい。感染が広がって感染の山のピークが高くなると、重症者も増える。その先に致命的な打撃を受ける健康弱者が存在する。新型コロナの健康弱者は高齢者と基礎疾患(持病)のある人だ。とくに糖尿病や肺機能障害、心臓病といった持病のある人は細心の注意が必要だ。

たとえば最近では参院議員(立憲民主党)で元国土交通相の羽田雄一郎氏が昨年12月27日に感染して亡くなったことがニュースになった。羽田氏は53歳と高齢ではなかったが、糖尿病と高脂血症、高血圧の持病があった。羽田氏は2017年7月に死去した羽田孜元首相の長男で、国会議員になる前は父親の第1秘書を務めていた。

■読売社説は「病院間の連携強化が不可欠だ」と訴える

感染拡大を止めるには、若い人たちの協力が欠かせない。彼らは感染しても、無症状あるいは軽症で済むことが多い。だが自身が感染源になり、もしも身内の健康弱者に犠牲が出れば、居たたまれないだろう。

ずっと家に居ると気が詰まる。心が病んでしまったら元も子もない。たとえば一人で行動する分にはリスクは小さい。また外出先でも声を出さず、静かにしていれば、感染リスクはおさえられる。ただ、大人数での会食は避ける。飲酒をともなわないランチでも同様だ。私たち一人ひとりが協力し合っていまの流行を食い止め、いち早く緊急事態を脱しなければならない。

緊急事態宣言が発令された翌日、読売新聞(1月8日付)は「緊急事態再発令 病院間の連携強化が不可欠だ」との見出しを付けた1本社説を掲載した。

書き出しで「新型コロナウイルスの感染状況が緊迫の度を増している。政府、医療関係者、企業や個人がそれぞれなすべきことを行い総力を挙げて難局を乗り切らねばならない」と訴え、中盤では「コロナ患者に対応する医療体制の再構築を急ぐことが重要だ」と指摘している。

新型コロナの患者に挿管する医療従事者
写真=iStock.com/Tempura
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tempura

繰り返すが、感染者が急増すると、どうしても重症者や死者もかなりの割合で増える。その結果、医療体制が崩壊に追い込まれる。コロナ患者の治療だけでなく、一般の診療や手術もできなくなる。病床不足に加え、医師や看護師も足りなくなるからだ。救えたはずの命が救えなくなる。なんとしても感染者を減らし、感染の山のピークを押し下げなければならない。

■コロナ患者用病床は日本全国の急性期病床のわずか4%だけ

日本の医療体制は世界でもトップクラスだ。医療体制の整っている日本でなぜ、医療崩壊の危機が迫るのか。しかも欧米に比べ、日本の感染者はかなり少ない。それなのに病床が足りなくなる。

厚生労働省によると、手術や救急治療に対応できる急性期の病床は全国に73万床ある。しかし、新型コロナの患者用に確保できているのは、2万7600床とわずか4%にすぎない。

日本には規模の小さい民間病院が多く、コロナ患者が大学病院など大病院に集中してしまう。多くの民間病院はコロナ患者の受け入れに消極的だ。感染を防ぐ陰圧室を作るにはコストがかかる。しかも何らかの原因で院内感染が起きれば、風評被害で一般の患者が減り、経営破綻に追い込まれかねない。

■医師や看護師を中小病院から大病院に派遣するシステムを

しかし、新型コロナは待ってくれない。まだまだ感染は続く。特効薬はないし、良質のワクチンの普及には時間がかかる。

この段階で感染者を減らすには、大病院と中小の病院と間で適切な調整を行い、患者の受け入れ態勢を安定させる必要がある。中小の病院がコロナ患者を受け入れられないというのなら、全国の中小病院から医師や看護師を大病院に派遣するシステムを構築すべきだ。日本医師会がその調整役の先頭に立つべきである。

