産業医が伝授、休み明けの「メンタル不調」が消える毎朝の3分ルーティン

プレジデントオンライン / 2021年1月18日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/indigo making studio

長い年末年始休暇を終えて、さあ仕事! と思っているのに、なかなかエンジンがかからない、まわりのスタートダッシュについていけない……。「休み明けにメンタルの不調を訴える人は多い」と言うのは、精神科医であり産業医の井上先生。特に女性は年始以降のメンタル不調が多いそう。原因とその対策について教えてもらいました——。

■休み明けに不調になりやすいのはなぜか

年末年始休暇が明けると「朝、起きられない」「仕事に行きたくない」といったメンタルの不調を訴える人が増えてきます。また、年初からバリバリやる気のある人を見て「自分はそこまでやる気になれない」と落ち込む人も。こうした不調や落ち込みは、だるさや頭痛、吐き気といった体の症状としてもあらわれます。

なぜ休み明けに、こうした不調があらわれるのでしょうか。その大きな原因は“生活リズムの乱れ”です。年末年始は、大掃除や年賀状書き、おせち作りといったイベントが増えて、就寝も起床も時間がバラバラになります。また家族みんなが休みになるので、夫や子どものペースに巻き込まれて、自分のペースが守れなくなるのも、生活リズムが乱れる要因になるでしょう。

■日本の女性にのしかかる年末年始の重い負担

実は年末年始に入院する女性は、非常に多いんです。年末の仕事納めのころから、だんだん体調を崩して入院する人、あるいは毎年この時期に調子が悪くなることから、あらかじめ予約入院する人もいます。これを専門用語でレスパイト入院と呼びますが、たまったストレスで調子が悪くなるのを入院という形で回避させているのです。

この時期に男性の入院が増えるということはあまりありませんので、日本の女性には、年末年始の仕事の負担が重くのしかかっている、ということがよくわかります。その負担は家事労働という物理的なものだけに限りません。たとえば夫の実家に帰省するなどの精神的な負担も含まれます。

■帰省しなくてよくなったことは女性にはプラス

予防策としては、入院までいかなくても、自分の時間は意識してとることです。人間にとって、非日常がこれだけ疲弊につながるということがわかっているので、充電する場所や時間を持つことが有効な策となるのです。

それから睡眠をしっかりとること。夜も遅くなりがちですが、ぐっすり眠ることは心身のコンディションをととのえる基本中の基本です。また、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと自分を「ねばならない」でしばるのはいけません。やることを絞ること。おせちや年賀状も、体を壊してまですることではありません。

今年はコロナ禍の影響で在宅勤務が増えたため、いきなり非日常になるわけではなく、また帰省しなくてよくなったことも、プラスに働いた女性は多かったかもしれません。

■朝起きたら3分間、顔いっぱいに朝日を浴びる

こうした長期の休みによる生活リズムの乱れをととのえて、仕事モードにチェンジするにはどうすればよいでしょうか。僕がお伝えしているのは「4つの時間を固定する」ということです。

4つの時間というのは「朝起きる時間」「朝食をとる時間」「昼食をとる時間」「夕食をとる時間」。つまり起床時間と3食の時間を、毎日同じにするということです。

特に大切なのは「朝起きる時間」と「朝食をとる時間」の朝の二つ。まず朝起きたら、すぐに3分ほど顔いっぱいに朝日を浴びましょう。顔に光を浴びると脳に刺激が届き、体内時計がリセットされて、12~15時間後に自然に眠くなるメラトニンというホルモンが出ます。

この睡眠ホルモンであるメラトニンの原料は、幸せホルモンといわれるセロトニン。セロトニン→メラトニンという順で作られているので、セロトニンを高める食事を意識してとることが、結果的にメラトニンを増やし、生活リズムをととのえることにつながります。

■「朝食にバナナヨーグルト」は最強

セロトニンを高める食事栄養は、具体的にはトリプトファンというアミノ酸とビタミンB6です。トリプトファンは、バナナや納豆、ヨーグルトなどに含まれていますから、朝食でバナナヨーグルトをとるのは理にかなっています。ビタミンB6は、レバーやマグロの赤身に含まれています。夕食には意識して取り入れるとよいでしょう。

ヨーグルトにたっぷりのバナナ
写真=iStock.com/nata_vkusidey
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nata_vkusidey

毎朝、規則正しい時間に食事をとっていると、だいたい1時間前ぐらいから胃腸などの消化器系の血流がよくなって活性化してきます。それを体が覚えてくると、朝もスッキリと目覚めて起きやすくなります。それだけ体の準備がととのうので、朝の2つの時間は、かなり重要なのです。

■周囲の「年始のやる気モード」を見て焦りを感じたら

まわりに比べて、いまひとつやる気が出ない、そんなときはとにかく体を動かすしかありません。そのためには、散歩をするなど出勤前に体が動きやすくなる工夫をします。またたとえば、気分の上がる音楽を聴く、朝食は喫茶店のモーニングを食べるなど、いつもと違う演出をすることで、自分のやる気スイッチを見つけるようにします。そうすれば、いざ職場に行っても、しっかりと行動できるでしょう。

とはいえ、まわりにがんばっている人を見ても、焦らないことも大切です。新年からいきなりスタートダッシュされて、どんどん引き離されていくような感覚になって焦りがちですが、そこは焦らずに自分のキャパシティ以上のことは課さず、自分の今やれることをやれていればOKと考える。それでできないことは、誰かに助けを求めましょう。

■仕事は求められることを提示できれば十分

年の初めに目標を立てる人も多いですが、この目標の立て方にもコツがあります。いちばんNGなのは、「1年がんばる」といった抽象的な目標。そうではなく、できるだけ数値化すること。たとえば「4月までに売り上げを10%上げる」など、数字を挙げて目標化しないと、それが本当に近づいているのか、遠ざかっているのかわからないので、モチベーションダウンにつながってしまうのです。

そもそも、仕事のスキルを磨くことばかりが、すべてではないということも知っておいてほしいポイントです。仕事だけでなく、趣味でスキルを磨くことも同じくらい大切なことです。仕事だと、つい評価の対象になってしまいますが、趣味だと誰からも評価されず、自分の好きなことに没頭できます。ですから人生を充実させるためには、仕事に価値を置きすぎず、好きなものに触れる時間を増やすことが大切です。仕事に関しては、細くとも長く働くことに意義があるので、求められることを提示できれば十分なのです。

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井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務

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(産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田純子)

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