「休日は家族サービスの日」そう割り切っている人ほど人生が豊かになる理由
プレジデントオンライン / 2021年1月20日 11時15分
※本稿は、深沢真太郎『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
■日常生活を定義することでポリシーが生まれる
定義とは数学で最初にする行為です。例えば三角形について研究したければ、まず三角形を明確に定義しないことには始められません。
三角形であって三角形でないものが存在してしまうと数学は始めることができない。これはとても重要なことです。おそらくあなたは今後の人生において、机上の数学の問題を解く機会は少ないでしょう。ではいつ定義するという行為を必要とするのか。答えはひとつしかありません。日常生活です。
そこで問題です。
【演習問題】
「休日」を定義してください。
定義とは定めること。「○○とは~~である」と言語化する行為です。すなわち、次の1行の空欄を埋める行為に他なりません。
休日とは、__である。
もちろんここに絶対の正解はありません。100人いれば100通りの顔があるように、100通りの答えがあるでしょう。
休日とは、仕事をしない日である。
休日とは、働くエネルギーを蓄える日である。
休日とは、家族サービスというめんどくさい業務が生じる労働日である。
重要なのは答えそのものではなく、その答えにたどり着くまでのプロセスです。仮にあなたが「休日とは、仕事をしない日である」と定義したとします。その答えは、このような思考により導いたものではないでしょうか。
そうであるもの=「休日」にあるもの = 仕事をしない時間
そうでないもの=「休日」にないもの = 仕事をしている時間
休日にはいっさい仕事をしないというポリシーを持つ人は、おそらくこのようにして休日を定義しています。そして休日には仕事をせず、休日以外の日に仕事をするというはっきりした線引きをして人生を送ることができます。
■定義することは「人生」に大きな影響を与える
一般論ですが「はっきりしている」ことは良いことです。
先ほどの例に挙げた「休日のスタンスがはっきりしている人」は、それだけ理想の休日を過ごせる可能性が高いでしょう。
あるいはビジネスにおけるマーケティングでも、そのビジネスの顧客は誰かがはっきりしているほうが戦略も立てやすいはずです。これはまさに顧客を定義する行為に他なりません。
もしあなたが企業で新卒採用の面接官を担当するとしたら、志望動機がはっきりしている学生とそうでない学生では心証が違うでしょう。ビジネスでもプライベートでも、「はっきりしている」ことはあなたの人生を豊かにする可能性が高いのです。
・定義は命である。
・定義するという行為は「人生」に大きく影響する。
・定義するとは、「そうであるもの」と「そうでないもの」をはっきりさせること。
ここまでの主張にご納得いただけたでしょうか。
■「良い会議」をするために欠かせないこと
次はこんな問題をご用意しました。もしあなたがビジネスパーソンなら、このような場面をたくさん経験しているのではないでしょうか。
【演習問題】
もしあなたが会議の進行役だとしたら、その会議で最初に何をしますか?
思い出してみましょう。あなたはこのような場面で、最初に何をしていますか。もちろん「そんなの、会議によるんですけど」とおっしゃる方も多いでしょう。であれば、あなたにとってもっとも重要度の高い会議を想定していただければ結構です。
もし会議の進行役をしたことがない場合は、近い将来にあなたが進行役を務める会議があると仮定してみてください。そして、その会議の最初に何をするかを想像してください。
この問題を通じてお伝えしたいのは、「その会議を定義できていなければ、その会議で最初に何をするかも決まらないはずである」ということです。
会議を定義するとはどういうことか。その会議が、ブレスト(ブレインストーミング)の場なのか、あるテーマの意思決定をする場なのか、単なる情報共有をする場なのか、といったことを明確に定めることを意味します。「はっきりさせる」と言い換えても良いでしょう。
会議を定義できている人は必然的に目的やゴールも明確です。ゆえにそこから逆算して会議を設計します。逆算を続けていけば、最終的には「この会議で最初にすること」も決まります。なんとなく企画してなんとなくメンバーを集め、当日も目的やゴールが曖昧な状態で始めた会議は、なんとなくやっただけで終わってしまうでしょう。
■目的を明確にすることは「共通認識の欠如」を防ぐ
「ブレスト」であれば、あなたは最初にその場があくまで発散の場であること、発言ルール、終了時間などを参加者にアナウンスするでしょう。
「意思決定」であれば、決めることがゴールであり、それに関与しない発言はノイズになるのでしないようにと参加者にアナウンスするでしょう。
「情報共有」であれば、その場に議論は要らないこと、発言者は参加者に対して正確に把握することを注意事項としてアナウンスするでしょう。
いずれにせよ、あなたはその会議の最初で重要なアナウンスをすることができます。そしてそれが、その会議の行方や成否を左右する重要な行為であることは言うまでもありません。
なぜなら「共通認識の欠如」を防ぐから。その会議の目的やゴールを「はっきりさせる」行為とも言えます。それらが「はっきり」していれば、無駄な思考や議論をしないで済みます。だから、最初に何をするかでほとんどが決まるのです。
■「曖昧であること」は人を不幸にする
様々な例を通じて、「最初にはっきりさせること」の大切さをお伝えしました。
コロナ禍のいま、多くの国民はリーダーの仕事や発言に敏感になっていることでしょう。そして国民の共通する思いは、「はっきりさせて欲しい」「はっきり言って欲しい」ではないでしょうか。曖昧であること、なんとなくで進めてしまうこと、それが人を不幸にすることもある。そう思うのは私だけではないでしょう。
私はビジネスパーソンの研修を本業としていますが、当然ながら登壇する研修を明確に定義し、目的やゴールを言語化します。そしてそこから逆算してプログラムを設計し、何をどう伝えるかも決めています。
そしてそのメッセージは一貫性が必要です。一貫性を持たせるためには、定義が甘いと必ずうまくいきません。最初に何をするかでほとんどが決まる。だから定義が命である。それは、数学とまったく同じなのです。
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ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)などがある。
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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)
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