「どうしても合わない人」と仕事するときに"絶対やってはいけないこと"
プレジデントオンライン / 2021年2月21日 9時15分
*本稿は、和田秀樹『感情的にならない心の整理術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■なぜ「イライラ」が止められないの?
感情的になりやすい人は、実は本人も気がつかないうちに小さなパニックを起こしていることが案外、多いのです。
では、パニックを起こしやすい人は、どういう人なのでしょう。それは、心配性だったり、緊張しやすい性格だったり、思いつめるタイプだったり。一言でいえば、「気持ちに余裕のない人」です。
たとえば頼みごとをして断られただけで、「じゃあ、私がどうなってもいいの!?」と相手をなじるような人がいます。
ほかの人に頼んでみるとか、自分でやってみるための工夫を考えるとか、できないなら仕方ないと割り切るとか……そういったさまざまな考えがまったく浮かんできません。
そういう人は、思いも寄らぬ事態になると、最悪の結果が起きると信じ込んで取り乱してしまうのです。
■感情的になりやすいのは「融通の利かない人」
また感情的になりやすい人は、よくいえば真面目なのですが、悪くいえば「硬い」とか「融通が利かない」ところがあります。
だから相手の言葉や態度に悪意を感じると、それをまともに受け止めて「なんだ、こいつは!」とか「私がなにをしたっていうの!」と腹を立てます。
あるいは「この人なら」と信頼していた人に反論されたり、頼みごとを断られたりすると「どうしてだ!」と不安になります。
■「こうなるはずだ」という思い込みが強すぎる
こうした人が相手のイヤな態度や反論をまともに受け止めてしまうのはなぜでしょうか? 1つ考えられるのは、「こうなるはずだ」という思い込みが強すぎるのではないか、ということです。
「私の考えに賛成してくれるはずだ」とか「あの人なら言う通りに動いてくれるだろう」といった思い込みです。自分が正しいという思い込みでもあります。
予想しなかった反論に出くわしたり、考えもしなかった提案が出てきたりすることはいくらでもあります。自分の味方だと思っていた人から批判されることもあります。
そうなると、思い込みの強い人はもうダメです。批判も異論もすべて、自分への悪意と受け止めて、感情的になってしまうからです。
本来であれば、自分の意見は1つの見方に過ぎなくて、「私はこうしたほうがいいと思う」というだけのことです。それに対して別の見方が出され、「さあ、どうかな」と議論が始まります。
ところが思い込みの強すぎる人は、「結論はこれしかない!」と考えてしまいます。いわば心の狭い状態ですから、相手のちょっとした皮肉や悪意に出合うとたちまち感情的に反応してしまうのです。
■感情をコントロールできない上司と部下の不幸
感情的になりやすい人は、「またやってしまった」と思うことがしばしばあります。たとえばA課長と部下のB君は、よくこんなパターンになります。
「A課長とはどうしても合わない。ふつうに受け答えしていても、かならずカチンとくるような言葉をぶつけられてしまう」。だからB君は、名前を呼ばれただけで「さっさと話を済ませよう」と考えます。
「B君と向き合っていると、だんだんいらだってくる。あのノラリクラリとした言い訳を聞いているうちに腹が立ってくる」。だからA課長は、問いただしたくても「今日は事務的に済ませよう」と考えます。
両者とも「感情的にならない」ように注意しているのですが、実際にはなかなかうまくいきません。感情コントロールのヘタな人は、「だって悪いのは相手なんだから」と、いつも同じパターンを繰り返すのです。
■面子やプライドが問題をややこしくする…
また、面子やプライドも問題です。
感情的になる相手に対して、「こいつになにがわかるんだ」といった対抗心のようなものもあります。たとえ相手が上司だとしても、「現場の厳しさを知っているのは私だ」といった気持ちです。
それは、相手より自分のほうが上なんだという心情の表れです。いま問題になっていることや議論しているテーマでは「負けるわけにはいかない」ということです。
もちろん、立場もキャリアも自分が上の場合は、相手から少しでもこちらを軽んじるような言い方をされると、「なんだ、その態度は!」と怒ってしまいます。要するに、相手を完璧に見下さなければ気が済まないのです。
■感情は「放っておく」
そういう場合は、「感情を放っておく」ように試みてください。つまり、気にしないということです。
小さなスペースを占める怒りや憎しみの感情なんて、喜びの感情が少し生まれるだけでたちまち追い出されます。
感情を表に出すこと自体は悪くはありません。とくに喜びや嬉しさの感情を出している人は、周囲の人から好かれます。
問題なのは、感情にまかせて問題行動を取ってしまうことです。感情をコントロールするとは、感情を持たないようにすることではなくて、感情を持ったときに問題行動を起こさないように自制することです。
イヤな感情は放っておいて、目の前の作業を片づけていれば、「そろそろランチだね」と声をかけてくれる人がいます。「うん、行こうか」と返事をしたときにはもう、ムシャクシャした気持ちはなくなっているものです。
■「変えられること」と「変えられないこと」があると認める
不機嫌にならないためには、ムダに心配したり、怒ったりするのをやめることも大切です。それにはまず、「変えられること」と「変えられないこと」を明確に分ける必要があります。
たとえば「変えられること」として、同僚への仕事の頼み方、上司へのあいさつ、子供への声かけ、夫の体調管理などを挙げたとしましょう。こうした「変えられること」であれば、自分の行動次第で不機嫌になる機会を減らせます。
一方、「変えられないこと」としては、仕事をしない同僚、口うるさい上司、勉強しない子供、無気力な夫などを挙げたとしましょう。こちらの「変えられないこと」の場合は、自分がいくら悩んだところで、どうにもなりません。いつまでも悩み続け、不機嫌がひどくなるだけです。
■過去と他人は変えられない
精神療法の1つである森田療法には「過去と他人は変えられない」という基本的な考え方があります。
子供の不勉強に悩む母親がいます。受験を控えているのに、子供は遊んでばかり。それを見るたびに母親は怒りをぶつけるのですが、子供の反発を受けるだけで、状況はまるで改善しません。
しかし、冷静に考えてみましょう。子供を親の思い通りに変えることなど不可能です。「私は子供を変えなければならない」と思うから、変わらない子供を見て親は不機嫌になり続けるのです。
ですから、「子供のことはそうそう変えられない」と割り切ってしまうことです。「いい大学に行ってほしいけど、ダメなら仕方がない。子供の人生なのだから」と割り切る。
そうすれば心の負担が軽減され、イライラも収まります。そのうえで「自分で変えられることから変えていこう」と意識を転換しましょう。
■自分の変えられる範囲で行動を変えてみよう
たとえば、子供に対して、いつもとは違うやわらかい言葉をかけてみてはどうでしょう。子供は「いつもとなにか感じが違う」と気づきます。そこから、やがて行動に変化が生まれるかもしれません。
あるいは、母親自身がなにかの勉強を楽しんでいる姿を見せる、というのも1つの手です。親が勉強を楽しんでいる様子を見れば、子供は「勉強って楽しいのかもしれない」と感じるかもしれません。
実際、私が見る限り、勉強のできる子の親は、親自身が勉強好きというケースが多いのです。とにかく自分の変えられる範囲で行動を変えてみて、なにがどう変化するのかを試してみるだけでもいいのです。
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国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。
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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)
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