読売社説もこう主張している。

「早急に病院間の連携を強化し、患者の受け入れ態勢を拡充する必要がある。地域ごとに役割を分担し、逼迫している病院への医療従事者の派遣を進めるべきだ」

■産経社説は「遅きに失した再発令だ」と手厳しい

1月8日付の産経新聞も1本社説(主張)で、緊急事態宣言について冒頭部分からこう訴える。

「首都圏では感染増に歯止めがかからず、医療提供体制が崩れ始めている。遅きに失した再発令だが、この機に新型コロナを抑え込まなくてはならない」
「宣言が功を奏さなければウイルスは全国に広がる。日本全体の危機ととらえ、国民は協力してウイルスとの戦いを進めたい。人々の『行動変容』がカギとなる」

「遅きに失した」「宣言が功を奏さなければ」などと手厳しく批判するが、それだけ感染拡大の現状に焦りを感じているのだろう。

批判の矛先は政府と自治体に向けられる。

「菅首相や知事ら政治リーダーの発信力の弱さも深刻である。それゆえに今回の協力呼びかけが十分に浸透しない恐れはある」

とりわけ菅義偉首相には厳しい。

「昨年12月には会食問題で菅首相は謝罪に追い込まれた。飲食店の時短要請強化を政府が求めたのに東京都などが応じなかったとして、今年に入って政府と都が角突き合わせたのも見苦しかった」

産経社説はどうも菅首相が嫌いなようである。

■朝日社説は「場当たり的な対応で急拡大させた末の切り札」と批判

1月8日付の朝日新聞の社説はさらに手厳しい。書き出しからこう批判する。

「感染抑止に軸足を移すことをためらい、場当たり的な対応で感染者を急拡大させた末の『切り札』である。菅首相は危機的状況を招いた政治責任を厳しく受け止め、今度こそ、国民のいのちと暮らしを守る責務を果たさねばならない」

朝日社説は「場当たり的な対応」と指摘するが、一連の「Go Toキャンペーン」のことを指しているのだろうか、よく分からない。読者に不親切だ。何がどう場当たり的なのかを具体的に示すべきである。

「危機的状況」とも書くが、欧米の爆発的な感染拡大に比べれば、日本の感染状況はまだましだ。たとえば、米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、今年1月1日時点の「人口100万人あたりの感染死者数」は、ベルギーが1689.5と最多で、これにイギリス(1093.6)、アメリカ(1050.7)、フランス(994.2)など欧米諸国が続く。世界の平均が234.5で、日本は26.4とベルギーの60分の1以下だ。

■「自粛警察」「マスク警察」といった言葉は、なぜ出てきたのか

朝日社説はさらに指摘する。

「前回の宣言の際は、国民に対し、他人との接触を最低でも7割、できれば8割減らす努力を求め、百貨店や映画館など幅広い施設に休業を求めた。今回は感染リスクが高いとされる飲食店の時短強化に的を絞りつつ、テレワークの推進や大規模イベントの入場制限なども行う」
「経済社会への影響をなるべく抑えたいという意図が明らかだが、これほど市中に感染が広がってしまった後で、どれだけ実効性をあげられるか、確たる見通しは持てない」

朝日社説と反対に、沙鴎一歩は菅政権が強調する「飲食店への絞り込み」には賛成である。防疫は社会・経済の活動とのバランスが欠かせないからだ。

感染防止の対策だけに重点が置かれると、人の心も病んでいく。コロナ禍のなかで挙げられた「自粛警察」「マスク警察」といった言葉がそれを端的に示している。医師や看護師など医療従事者に対する誹謗中傷も私たちの心が疲れて折れた結果だろう。

いま重要なことは「あらゆる地域に緊急事態宣言を出すこと」ではなく、「対象地域がいち早く緊急事態を脱すること」である。やるべきことは明確だ。防疫には一人ひとりの協力が欠かせない。そして政府は、この間に病院間連携の強化などの施策を推し進めてほしい。明けない夜はない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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