「不機嫌が続くと免疫も低下」…感情的に暴走する人、しない人の決定的違い
プレジデントオンライン / 2021年2月15日 9時15分
*本稿は、和田秀樹『感情的にならない心の整理術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■人間社会は「感情関係」
近年、感情をコントロールできず、不機嫌になっている人が多いような気がしませんか。しかも新型コロナウイルスの感染拡大で、人々の生活に制約が加わり、その傾向はさらにひどくなっているように見受けられます。
人間社会には「感情関係」の面があります。電車に乗れば乗ったで、会社に行けば行ったで、心にはなにがしかの波風が生じます。不満、怒り、不快、イライラ……心はしょっちゅういらだっています。
とはいえ、できれば不機嫌でいるよりも、ご機嫌な時間が多いほうがいいですよね。
医学的にいっても、不機嫌が続くと人の免疫機能は低下し、病気になりやすいことがわかっています。逆に、ご機嫌になれば免疫機能も上がり、健康的な生活を送ることができます。
■精神科医にやって来るのは「感情を押し殺してしまう人」
私は精神科医を仕事にしていますので、たくさんの人を診てきました。なかなかやっかいな仕事だな、と思うことがあります。
というのも、私たちのもとを訪れる方々の多くは感情的な人ではないのです。
たとえば、感情的になって異常なまでのあおり運転をして逮捕されるような人は、精神科には来ません。つまり、感情を表に出して周囲にぶつけるタイプの人は、精神科を訪ねることは少ないのです。
それでは、いったいどういう人が私たちのもとに来るのでしょう? 感情を押し殺してストレスを抱え込んだり、それに耐え切れなくなった人が多いのです。
つまり大切なのは、感情をどううまく吐き出していくかということ。感情を押し殺すのではなく、うまく発散させること。これこそが、「感情的にならない」心の整理術の第一歩なのです。
■感情を上手に吐き出すことが「暴走」を避けるコツ
あおり運転に触れましたが、これは、近年社会的に大きくクローズアップされるようになった問題です。ほかの車の運転に腹を立て、しつような嫌がらせをするわけです。
私も運転中に、ほかの車に腹を立てることはあります。1人で運転していたなら、車の中で怒鳴ります。「このボケ!」なんて。
でも怒りの感情に支配されて、あおり運転を始めることはありません。それどころか私は、クラクションを鳴らすこともしません。
暴言を吐くのも、車内に自分しかいないときだけ。ほかに乗っている人がいたら、声には出さず心の中で叫ぶようにしています。
私は感情が高ぶっても、感情に振り回されて失敗することは少ないと思います。というのも、日ごろから感情をうまく吐き出しているからです。逆にいうと、あおり運転をする人は日ごろから感情を押し殺しているために、そのたまった気持ちが止めようのない怒りに転じてしまうのでしょう。
■新型コロナがもたらした「感情の危機」
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、専門家会議では家にこもることを推奨しました。感染症の専門家が考えるのは、1にも2にも感染の拡大を防ぐことです。巣ごもりは、そのための最良の方法でしょう。
でも精神科医として私は、これは困った状況になった、と感じました。
というのも、極力他人と会わない暮らしを続けると、ストレスを発散できません。日ごろ行っているように、感情をうまく吐き出すことができなくなるからです。家にこもることで、感情的になってしまうわけです。
上手に怒りの感情をコントロールできない人は、「自粛警察」「マスク警察」になってしまいがちです。
■「正しさ病」の行きつく先
そういう行動を取る人たちは、自分が絶対的に正しいと考えるのです。コロナ禍の中での生活とは、「かくあるべし」と。その「正しさ」に反して、きちんと自粛生活を送らない人、マスクをつけない人のことを許せなくなります。
ものごとを「白」と「黒」の2つでしかとらえることができなくなってしまっているのです。そのため激しい怒りを感じ、制裁を加えないと済まなくなるわけです。
不安感情もまた、巣ごもり生活を強いられたことで増大していきます。
「このまま失業したらどうなるんだろう」
「オレはダメな人間なんじゃないだろうか」
巣ごもりでアルコールに依存する人が増えたばかりではありません。不安がどんどん増大し、最悪、自殺を選ぶ人も出てきました。現実問題として、2020年10月には、対前年同月比で自殺者が約18%も増えてしまいました。
■「感情的にならない」技術
日々、穏やかに過ごすためには「感情的にならない」技術が必要になってきます。
私なりに、そのためのノウハウをいろいろ持っています。体験的に得たノウハウとしては、たとえばブログにメッセージが来ても、題名を見て、おそらく不愉快なメッセージだとわかったら絶対に開けません。
つまり、私の最大の「感情的にならない」技術は、感情的になりそうなシチュエーションを予期して避けるということです。
「なんだ、そんなことか」といわれるかもしれませんが、いわゆる「すぐ感情的になる人」というのは、それができないのです。無防備に「敵」と出合い、思わず感情的に反応してしまいます。それどころか自分が感情的になっていることにも気づかないようです。
もちろん、感情的になるシチュエーションがそう簡単に避けられないこともあるでしょう。でも、たとえばそういう際に、どう対処すればいいのかを前もって考えておけば、心に余裕も生まれます。あるいはどんなパターンでより悪いシチュエーションになっていくかを知っておくだけで、対処のしようも落ち着いて考えられます。
■感情をコントールする「3つの秘訣」
私は、その秘訣をいくつか見出しました。
1つ目は、「自分がほかの人よりもせっかちである」と自覚することです。自分の性格の偏(かたよ)りを認めることで、怒りをセーブすることができました。
2つ目は、自分の考えを絶対視せず、ほかの可能性も認めることです。「正しさ」にこだわるのをやめれば、ストレスがなくなります。
3つ目は、結果を重要視することです。結果的に自分の得になればいい。そう思っているので、ときには人に頭を下げるのも厭(いと)わないのです。
「感情的になる」というと、いわゆる感情を爆発させるタイプという印象がありますが、精神科医から見て、同じくらい問題になるのが「内向きな感情」や「不安な感情」から抜けられなくて、心の中でモヤモヤしたり、悶々(もんもん)としたり、怒りをためるタイプです。また感情が暴走してパニックになる人もいます。
このパニックという言葉には、突然の出来事に対応できなくなって大混乱してしまうというレベルから、精神医学でいうパニック発作のように脈が速くなったり、息が苦しくなったり、ひどいときには意識もなくなってしまうレベルのものまであります。
でも病気のレベルのパニック発作でさえ、「感情的にならない」技術で治せるし、予防はできるのです。
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国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。
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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)
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